348.銅さんは 磨けば光る その苦労 猫ちゃんたちも ニャンにも言わず

 

 筆者は社会人になってから7度転居し、30年ほど前、築6年の中古住宅を買って終の棲家としている。

 過去10年、ある日突然うんともすんとも言わなくなった洗濯機冷蔵庫を買い替えている。給湯器が黙(だんま)りを決め込んだのは2016年2月末。考えてみれば設置以来休みなく働いてくれた。直ぐに給湯器をネット検索した。3社からの見積もりは30万と21万と13万円。13万円の会社に依頼した。機種交換は3月1日。7年間のメーカー保障付き。

 2023年3月14日、台所のリモコンエラーコード760を点滅。風呂のリモコンは使えたので数時間放置したら、台所もOK。「何か機嫌を損ねたな」と思いつつ胸を撫でた

 3月23日、同じ760が点滅し、あちこち押したらリモコン画面が真っ暗になった。保証期間満了に気付いて溜息。トリセツを読んでも埒が明かず、〝リモコン故障″を検索した。工事説明書などを読んでも役に立たず、リモコンのカバーを開けても特段の変化はない。

 3月24日午前、メーカーに電話し、25日の訪問修理を依頼した。費用は1万6千円から5万円になる。給湯器設置時に数万円得したことを思い出し、「仕方がない」と自分を納得させた。

 昼前になり、ふと不具合理由の1つを思い出した。リモコン部の金属接触箇所に錆が出ると電気が流れにくくなると書いてあった。

 またリモコンのカバーを開けた。本体から赤と白のコードが3㎝ほどの樹脂スリーブ付きY型端子2つでリモコンに繋がっている。ネジ止めした2つの端子を外すと、Y型端子も端子を受ける細長い金属板も黒くなっている。ダメ元と考え、サンドペーパーで端子と金属板の表面を磨いた。銅が奇麗な金色になった。ついでにスリーブ部分をペンチで圧迫した。電源ボタンを押しても画面は真っ黒のまま。

 夕食の支度が一段落した3時過ぎ、何気なく電源ボタンを押した。何と、正常な画面が出た。「だろ!」と言いつつ、洗い物がないのに台所の蛇口を開いた。リモコンを見るとの印が赤く点灯してお湯が出る。時間を置いて蛇口を捻る。問題ない。

 午後5時、修理業者に電話をして25日の修理を断った。

 3月25日朝、偶然だがテレ朝が元ボクシング・チャンピオンを取材していた。彼が働く工場で銅メッキ作業を中継。製品を化学溶液に浸すと白い泡がブクブクと出る。引き上げた製品の表面が金色に輝いている。

 前夜、帰宅した愚妻にリモコンが元に戻ったことを伝えていた。しかし化学反応を見た筆者は、愚妻に昨日の経緯を繰り返した。

 「このまま上手くいけばいいわね。でもダメだったら、私が修理代を出すわよ」

 筆者の高揚感は瞬時に萎えた。化学反応の妙など意に介していない。アタフタした昨日のことも、本来、福沢さんが数枚あれば片付くことだ、と。

 さて、翔ちゃんとアリスちゃんは給湯器の恩恵を受けない。しかしパパが頑張ったことを、ニャンとか分かって欲しい。

 尚、24日の運勢1は、「努力がムダでない事を実感」だった。

 

[出典1 2023年3月24日付け産経新聞『今日の誕生日占い』アストロ・ウーガ]