372.よく見ろよ 模範と模倣 字義違う 他山の石は 反面教師

 

 「寄らば大樹の陰」と「口となるも後となるなかれ」の意味は相対立する。

 その2つの諺から筆者はロシア北朝鮮を思い浮かべた。ロシアは大樹には違いないが、北朝鮮は必ずしもロシアに擦り寄ってはいない。どちらかと言えば鶏口である。

 ロシアの人口は、ソ連崩壊後の1994年に1億4,800百万人で、2020年には1億4,600万人となり、減少は200万人1。これは自然減と分析されている。

 北朝鮮の場合、1994年に2,150万人で、2020年に2,580万人となり、増加は400万人以上2。但し脱北者などによれば、その間に大飢饉食糧不足があったのは事実で、統計の水増し操作が疑われている3

 昨今の北朝鮮はミサイル発射実験に忙しい。しかもミサイル燃料を液体から取り扱いが容易な固体に変えている。筆者ならずとも、実験費用などを社会インフラ整備に充当すれば、苦境に喘ぐ人民のためになると考える。しかし鶏口に邁進する金正恩総書記は、2011年来12年間も人民の生活など無視している。

 一説によると、プーチン大統領はウクライナを併呑することにより領土を増やし人口減少を解決しようとした4。ところがこの侵略戦争が足踏みを続けているので、彼は自分が蒔いた種で身動きできなくなっている。

 そんなことを考えていた時、筆者は「ハッ」と思い当たった。プーチン大統領は金総書記を模倣しているのではないかと。彼は20年以上も大樹の座にある。「40歳に満たない鶏口にできて、経験豊かで70歳になったばかりの大樹にできないことはない」と自分を鼓舞しているのではないか。ロシアには天然ガスなどが売るほどあるので外貨は獲得できる。つまり国力維持に支障はない。

 さて、孔子は、15歳(学に志す)、30歳(立つ)、40歳(惑わず)、50歳(天命を知る)、60歳(耳順ふ)、70歳(矩を踰えず)という教えを残した。

 ではなぜプーチン大統領には自分が進むべき道が見えないのか。それは模範と模倣とを混同しているからである。

 「他山の石」は、本来、「他山の石、以(もって)玉を攻(みが)くべし」という意味である。「反面教師」も見習えという意味ではない。

 

[出典1  https://ja.wikipedia.org › wiki ›

ロシアの人口統計 Wikipedia(参照 2023-4-18)]

[出典2  https://www.worlddata.info › Asia › North Korea

Population growth in North Korea - Worlddata.info Worlddata.info(参照 2023-4-18)]

[出典3  https://ja.wikipedia.org › wiki ›

朝鮮民主主義人民共和国の人口統計 Wikipedia(参照 2023-4-18)]

[出典4 2023年4月18日付け産経新聞『斎藤勉の眼』「ロシア化」で滅びゆくロシア]