勤労福祉会館のことは秋の区議会でも取り上げましたが(こちら)、十分に言いきれなかったこともあったので、改めて質問しました。

 

まず、質問に取り上げようと思ったきっかけは、勤労福祉会館がいつまでもバリアフリー化されないからでした。今まで他の議員さんが議会で取り上げたことも幾度となくありましたが、いまだに計画化されていません。大泉学園駅から5分程度で行ける、駅近で皆に便利な場所にある集会施設をなぜ早く改善しないのかなと考えた時に、もしかしたら、勤労福祉会館というもの自体をやめて別の役割の施設に変えることを検討した上で改修するなんていうことを考えている可能性もあるのかなとふと思いました。特に根拠があるわけではないですが、それくらいしか、いつまでも改修しない理由がないような気がして。

 

そんな中、私のSNSで「なんで勤労福祉会館はバリアフリー化しないのかな」という話題を取り上げた時に、知人から「勤労福祉会館の、労働者に対する福祉という役割は、非正規雇用の増加など労働状況が様々になって、しかも労働者にとって誰かに相談できないことも多い現状では、より重要な役割を持っていると考えていいのでは」というご指摘をいただきました。

確かにその通りだと思います。だから、勤労福祉会館、というものはきちんと残して施設の改善をすべきではないかと考えました。

 

それで、他の区はどのように実施しているのかと、秋の議会のあとに調査をしてみました。

 

そうしたら、実は練馬区の勤労福祉施策は頑張っているといえる内容なのではないかと感じました。ならばそれはしっかりと評価して発展させていったらいいのではないかと思い、今回はそのような趣旨で質問しました。

 

画像データだと見づらいと思うので、詳しく見る場合はこちらからPDFデータをご覧ください。

練馬区は特に詳しくピックアップしたこともありますが、それにしても、労働者の立場に立った企画の工夫をしていると思います。

 

 

質問の中で、「勤労福祉会館にはエレベーターも階段昇降機もない」と言ってしまったのですが、実は今年度から、固定式ではない階段昇降機が設置されたそうです。情報のアップデートができていないまま発言してしまい申し訳ありません。

かつて勤労福祉会館のバリアフリー化について聞いた時には、固定型の階段昇降機をつけられるだけの階段の幅がないため、昇降機の設置もできないのだと聞きました。今は固定しないタイプの昇降機ができており、それを取り入れて工夫されているのだということが分かりました。

 

ただ、やはり昇降機というのは補助的なものだと思います。誰かにお願いしなくても移動できる状況にするのがベストだと思います。

私は、車いすユーザーの介助をする仕事もしてきましたが、当たり前のことですけれど、車いすユーザーも考え方が様々だなと実感しながら介助をやっていました。

ある方は全身性の障害で人工呼吸器を載せた車いすを利用して外出をしていました。その方はお寺に行くのが大好きでしたが、お寺は段差だらけ。でも、周りの協力を得て、外出を楽しんでいらっしゃいました。ハード面のバリアは人の手を借りてソフトで補うということをやっていると、最初は「車いすの方はこの建物に入るのは無理ですよ」と言っていた人でも、ご本人がひるまずに段差を乗り越えていくのを見ると、「どうすれば皆でバリアをクリアできるか」を工夫するようになります。その人の心のバリアが溶けるのです。

たぶんこの当事者の方は、自分の趣味を実現するだけではなく、それを通じて周りが障害に理解を持つようになることも使命としていらっしゃったのだと思います。

 

一方、また別の車いすユーザーの方は、「人に持ち上げてもらったり、昇降機やエスカレーターを用いるところならば、行かなくていい」とおっしゃいます。私は前述のような車いすユーザーの方にお会いした経験があったため、「段差があるのは社会の問題なんだから、気兼ねせずに周りの手を借りてしまえばいいのでは」とお話したことがありました。でもその方は「いや、人の手を煩わせてまで移動はしたくない」とおっしゃいました。

たぶん、人の手を煩わせたくないだけではなくて、持ち上げたりすることによって落下するリスクを懸念されている面もあるのではないかと思います。たしかに持ち上げられるのは怖いし、階段昇降機も持ち上げるよりは安全とはいえ、やはり怖さを感じるところはあると思います。

そして、「そこまでして移動したくない」という思いは、その人自身の気持ちであって、当事者でない私が「気にすることないですよ」というのはおこがましいなとも思ったのです。

 

ハード面は一足飛びに改善させることはできないので、やむを得ない場合はソフトで補うしかない部分はあるとは思います。でも、その場合、必ず、後者のような人の社会参加を阻んでいるんだということは、私たちは意識しなければならないと思います。そして、少なくとも公共施設は早急に誰もが移動できる設備を整えなければならないということを強く感じるところです。

 

--------

(かとうぎ桜子)

