10月13日の定例会最終日、本会議で決算議案の討論をしたので、その内容をご報告します。

------------

市民ふくしフォーラムとして、2016年度一般会計、国民健康保険事業会計、介護保険会計および後期高齢者医療会計の決算の認定に反対の立場から討論をします。

 

困ったことがあったときに、区民がお互いに支え合えるあたたかな地域社会が実現することは、とても素敵なことです。そのために区民が活動しやすいように区がサポートしていくことも大切です。一方で、区民の支え合いだけでは抜け落ちてしまうことがあるということに、区として目配りをすることも重要です。それは、普段の生活の中で排除されてしまいがちな人、見落とされてしまいがちな問題に目を向けて支える体制を作ることです。そして、それは、行政として主体的な責任を果たすべき点です。

私はそうした行政の責任と役割が果たせているか、という点で、現在は不十分な点があると考えています。

 

今回の決算の質疑の中で、こどもに関わるボランティアの育成について取り上げました。青少年育成地区委員会など、役割ごとの研修のほか、区民が個人で参加できる勉強会も色々あるということでしたが、こどもに対する具体的な声かけのしかたなどを学ぶためのロールプレイを交えた研修の実施や、こども食堂をはじめ様々な形でこどもに関わる人たちに向けての積極的な情報提供については残念ながら前向きな答弁がありませんでした。

たしかにボランティア活動は、その人が自発的な気持ちで取り組むことなので、スキルアップについても自発的に取り組むべきものです。しかし一方で、その大人が問題に対する正しい知識や声掛けのしかたを知らないせいで、例えばひとり親家庭の子、発達障害のある子、セクシュアルマイノリティの当事者である子に対して傷つける対応をしてしまう危険性があり、それは、こどもにとってはもちろんのこと、ボランタリーに関わりを持とうとした大人にとっても不幸なことです。SOSを受け止めてくれる大人に出会えなかった苦しみを、10代、20代になっても抱え続ける若者も多くいます。地域の中で、こどもを傷つけることなく温かく受け止められる体制づくりは、区民がそれぞれ自発的に取り組めばいいと言って済ませて良いことではありません。

 

介護についても、支え合いの善意に依存し過ぎない体制を作らなければならないことは、同様です。

要介護認定で要支援となった人の訪問・通所サービスは現在、介護予防・日常生活支援総合事業に移行していますが、専門の資格を持たなくても従事できるようにするために、練馬区は昨年度から4日間の従事者研修を始めました。研修受講者は40代の女性が多かったということなので、子育てがひと段落して改めてお仕事を探している方が多く受講されたと考えられますが、忙しい中でわざわざ研修を受けに来られた意欲のある方々の7割が就業していないという現状は何を意味するのでしょうか。私は、人の家に訪問して生活のサポートをする中で生まれる、人と人の関係性に対する責任の重さに比べて、バックアップ体制があまりにも脆弱であることが原因であると考えます。

要支援状態にある人への訪問サービスは、家事の技術があればそれで良いというものではありません。その人が今までどんな人生を送ってきたのか、何を大切にして生きているのか、今何に困っているのか、また家族との関係性など、その人のことをしっかりと受け止め、より支援が必要な場合は他の機関につなげる力が必要です。

しかし、そうした実践をしていくのに十分なスキルアップ支援やバックアップ体制が不十分であり、区としてその必要性の認識が薄い現状を危惧します。

介護保険は国全体の流れとして、支え合いという善意に依存しようとしているので、そのことの問題点を、区として認識したうえで制度設計していくべきです。

 

どんな困難を抱える人も排除されることなく安心して暮らせる練馬区を目指すためには、区民の善意にだけ頼るのではなく、区民一人ひとりの権利擁護の観点からの区としての責任を果たすべきと申し上げて、討論とします。