練馬区では今、障害者の意思疎通に関する条例の策定に向けた検討を進めています。以前から聴覚障害のある人が手話言語条例を求めたり、失語症の人がコミュニケーション支援の充実を求めるなど、当事者から障害のある人へのコミュニケーション支援への課題が提示されていましたので、策定が進むことは喜ばしいことです。しかし、条例を作ることによって何が具体的に実現するのかというイメージを明確にしながら、当事者の声を反映していくことが必要であると考えて質問しました。

回答は、まだ条例の具体的な内容ではなく、当事者の意見を聞きながら進めるということだけでしたので、今後また議論していけたらと思います。

コミュニケーション支援が必要な人のニーズは本当に多様だと思います。例えば重度の身体障害があれば、介助者が発話を聞き取ったり示す文字を読み取ったりする形での支援が必要。発話のない知的障害のある人だったら、絵を示すなどで意思確認が必要。視覚障害のある人なら言葉で分かりやすく状況を説明することが必要で、必ずしも点字が使える人ばかりではないことに留意が必要。聴覚障害のある人は手話による支援、また手話を使わない人には文字で分かりやすく示すなどの支援が必要。同じ障害種別でもコミュニケーション方法が違ったりする。

気を付けなければならないのは、これだけ多様なコミュニケーション手段のニーズがある中で、どうやって条例をまとめるか。「コミュニケーション支援が必要ですね」という文言だけの条例になるならあまり意味がなくなってしまう。どう、個別性を大事にしながら実効性のある条例にしていけるかということを、十分議論していく必要があると思います。

特に手話を使うろう者の人は、手話は日本語とは別の言語なので、日本語のコミュニケーション支援とは別物として条例を作ってほしいという思いがある人も多いです。

この前お話を聞いたろうの人がおっしゃっていて、なるほどなぁと思ったのは、「自分は小さい頃、ろう学校で、手話は禁じられていたので、こどもたち同士で話す時だけこっそり手話を使っていた。先生や家族と話すときは口話を使っていた。だから、大人になって手話と日本語の口の動きをあわせてやっている人と出会うまで、手話と日本語は完全に別のものだととらえて使い分けていた」といお話です。

手話は日本語とは違う言語なんだ、という意味を、日常の言葉で表すと、こういうことなのだなぁと納得しました。

そうした思いをどう反映させていくのかということも重要な点になってくると思います。

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(かとうぎ桜子)

「障害者の意思疎通に関する条例」について伺います。

 

①条例を作ることでどんな課題が解決されるのか?具体的イメージがあればお示しください。

今練馬区は「(仮称)障害者の意思疎通に関する条例」の検討を始めています。まず、この条例を策定することによって区としてはどのような課題を解決したいと考えているのか、基本的な姿勢を伺います。

また、例えば学校教育の中での取り組みなど、具体的に改善される部分はあるか、あるいは条例に基づいた計画策定がなされるのかなど、条例ができることによって施策が進む具体的なイメージがあればお示しください。

 

②条例策定に向けての現在の進捗状況は?

障害者地域自立支援協議会の資料には、4月、5月に団体ヒアリングをし、協議会での検討を進めるとありますが、現在の進捗状況をお聞きします。

 

③手話言語条例は分けるべきでは?いろいろな障害の課題を一つの条例にまとめるのは実効性がなくならないか?

手話が言語であることが長らく認められてこなかったことを背景に、手話を言語として普及させ、手話を獲得し手話で学び手話を使う権利を保障することについては、コミュニケーション支援全般とは分けて考えるべき、手話言語条例は別途作ってほしい、という意見もあります。

また、「障害によってコミュニケーション支援が必要な人」とは、聴覚障害のほかに、重度の身体障害、視覚障害、知的障害、中途障害など多様であり、必要とする支援もさまざまです。それらをひとつの条例にまとめようとすることで、だれを対象とするのかが不明確になり実効性が薄くなるおそれはないかという点も懸念されますが、区としてはどのような条例を考えているか見解をお聞きします。

障害のある当事者の意見を聞きながら実効性のある条例づくりを進めることを求めて次の質問に移ります。

 

【回答】すべての障害のある人を対象に、特性に応じた多様なコミュニケ―ション手段を充実させるため、障害のある人の意見を聞きながら進める

(福祉部長)

「(仮称)練馬区障害者の意思疎通に関する条例」についてです。

障害者一人ひとりの自立した地域生活を実現することが何よりも必要です。そのためには、聴覚障害や視覚障害など、特性に応じた多様なコミュニケーション手段を充実することが求められています。

当初は手話言語のみを対象とした検討を進めていましたが、区長から、コミュニケーションに困難を抱えるすべての障害者を対象とした意思疎通条例にすべきであると指示を受けました。

現在、「障害者地域自立支援協議会」の専門部会として設置した「(仮称)意思疎通条例検討部会」において、これまで実施した障害者団体への意見聴取等をふまえ、聴覚障害や視覚障害、知的障害、高次脳機能障害のある方々とともに条例に盛り込むべき内容や関連事業について検討を進めています。

条例にどのような内容を規定していくかは今後、検討部会での議論や自立支援協議会からのご意見等をふまえて検討していきます。