681.受験なら 白紙論外 女優なら 白紙で臨み 染め上げていく

 

 先日、女優の小芝風花に触れた。彼女は26歳。

 2月23日、NHKEテレ📺の『スイッチインタビュー』に登場したのは女優の杉咲花。よく見る顔だが名前を知らなかった。彼女も26歳。杉咲はNHK連続テレビ小説の『とと姉ちゃん』でヒロインの妹役を、映画『湯を沸かすほどの熱い愛』ではヒロインの娘役を演じて開花した。

 この対談ではシンガーソングライターの角銅真実が杉咲に質問した。

 女優を目指したのは母が勧めたから。何故か。いくつか習い事をしたが、飽きっぽくて続かなかった。役者なら色々な人物を演じられるというのが理由だった。

 杉咲は役になりきるために工夫する。バッグ👜などの小道具では、例えば財布👛やハンカチに触ってその人(役)がどう使うのかを想像する。セットに入ったらその空間でどう過ごすのかも頭に描く。こうした工夫が物語に関係しなくても、その時間が実感を伴って流れて欲しいと考えるからである。成程ねと感心した。

 「おや」と思ったのは、彼女が役になり切ろうとして「心が侵食され過ぎるのはちょっと怖い。それは自分の精神を保てないからではなく、演じる役のことを知った気になってしまうから」と語ったこと。

 この「知った気になる」だが、杉咲は帰宅しても役柄や相手役の気持ちを引き摺って涙を流す😢ことがあった。最初は演技が私生活にまで入り込むのは正しいことで、それが「役を生きる」ことだと思っていた。『市子』を演じた以後、演技とは「勝手に心が反応すること」なのだと思い至った😌。 

 ここで筆者は再度頷いた。と同時にブログNo.622で触れた女優の岩下志麻を思い出した。彼女は小津安二郎監督の『秋刀魚の味』に出演した。巻き尺を弄ぶシーンを100回もやったが、監督は終始無言🤐。その後呼び出されて、「人間というのは悲しい時に悲しい顔をするんじゃない」と叱られた。そんな経緯があり、岩下は演技とは自然体になることだと気付いた。

 「知った気になる」ことと役になり切ることは違うのである。だからこそ岩下は台本を100回は読んだ。役作りとは監督が自分をどう染めようとしているかだと言い、作品ごとに自分を白紙にすることが難しいとも言った。

 さて、杉咲と岩下はもう1つ同じ趣旨のことを語った。それが杉咲の「人と関わることから学ぶ楽しさ」であり、岩下の「演技を続ける中でどういう出逢いがあるか」である。これは私達庶民も共有できる。