勤労福祉会館で展開する勤労福祉施策について伺います。

勤労福祉会館は、「主として中小企業に働く勤労者の文化・教養および福祉の向上を図ることを目的とする」と条例に位置づけられており、勤労者の文化・教養に関する事業、勤労者の健康の維持増進に関する事業を行なうほか、施設の貸し出しを行なっています。

 

23区で同様の勤労福祉施策の拠点となる施設とそこで実施している事業を調査したところ、15区で取り組みが行なわれていました。その内容の多くは、練馬区でいうところのファミリーパックのような福利厚生が中心のところ、ビジネスサポートセンターのような企業や事業者支援のものの他、健康や余暇支援、資格取得、パソコン教室、あるいは地域に関わる全般的な取り組みなどでした。

練馬区の取り組みは、ライフプラン講座、職業能力開発講座、労働法に関する講座、就労支援講座なども実施しており、ファミリーパックやビジネスサポートセンターとはまた違う観点から労働者のサポートの拠点となる事業を実施しています。非正規雇用の増加など、労働にまつわる新たな課題が多くなる中、改めて勤労福祉会館で行なっている事業を積極的に評価し、より多くの区民に知っていただく工夫をしながら、さらに発展させていくべきではないかと考えます。区としては今の勤労福祉施策をどう捉えているか、また今後の施策の展開についてどのようにお考えかお聞きします。

また、勤労福祉会館を拠点に行なっている労働相談から見えてくる課題を勤労福祉会館の事業にさらに反映していく工夫も必要ではないかと考えますが、その点区としてどのように取り組んでいるか伺います。

 

勤労福祉会館は、1985年に建てられた、大泉学園駅近くにある2階建ての建物ですが、エレベーターがついていません。2階には30~60人程度の人が入れる会議室や調理室など、勤労福祉会館の事業も行なっている、集まりには程よい広さの部屋がいくつかあります。しかし、エレベーターも階段昇降機もついていないので、例えば車いすの人が2階に上がるためには皆で車いすごと持ち上げて上がるしかありません。これでは勤労福祉会館で行なう事業はもちろんのこと、ここを拠点に行なわれている様々な区民の活動に参加するにも、車いすを利用している人は車いすごと持ち上げられるリスクを負わなければならなくなります。

しかし、現在の公共施設等総合管理計画にはいまだ、勤労福祉会館の改修計画が入っていません。この秋の決算特別委員会では「区内に他にも老朽化した施設がたくさんあって、勤労福祉会館はまだ計画できていない」という答弁がありました。そこでまず、区の全体の改修改築計画を立てるにあたり、様々ある老朽化施設の中から優先度はどのように決めていったのか、今回も勤労福祉会館が対象にならなかったのはどのような検証による判断だったのかをお聞きします。

勤労福祉会館では今まで述べたように勤労福祉に関する事業を行ない、労働相談を実施しており、障害者雇用、高齢者、外国人の仕事など、多様な雇用の課題に対応するためにも施設の改善が必要ですし、区民への会議室の貸し出しという点でも、早急にバリアフリー化し、事業をさらに発展させるべきではないかと考えます。勤労福祉会館の施設改修については今後どのように考えていくか、お聞きします。

 

(産業経済部長)

私から、勤労福祉会館についてお答えいたします。

会館は、勤労者の福祉向上を目的とした施設であり、各種講座やトレーニングの場を提供しています。また、一般区民団体等への貸出施設としても活用されています。

昨年度は、6千件以上の団体利用があり、その大半以上は、団体の構成員の半数以上が65歳以上または75歳以上で占められる団体です。また、約4万5千人の個人利用があり、その約7割が65歳以上の高齢者です。

会館の相談事業では、区内在住・在勤の従業員を対象に、労働条件等の相談に応じており、昨年度は31件の実績でした。労働相談で寄せられた内容などを参考に、労働講座を開催し、昨年度は4講座を実施いたしました。

 

次に、勤労福祉会館の改修についてです。

区は、平成29年3月に公共施策等総合管理計画を策定し、計画では、建築後30年が経過しており、大規模改修の際はエレベーターの設置等バリアフリー化を検討するとしています。

また、各種講座等の事業を行う他、区民のさまざまな自主的活動の場として活用されていることから、今後、類似施設とあわせて、より利便性や効率性が高まる事業や施設のありかたを検討してまいります。

---------

公共施設等総合管理計画の中に勤労福祉会館と明示して改修計画はないけれど、「30年が経過している施設はバリアフリー化を検討するとしている」と述べているということは、検討状況に応じて進めていくということかなと思いました。

そして「今後、類似施設とあわせて、より利便性や効率性が高まる事業や施設のあり方を検討してまいります」ということは、やはり私がふと思った通り、勤労福祉会館というものを見直す可能性があるのかなぁ、とも思います。勤労福祉会館で実施してきた事業の良さを残す方法を考えていただきたいと思います。