掲載が遅くなってしまいましたが、これからしばらく、2,3月の議会の予算委員会で私が質問した内容をご紹介します。

まず第1回目は、「法人住民税の一部国税化」について。

法人住民税は、自治体の収入源です。
(一般的に市町村の財源ですが、23区の場合はいったん東京都が集めて23区に再配分するという独自の財政調整をしています。)

今、このうちの一部を国税化し、それを地方交付税の原資にすると国は言っています。影響額は6千億円で、練馬区では2015年度に40億円ほどの減収になると見込まれています。

なぜ、こうした変更をしようとしているのか。

そもそも自治体の財政は、「地方交付税制度」で財政調整がされています。
その自治体にとって必要なお金が、住民税などの独自の財源で賄えない場合、その不足分を国が地方交付税として交付するしくみです。

交付税のしくみ

(上記の図は、かとうぎ桜子が作ったものです。)

地方交付税はほとんどの自治体が交付を受けています。
(ちなみに2013年度、不交付の自治体は都道府県では東京都のみ。市町村は48団体で、それら自治体は都心部、観光地、原発立地地域など、独自の財源を多く持つ事情のある自治体が多いです。)


2014年度、消費税が5%から8%になりますが、それに伴い、自治体の収入源である地方消費税分は1%から1.7%に増えることになります。
ただ、地方消費税の収入が増えたとしても、地方交付税が減らされます。(地方交付税は、自治体の収入の不足分を補う制度だから。)
だから、地方交付税が交付されている自治体は、地方消費税収入が増えたとしても、全体の収入はほとんど増えないことになります。

一方で東京都をはじめとする地方交付税不交付団体は、そもそも地方交付税を交付されていないので、地方交付税が減らされることもありません。だから、地方消費税の増収分は純粋に収入増になるのです。

そうすると、もともと財政が比較的安定していて地方交付税が交付されていない自治体が増収になり、独自の財源だけで賄えないから地方交付税を交付されていた自治体は収入が増えず、財政格差がさらに開いてしまうということを国が懸念しました。

そこで、法人が多くて法人住民税のあるところからお金をとって、地方に回しましょう、ということを考えたのです。


これは一見、良いようですが、実はいろいろな課題があります。

まず、都心部が比較的財政が安定していると言っても、お金が有り余っているわけではありません。練馬区は71万もの人口ですから、人口が多い分だけ需要もたくさんあります。例えば保育園の待機児はリーマンショック以降毎年500人を超えているし、特別養護老人ホームの待機者も2000人を超えています。
こうした、人口が多いからこその困りごとへの対応も必要なので、お金が減らされたら困ってしまうし、それはすぐに区民の皆さんの生活に直結してしまうのです。

また、今後はさらに国税化割合を増やす可能性もあるのではないかと言われています。


まあ、そうはいっても日本全体のことを考えれば、都心部が身を削って、過疎化・高齢化・産業の不足といった問題を抱える地方の自治体の安定に寄与すべきでは、ということは私も考えるし、皆さんも考えるのではないでしょうか。

ところが、6000億円分のお金を地方交付税に回したところで、必ずしも地方が安定するとはいえません。というのは、2014年度予算における地方交付税の総額は16兆8855億円です。16兆円という大きな規模のお金を、全国の道府県・市町村で配分しているのです。
そこに6000億円を充てることで、年々の財源の減少への対応程度にはなったとしても、各自治体の財政の安定化に寄与するほどの影響があるとは言えないと思います。

地方の自治体の財政が安定するというよりも、取られる都心部が疲弊して、全国どこの自治体も一緒に疲弊していく、という意味しかないように思われます。


また、そもそも自治体の財政が疲弊した理由のひとつに、小泉政権の頃に行われた「三位一体改革」があります。
これは理想は良いもので、「今まで自治体は国からの補助金や地方交付税に頼っていて、独自で財源の確保や使い方の工夫をしてこなかった。だからこれからは、自治体独自の財源を増やすために税源を移譲し、その分国の補助金や地方交付税は減らして、それぞれの自治体が創意工夫できるような地方分権を進めていこう」というものでした。ところが実際には国の補助金や地方交付税は減らされる一方で税源移譲が不十分だったために自治体の財政が疲弊してしまったのです。

自治体の財政問題を根本から考えるならば、自治体の財源を一部国税化するのではなくてむしろ税源移譲を進めるべきだし、地方交付税制度そのものを見直すべきではないでしょうか。

国税化を進めるということは、地方分権にも反することであるという問題も抱えています。

区は、国に対して、「こういうやり方はおかしい」と言い続けなくてはいけないし、あわせて区民の皆さんにも分かりやすく状況を説明していかなければならないのではないか、ということを指摘しました。

