今回で、2021年第一回定例会での予算質疑の報告は最後です。

2021年3月12日の議会最終日、本会議で行なった討論の内容を報告します。

 

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市民ふくしフォーラムとして、2021年度一般会計、国民健康保険事業会計、介護保険会計および後期高齢者医療会計の予算に反対の討論をします。

 

コロナ禍において、区の財政状況も厳しいですが、将来の見通しが立ちづらい今だからこそ、区民の生活を支えるという観点からの施策を積極的に進める必要があります。しかし、来年度予算では地域生活のセーフティネットであった事業を削っている点、また新たなニーズへの対応が不十分な点があるなど、懸念すべき課題があります。

 

来年度から高齢者向けの配食サービスが、委託から登録制度へと変更されます。

今までは、お弁当を手渡しすることで見守りをする事業を配食事業者に委託していました。1人週3食まで、利用者は実質的に少し安い料金でお弁当を利用できました。

ひとり暮らしの高齢者の中には、生活困窮していて生活費、特に食費を切り詰めている人もいます。また、食生活を管理する習慣がなかったため食事選びに苦労されている人もいます。そのために、必ずしも高齢者に合わせた栄養バランスが考慮されていない安価なお惣菜で日々の食事を済ませる人もいらっしゃいます。そうした人にとって、たとえ週3食という不十分な数であっても安く利用できる配食サービスの存在は重要でした。今回の予算の質疑の中で区は、配食サービスは価格をきっかけに利用するものではないと答弁しましたが、何を根拠にそう言うのでしょうか。第8期の介護保険料で第1段階にあたる人、つまり生活保護を受給する人やそれに準ずる人は約3万2千人いらっしゃる。それは65歳以上の第1号被保険者の約2割であると、区の資料には書かれています。低所得の人にとって食費の占める割合の大きさ、そしてその金額の与える影響の大きさ、という課題を区は真剣に捉えるべきです。

また、フレイル状態、要支援状態といえるような状況にあっても「自分は元気だから、介護、福祉は必要ない」と考える人もいらっしゃいます。

このような場合も、配食サービスの見守りを利用することがきっかけとなり、福祉の利用そのもののハードルが下がるという役割を果たすこともあります。

つまり、配食サービスは、食を通じた高齢者の地域生活のセーフティネットのひとつだといえるのです。

今年度の補正予算では配食サービスが増額補正されましたが、これは、コロナ禍でデイサービスなどの介護サービスの利用を控えた人に活用されたということが推測されます。配食サービスは、このような社会の緊急事態にも、介護保険サービスが支え切れなかった面を補完する役割を果たしたといえます。

しかし、来年度からは配食・見守りの事業者を登録するしくみへと移行するため、実質的には利用料金が上がると考えられます。それによって、今まで述べてきたようなセーフティネットとしての機能が損なわれることを懸念します。改めて、地域包括ケアの中で、配食サービスの果たす役割や当事者にとってのニーズを検証し、高齢者が地域で安心して暮らすためのツールとして、よりよい事業にすることを強く求めます。

 

今年度、配偶者暴力相談支援センターでの、のべ相談件数が減少しています。コロナ禍での生活環境の変化がある中で、必要な人が十分に相談することができているのだろうかと、懸念します。同様の相談対応をしている他機関と情報交換をするなど、積極的な連携を行ない、当事者をとりまく環境の実態分析をするべきです。必要な人にもれなく相談の場が保障される体制の整備を求めます。

 

コロナ禍でイベントをはじめとした「人が集まる活動」に制約がある中、区の取り組みとしても、オンラインを活用した動画配信の機会が増えていますが、情報のユニバーサルデザイン化という点ではまだまだ取り組みが不十分です。

字幕表示や、聞き取りやすい音声、場面が理解しやすい音声情報など、情報の保障を進めることで、障害のある人はもちろん、聞こえづらい、見えづらいなどの症状のある高齢の人や、母語が日本語ではない人にもわかりやすくなります。また、それらの取り組みは、特段の配慮が必要でない人にとっても情報がわかりやすくなる、情報のユニバーサルデザインとして重要です。

社会情勢の変化に合わせ、誰もが必要な情報、また楽しめる情報をわかりやすく得られるための工夫を進めるべきです。まだまだ知られていない情報のユニバーサルデザイン化について区が率先して取り組むことで、分かりやすい情報発信についての区民への啓発にもなります。積極的に取り組むことを求めます。

 

コロナをきっかけとし、地域社会は大きく変化しています。その変化の中でひとりひとりの区民はどんな思いで生活をしているのか。その思いを敏感にとらえた、臨機応変できめ細かな施策の充実を求めて討論を終わります。