680. 一聞いて 目から鼻へと 抜けるなら 十を知るけど 目から耳だと

 

 世はスマホ📱で明け、スマホで暮れる。

 ドイツでも事情は同じ。川口マーン惠美氏はまだベビーカーに乗る幼い子でさえスマホをフリックしているのを見た1-1。Bitkomという産業連合会が実施した2023年の調査によると、6~9歳の子供の95%がスマホやタブレットを使用している。

 とは言え、ドイツはスマホ社会の弊害を懸念している。その1つが青少年の運動能力の衰退。これはスポーツの能力ではなく、脳からの命令が運動神経を伝わって何かを実行する能力のこと。スマホに機関銃のような速さでテキスト入力するにも拘らず、字を書いたり線を引いたりすることを苦手とする子供が多くなっている。車🚙でも電車🚃でもスマホのナビを利用するが、地図や路線図を見て移動経路を判断できない人も増えている。

 更に懸念されているのが若者の社会的能力低下である。家でスマホ操作をしていると実際の交流や接触が減少し、協調性連帯感助け合い、争う力、問題解決能力、仲介能力が発達しないと。ドイツのいくつかの州では小学校(4年制)で授業中のスマホ使用を禁止する声も出ている。

 話は飛ぶが、筆者は学校🏫で杜甫の五言律詩『春望』2を習った。

 

 1行目:国破山河在は、國破れて山河在りとそのまま読むが、

 3行目:時花濺は、時に感じては花にも涙を濺(そそ)ぎと読み、

 5行目:烽火連三月は、烽火三月に連なりと読む。

(注 レ点と一、二点の箇所では字を読む順番を変える)

 

 この詩をスマホで現代語に訳し、

 

 1行目:国は打ち砕かれても山や川はもとのまま、

 3行目:時世に胸が塞がって花を見ても涙がこぼれ、

 5行目:戦(いくさ)ののろしは春三月になっても途切れず、

 

と暗記するなら、漢字の視覚的表現力やリズムが失われ、も素っ気もなくなる。川口氏も懸念するスマホの弊害の一端がそこにあり、思考能力減少に繋がるような気がする。

 (株)アオキの青木豊彦氏は毎年1,200枚の年賀状を筆で書く。今年書いた言葉は「春風接人」。「人には春風の如く優しく接する」という意味。この語は儒学者の佐藤一斎が残したもので、「秋霜自粛」と対になっている。「秋の霜のように厳しく自分を律する」いう意味。

 筆者に「秋霜自粛」は難しい。つい「まあいいか」と妥協する。

 さて、中国共産党は「順我者昌 逆我者亡」と言っている3。どう読み、どう解釈し、どう対処するか。

 

[出典1-1/2『原子力文化』2024年1月号「ドイツでは、今」川口マーン惠美、「おもろいでっせ!モノづくり」青木豊彦]

[出典2  https://ja.wikipedia.org › wiki ›

春望Wikipedia(参照 2024-2-23)]

[出典3 2024年2月21日付け『正論』村井友秀]