「メリヤスを編む」? 「ガーターを編む」? | 佐倉編物研究所 公式ブログ

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編物をあらゆる角度から研究し、広く普及することを目指します。
所長は手あみ師範のアラフォー男性です。

所長の伊藤です。

 

 

「次の1目はメリヤスを編んで、その次の目はガーターを編んで…」

 

このようなことを言う生徒さんによく出会います。

 

「メリヤスを編む」? 「ガーターを編む」??

 

私ははじめ、何を言っているのか意味が分かりませんでした。

この目を「メリヤス」「ガーター」で編むって、どういうこと?

「メリヤス」や「ガーター」って、編み目の集合体になってはじめて言えることでしょ?(詳細は後述)

でも、編む様子を見ると、どうやら「メリヤスを編む」とは「表目を編む」ことで、「ガーターを編む」とは「裏目を編む」ことのようです。

でもこれ、正しい用語の使い方なのでしょうか…?

 

 

手芸としての編物の世界におけるこのあたりの用語を少しまとめてみます。

 

「表目」を編むと、すぐ下の段に逆ハの字(ハート形)の編み目ができます。

この表目は、表面がいくぶんツルツルした感じに出来上がります。

 

「裏目」を編むと、すぐ下の段に糸が横に渡ったような(つっかえ棒のような)編み目ができます。

この裏目は、表面がデコボコした感じに出来上がります。

 

「メリヤス」すなわち「メリヤス編み」とは、編み目全体が表目のみで敷き詰められた編地のことを言います。

編地は全体的につるんと滑らかな手触りになります。

また、表目のみが敷き詰められた編地を特に「表メリヤス編み」、裏目のみが敷き詰められた編地を特に「裏メリヤス編み」と言うこともあります。

(↑これは裏メリヤス編みの編地)

表メリヤス編みの編地を裏側から見ると裏メリヤス編みになります。

メリヤス編みを編むには、平編み(往復編み)であれば表目のみの段と裏目のみの段を1段ずつ交互に編めばできます。

輪編みの場合は、ずっと表目(あるいはずっと裏目)を編めばできます。

 

「ガーター」すなわち「ガーター編み」とは、編み目が表目のみからなる段と裏目のみからなる段が一段おきに並んだ編地のことです。

編地は、横に細かい溝が一定間隔にできたような感じになり、メリヤス編みよりも厚みがあります。

ガーター編みを編むには、平編み(往復編み)であれば編地の表側でも裏側でもずっと表目(またはずっと裏目)で編めばできます。

輪編みの場合は、1周おきに表目、裏目を交互に編めばできます。

 

 

これを踏まえると、「メリヤス」や「ガーター」とは、あくまで「編地」を指す言葉であり、特定の目を編む編み方ではないのです。

「表目」あるいは「裏目」を編んだ結果の編地(編み目の集合体)の状態を表す言葉で、操作のことを指すのではありません。

 

もし、「メリヤス」と「表目を編むこと」、「ガーター」と「裏目を編むこと」を結びつけるのであれば、「表目を編む」ことで「メリヤス編み」の編地が、「裏目を編む」ことで「ガーター編み」の編地ができなくてはなりませんが、

少なくとも平編みでは「メリヤス編み」の編地を編むには「表目を編む」ことも「裏目を編む」ことも両方必要ですし、輪編みでは「ガーター編み」の編地を編むにはこちらも「表目を編む」ことも「裏目を編む」ことも両方必要です。

つじつまが合わなくなってきます。

そもそも、ガーター編みの編地は、表目と裏目の両方からなっていて、裏目だけで構成されているのではありません(それは裏メリヤス編みです)。

 

 

たぶんね、「メリヤス」を編むというのは、表メリヤスのようなツルツルの目(=表目)を編むというノリで、「ガーター」を編むというのは、ガーター編みのようなデコボコした目(=裏目)を編むというノリなんでしょうね。

気持ちはわからなくはないのですが。

 

でも、「表目を編むこと」を「メリヤスを編む」、「裏目を編むこと」を「ガーターを編む」と言う人は驚くほど多い!

しかも、年配の人にとても多い気がします。

昔はそういう言い方をしていたのでしょうか?

あるいは、私が知らないだけで、そういう言い方が通用しているのでしょうか?

少なくとも、私はこのような呼び方を是としている記述を書籍・教科書などでは見たことないのですが…

 

まぁ幸い、「メリヤス」「ガーター」と言っている皆さんは、「表目」「裏目」とこちらが話しても通じるので、そこまで困る話ではなさそうです。

ただ、気を付けなければならないのは、「ここの部分はメリヤスにしてください」と言ったら表目の往復編みをしてガーター編みになっちゃった、みたいなことが起こるかもしれないこと。

こういうときは、より丁寧に(少しくどいぐらいに)説明するのが必要でしょうね。

本当は、用語についてきちんと定義・説明するのも教室・講習の役割なんでしょうけれど。

 

難しいところです。

 

 

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