710.半世紀 前と後とに 当て嵌まる 政治家に見る 先見の明
先日、知人とのメール遣り取りで船田中(なか)衆議院議長を話題にした。彼は鳩山内閣の時に自ら望んで防衛庁長官(1955-56年)になり、衆議院議長を2度務めた(1963-65、1970-72年)。
読者の多くは日米安保条約のことを聞いたことがあると思う。台湾有事との関連で最近のマスコミ報道に何度も登場するからだ。
同条約が締結されたのは1960年。当時国会周辺は反安保のデモで明け暮れていて、社会党などは破棄を訴えていた。1960年代半ばになると、自民党内に同条約を改定すべきかどうかという議論があった。第10条が、10年後の1970年に締約国の一方が他方に「終了」を通知すれば1年後に効力を失う、と定めているからだ。安保調査会の船田会長は1968年6月に私見を発表してその議論を収めた。同条約は自動延長となり、現在に至る。
メールの後、船田氏の著書『激動の政治十年』(1973年、一心会)を改めて手にした。彼は冒頭で第33回(1972年)衆議院選挙に触れ、共産党の躍進を懸念している。今年中には選挙がありそうなので、第49回(2021年)の選挙結果と比べた。
第33回:1972年12月10日、有権者数(満20歳以上)―7376万9636人、投票率―71.76%、総議席数491
議席数 得票数 得票率
自民 271 2456万票 46.85%
社会 118 1147万票 21.90%
共産 38 549万票 10.49%
公明 29 443万票 8.46%
民社 19 366万票 6.98%
その他 16
第49回:2021年10月31日、有権者数(満18歳以上)―1億562万2758人、投票率―55.93%、総議席数465
自民 261 2762万票(小) 48.08%
1991万票(比) 34.66%
立民 96 1721万票(小) 29.96%
1149万票(比) 20.00%
維新 41 480万票(小) 8.36%
805万票(比) 14.01%
公明 32 87万票(小) 1.52%
711万票(比) 12.38%
国民 11 124万(小) 2.17%
259万票(比) 4.51%
共産 10 263万票(小) 4.59%
416万票(比) 7.25%
その他14
さて、パーティー収入処理問題で評判を落とした自民は来る選挙で議席数を相当減らす。只、地元選挙区で有権者に頭を下げ続ければ、過半数の233議席を確保するかもしれない。
他方、筆者が見たくないのは、憲法改正に反対し、女系天皇に賛成する立民や共産が議席を増やすこと。議席を増やすのは維新だけでいい。
1つ補足する。日中国交正常化は1972年9月だが、船田氏は11月に議長を退任し、先の著書で以下のように書いている。
「中国問題の難しさは、中国共産主義の教条的信念と、民族的自尊心によって、その外交政策が自己の主張を譲る弾力性に欠けていることに一つの原因があることは、今日世界の常識である。」