以下は議会において、財政課長とやり取りした内容を載せます。(未定稿の議事録から、語尾を読みやすく直したもの。)


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〔かとうぎ桜子〕
予算特別委員会の資料1と2に関連して、伺っていきたいと思います。

先ほど来、ほかの会派の方からもさまざまありましたけれども、法人住民税の一部国税化によって、練馬区では、40億円以上の減額が見込まれるということです。

先ほどの答弁の中で、地方の格差を埋めるのは、こうした財源の移動ではなくて、国がやるべきというお話もありましたけれども、そういった意見がありながらも、国が進めようとしているのは、なぜなのかという疑問を感じます。
そもそも国税化していく意義を国はどう考えて、このような変更を行おうとしているのか。
区は、どんな説明を聞いているのかという点を、まずお聞かせいただけますか。

〔財政課長〕
国から直接説明を受けているわけではございませんけれども、私どもから言わせていただくと、当たっているかどうかは別にしまして。

国は、取りやすいところから取れというのが、基本にあるのかなという気がします。
全国の遍在性をなくしていくという意味では、本来は、地方交付税そのもののあり方を直して、そこにどれだけ国税を投入していくかという視点からやるべきだと思います。あくまでも、地方の税源である法人住民税。それは、もともと地方のものです。それを取り上げて、国税化して、それを地方交付税の原資としていくということは、理解しがたいと考えています。

そういった意味から、とるべき道はほかにあるのではないかと、先ほども、申し上げましたけれども、今後も国に、意見を申し述べていきたいと考えております。

〔かとうぎ桜子〕
都心部でない地方の自治体を見ると、過疎化、高齢化が進んでいて、行政としてもかなり厳しい財政状況があるという自治体も多く、また、地域の人が働ける産業がないと言った課題も抱えているかと思います。

一方で、東京を初めとする都心部では、人口が密集していて、労働環境や生活環境もストレスの多い状態にあるということで、日本全体で抱えている課題を考えると、一見、法人住民税を国税化して、地方に配分することは、都心部と地方のアンバランスを解決する手段なのかなと思えてしまうわけです。

よくよくお話を聞いてみると、東京のように取られてしまう自治体だけではなくて、地方の自治体にとっても、必ずしも大きなメリットがあるわけでもないようです。

練馬区のことだけではなくて、地方の市町村との関係も含めて、どのような変更になってくるのかというところをご説明いただけますでしょうか。

〔財政課長〕
まず、法人住民税の国税化によりまして、先ほど言いましたように、6,000憶円は国税化されて、それを地方交付税の原資とするということですので、この地方交付税を受けているところについて言えば、その原資となる部分の6,000億円が入ってくると。安定化するという話になってくると思います。

一方で、地方交付税を受けていないような、練馬区みたいな団体にとって言えば、取られっぱなしという話になります。

その辺で格差を是正するというのが国の考え方でございますけれども、一方で、消費税等の絡みもあって、消費税だけで見れば、消費税交付金という形では、全国の都道府県、区市町村の自治体に、1.7%分は行き渡るわけです。

ただ、消費税交付金も、からくりがあって、地方交付税を受けている団体にとってみると、要は自分たちの収入が増えるわけだから、交付税で算定される額というのですか、需要額があって、足らずまいを交付税として出す。そこで、一定程度収入が増えるという話になれば、その部分は差し引かれるという基本的な構造がございます。それは各自治体にって、程度の差はございますけれども。

そういった意味で言うと、今回の消費税と法人住民税の税制改正が、よその地方自治体にとっても、いいものかどうなのかというところは、なかなか判断が難しいところだと、私は思っております。

〔かとうぎ桜子〕
それから、先ほど練馬区への影響という点で、国の方針が変わらないようであれば、その補填について、東京都に求めるような話し合いも必要なのではないかというご意見も出ていましたけれども。

そういったことも含めて、やっていかなければいけないということも、自治体が独自に財源を持って、工夫しながら自治体を運営していくという、自治体としての自治を奪っていくということであると私も考えます。

その課題について、今、こういう状況にあるということを、区民の皆さんにもわかりやすく説明していく必要があると思いますし、そのことを国に対しても、しっかり意見を言っていく必要があると思いますけれども、その点はいかがでしょうか。

〔財政課長〕
税制改正の動きによって、区財政等が受ける影響は、これから十分に周知してまいりませんと、ただ単に、収入が少なくなったからこの事業をやめるといった発想ではないといったところ。それから、工夫を重ねてやっていますといったところ含めて、周知の必要はあると思います。

これまで、区報ですとか、あるいはホームページなどで、時々の財政状況については、区民の皆様方にお知らせしているところではございますけれども、さらに工夫を加えて、やっていきたいと考えております。