756.マスコミは 切った貼ったで やいのやいの 本質無視し 口害になる

 

 「3分間待つのだぞ」とは誰が誰に言ったのか。

 正解は時代劇『子連れ狼』の拝一刀役の笑福亭仁鶴が、大五郎役の子供に言った。この言葉は大塚食品が1968年に売り出したボンカレーのコマーシャルの1972年版。今で言うレトルトカレーのパックをお湯に3分間入れて温め、ご飯の皿に掛けて食べるもの。

 3分間待つと言えば、1950年代後半に商品化されたインスタントラーメン🍜もお湯に入れて3分後に食べられた。現代のカップ麺も同じ。

 この3分間が大問題になっている。発端は5月1日に熊本県水俣市で開催された犠牲者慰霊式後の被害者団体と伊藤環境相の懇談の席だった。

 水俣病被害者の窮状を訴えていた発言者2人は、制限時間の3分が来て、マイク🎤の音を切られた。

 この報道だけを聞くと、落ち度があるのは懇談を仕切った環境省。ところが式典も懇談会も毎年行われていて、出席者は持ち時間を了解済み。職員は彼らに話を纏めて下さいとの指示も出していた。音を切られた1人は持ち時間内に話せるように練習したが、「涙が浮いて」先に進まなかったと語っていた1

 5月8日、伊藤環境相は現地で被害者側に不手際を謝罪した。そして環境省は、式典以外の日を設けて懇談会を開くとか、発言時間の延長を検討すると述べた1

 日本の四大公害病は、水俣病(有機水銀中毒)、新潟水俣病(同)、イタイイタイ病(岐阜神岡鉱山のカドミウム汚染)、四日市喘息(硫黄酸化物 による気管や肺の障害)だ。他にも足尾銅山の公害などがある。これらは日本の工業化に伴って発生した。早いものは1910年代からだが、原因が特定されたのは1950年代以降。尚、水俣と新潟ではまだ訴訟が続いている。

 新潟水俣病の慰霊式典は5月31日に開催。イタイイタイ病の慰霊式典はないようだが(注 電話照会)、県立イタイイタイ病資料館は2012年に開館している。四日市喘息被害者の慰霊祭は9月に開かれている。

 さて、筆者には言いたいことがある。マスコミは報道で印象操作をするべきではない。視聴者が即断して誤解すれば、公害をなくすという本題に焦点が当たらない。

 

[出典1 2024年5月9日付け産経新聞『環境相 マイク切断謝罪』]