692.役者なら 役をきっちり 演じ切る どう生きるかは 実演一回

 

 藤岡重慶という俳優をご存じだろうか。

 藤岡は筆者が毎週観る時代劇『大岡越前』(水)や『江戸を斬る』(水~日)に悪役として何度も登場する。芸名は本名と同じだが、下の名は前者が「じゅうけい」で後者が「しげよし」。1991年に57歳で亡くなっている。

 3月6日の『大岡越前』第7部第12話の題名は「鬼を泣かせた娘」。藤岡は商売で破綻した夫婦から娘を託された育ての親の庄助を演じた。働き者の左官職人だった彼は妻が病死すると仕事をせず、酒で憂さを晴らす日々を送る。生計を支えたのは、幼い時に納豆売りをし、今では小料理屋日本酒で働く娘(大場久美子)。彼女は義父に唆(そそのか)されて盗みを企てる。

 筆者の記憶だと、悪役の藤岡は『大岡越前』でも『江戸を斬る』でも、お白州の裁きで必ず市中引き回しの上獄門磔か遠島を命ぜられる。しかし第12話では過ちを悔い改めて再度左官として精進するという善人役を初めて演じた。

 そこで考えた。大部屋俳優(主役や脇役やレギュラー出演者を除く)にとって悪役を演じる気持ちはどんなものなのか、その役者の家族はどう受け止めているのか、善人を演じれば何か変わるのかと。

 時代劇で斬られ役として有名だったのは大部屋俳優の福本清三。その経歴は50年以上。彼は『徹子の部屋』にも呼ばれたし、トム・クルーズが主演した映画『ラスト サムライ』にも出演した。2014年の映画では主役になり、2021年に77歳で亡くなった1

 さて、筆者を含める一般人は生涯大部屋俳優と言える。しかし仕事でも私生活でも分を弁えた役目を真面目に果たせば、視聴率とは無縁の主役になる。

 昨今、政治家にしろ、財界人にしろ、芸能人にしろ、何か勘違いをする輩が多い。社会が評価するのは分相応に働く人達であり、道を踏み外す輩の独善ではない。

 

[出典1  https://ja.wikipedia.org › wiki ›

福本清三 Wikipedia福本清三(参照 2024-3-6)]