765.半世紀 海の守りは 海自だが 海の懸け橋 アワー氏補強

 

 本日は読者にとって初耳となる人物について書く。

 5月18日朝、コンビニで買った新聞📰の1面に見慣れた人の写真。新たな勲章か名誉称号授与かと思ったが、2つ折りの下の部分を見ると訃報だった。

 その人の名はジェームズ・アワー(James Auer)。16日にテネシーで亡くなった。享年82。経歴は元海軍中佐、国防総省日本担当特別補佐官、テネシー州ヴァンダービルト大教授。著書は“The Postwar Rearmament of Japanese Maritime Forces, 1945-71”(Praeger, 1973)で邦訳は『よみがえる日本海軍』(時事通信社、1972)。

 アワー氏は何故日本に、特に海上自衛隊に関心を寄せたのか。それは海軍で日本勤務を2度経験したからではない。少佐としてハーバード大とタフツ大が共同運営する大学院で学んだ時、駐日大使を務めたライシャワー教授の薫陶を受けたからだ。彼は再度日本を訪れ、海幕幹部などに会い、防衛庁秘蔵の資料(Y委員会文書など)を精査し、博士論文を完成させた。これが米国人の手になる、海上自衛隊を分析する画期的な本になった。そして彼は安全保障分野で米国と日本の懸け橋になった。

 筆者は1990年代にアワー氏と何度か会っている。2004年にノンフィクション『日本要塞化のシナリオ』を出版した時には、序文を書いて貰った。彼との最後のメールの遣り取りは今年3月。

 その中でアワー氏は、ロシアに対する中国の影響力を憂いていた。台湾海峡危機については、歴史的に見て中国が台湾領有を主張する根拠はないが、習総書記は統一を目論んでいるとし、紛争抑止のためには、インド太平洋でクアッド(日米豪印)などが軍事力を維持することが重要だと説いている。

 アワー氏は日本に憲法第9条の制約があることを理解した上で、日米同盟の重要性を強調し続けた。日本語も話すことができる稀有な人物だった。

 さて、スマホのアプリが自動翻訳を可能にしつつある現在、人と人との出会いを四角い画面上に制約してはならない。但し、5月16日のプーチン・習怪談は別物。

合掌

 

(注 写真の左から2人目がアワー氏)