先日、「犬と猫と人間と2」という映画を見てきました。
東日本大震災で被災した動物たちを追ったドキュメンタリー映画です。

路上生活をしていた男性を追った「あしがらさん」や、東日本大震災で被災した障害のある人たちを追った「逃げ遅れる人々」を作った飯田基晴さんがプロデューサーをしており、宍戸大裕さんという若い監督が作った作品です。
HPはこちら

震災時、取り残された動物がかなり過酷な環境に置かれたことは、時折耳にしていたし、気になっていた問題でした。

この作品には、津波で離ればなれになってしまった犬や猫と飼い主、津波を経て再会できた猫、一緒に避難したものの避難所で飼い主と別の場所につながれていたために犬だけ津波に流されてしまったというお話、そして原発事故で人間が避難したために取り残された犬や猫、牛のお話が登場します。


たくさんの人間も犠牲になった震災だから、ペットが行方しれずになった悲しみをほかの人には言えないまま、ひそかにペットを探す人。飼い主を待つ動物たち。
特に原発事故の影響を受けた地域は、人間の立ち入りが禁じられている場所もあるため、動物たちはお腹をすかせている。餌が欲しくて、たまに入ってくる車に近づいて行って轢かれて死んでしまう動物もいる。
それらを片づける人もいないので、動物の死骸は道や家の軒下に放置されている。
牛はたくさん餓死していき、糞尿や死骸がいっぱいになった小屋の中でなお生きている牛もいる。

そんな動物たちに餌を運んだり、牛を集めて飼育するボランティアの人たちがいる。


映画には、そんな動物と人間の姿が出てきます。


私は小学生のときから猫が好きで、近所にいる猫を可愛がったり、拾ってきた猫を飼ったりしていました。
ただ猫が可愛いだけじゃなくて、野良犬や野良猫の殺処分を減らせたらいいのに、と、小学生なりの使命感をもって野良猫とかかわっていた記憶があります。

だけど私という個人ができることはせいぜい数匹の猫を飼うことだけ。野良猫全体の状況を良くするのはなかなかできないなあ…と考えた時に、だったらせめてできるのは、私が出会った猫だけでも幸せな人生(猫生?)を全うさせてやりたいということです。

突然びっくりした状態で死ぬことがないように、できるだけのケアをしていきたいといつも思っています。
たとえば私ががんになって入院が必要かもしれないと言われたときにも一番最初に心配したのは自分のことよりも「その間、猫はどうしよう」ということでした。

動物と日々一緒にいると、「嬉しい」「悲しい」などすごく表情に出るし、この前読んだ本によれば猫は人間の3歳児くらいの知能があるという説もあるようだし、「人間語」でのやりとりができないだけで、豊かな感情を持っていると感じます。

ペットを亡くした人の「ペットロス」ということが話題になったり、「ペットは家族と同様」という言葉が当たり前に言われるようになって、避難所でもペットの避難対策が検討されて、一見ずいぶんペットを取り巻く環境は良くなったように見えます。

でも実際には、「ペットは家族と同様」というのは、本当に動物を大切に飼った経験のある人でないと分からないかもしれません。実際には、人間の家族に対する思いとはまた違う部分があると思うから…。

人間の家族や大切な友人などは、一緒に言葉を交わし、一緒に出掛けたり食べたりという経験が思い出になります。大切な人を失うと、こうしたことが思い出されてつらい気持ちになります。

一方、動物は、言葉で意思疎通ができないというのがとても大きな違いであると思います。
もちろん、「ただいま」「おはよう」「ごはんだよ」くらいはわかるわけですが、「地震というものがある」ということや、「津波」とか、「原発事故が起きたから避難が必要で、仮設住宅では飼えないからしばらく離れて暮らそうね」とか、そういうことは言葉で伝えてもわからない。

動物たちはきっと、「なぜ急にお家にお水が来たんだろう、苦しい」とか、「なぜ、飼い主さんは僕を置いてどこかに行っちゃったんだろう」とか、「なぜ一緒に暮らせなくなっちゃったんだろう」とか、感じていても状況の理解ができないわけです。

だからこそ、飼い主としてもつらいのだと思います。大切な動物を失うことは大切な人間を失ったのとはまた違う、「なぜ自分があの子を守りきることができなかったのか」という気持ちが、重石のように心に残ります。

人間が中心の社会だから、家畜もペットも人間に依存しなければ生きていかれない環境でもあるのです。


私が猫を飼うにあたって猫に絶対味わせたくないと思っていたことが、東日本大震災では起こってしまった。そのことを改めて認識し、映画を見ていてとてもつらかったです。

だけど、実際に起こったこととして目を背けずに見ていかなければいけないとも感じました。

特に、原発事故は人災です。
人間のみならず、そこで暮らしていた動物たちにも悲惨な死を強いたのが原発事故であったということも私たちは受け止めなければならないと思います。


私たちにできることは、まずはせめてこの映画を通じて現実を見ていくこと、そして今もなお頑張っていらっしゃるボランティアの活動を支えていくということではないかと思いました。

ちなみに映画のHPのうち、こちらのページには、映画に登場するボランティア活動等の団体のリンクがはってあります。