699.映画とは 大勢集い 作る夢 難題なのは 夢の方向

 

 半世紀以上前、筆者が初めて入場料を払って観た映画📹は『続夕日のガンマン』。以後は『日本沈没🌊』、『砂の器』、『八つ墓村』、『男はつらいよ』、『探偵物語』など。渉外関連の仕事で忙しくしていた頃は映画館に足を運んでいない。

 年金生活者になってからは先日の『レディ加賀』が久し振りに観た封切り映画。人気映画なら相当数をテレビ📺で観ている。時間潰しで同じ映画を📺で2度観ることはあるが、積極的にもう1度観ようと思った映画は少ない。

 その例外が『おらおらでひとりいぐも』(2020年)。主演は田中裕子(桃子役)。桃子のの声(寂しさ)を3人の男👨が代弁する場面は自問自答である。1月21日に初めて観たのだが(ブログNo.648)、見落としが気になり3月10日にも観た。

 75歳の桃子👵は15年前に病で夫を亡くす。息子👨と娘👩は既に家庭を持っているが疎遠になっていて、彼女は豪邸での独り暮らし。但しそれが分かるのは家全体が映る時で、粗末な卓袱(ちゃぶ)台で食事🥢をする場面が多い。

 そんな桃子の日常を彩るのは過去。幼い頃の母との確執、田舎を飛び出した後の都会での食堂勤務、同じ岩手弁を話す夫との出会い、結婚生活♥、子育て👶、夫の死後の独り暮らし、図書館📚通いと病院通い💊💉。

 原作者の若竹千佐子の意図は別として、筆者は桃子が宙ぶらりんだと思った。だから〝寂しさ″3人組が彼女に付き纏う。となるとこれは独居老人の日常を描く社会派映画なのだろうか。彼女と医者との3分間ほどの遣り取りが、その現実を無味な――無意味ではない――ものとして映し出す。

 さて、この映画には救いがある。それは図書館司書の存在である。司書(鷲尾真知子)は定期的に恐竜の本📚を借りに来る桃子に、最初は大正琴の会へ、2度目には太極拳の会へ誘う。その都度彼女は即座に断る。

 ところが3度目に卓球🏓サークルへと誘うと、桃子は迷うことなく「参加する」と返答した。司書は驚いた表情で彼女を見る。

 誘いと驚きと彼女の変心。これらをどう解釈するかにより、筆者は救いと夢があると思う。3人組は減るのか、そのままか、増えるのか。