252.首脳らを 集めて囃(はや)す 鉄面皮 一皮めくりゃ 独善だらけ

 

 ロシアのプーチン大統領は核兵器使用を否定していない。ウクライナはもちろん民主主義国家を脅すために言を弄している。その一方、尻尾を振る首脳らと偽善の会談を重ねる。

 「そんなことは聞き飽きた」と言わず、もう少し読んでいただきたい。

 2022年12月10-11日、「核兵器のない世界」実現の道筋を議論する「国際賢人会議」が被爆地広島市で開かれた。同会議の前身は2017年11月に広島市に開催された「核軍縮の実質的な進展のための賢人会議」である。この会議は、日本人座長及び委員6名の他、核兵器保有国、中道国、核禁推進国の有識者10名、合計17名で構成される1

 今回も被爆者などが各国の有識者たちと意見交換を行った。長崎市出身の木戸季市氏(82)は5歳の時に爆心地から約2km離れた自宅近くで被爆し、顔に大やけどを負った2。広島市で生まれた八幡照子氏(85)は8歳の時、爆心地から2.5km離れた自宅で被爆し、額に傷を負った3

 核兵器廃絶を求める会合では被爆者が体験を語る。彼らの参加に疑義はない。しかし筆者は、彼らに〝″を強調せず、現場の惨状を訴える目撃者に徹して欲しい。

 なぜなら会合の参加者が勘違いするおそれがあるからである。「被爆者の認定を受けていても、77年も生きながらえる人がいる」と。これはそもそも被爆線量の多寡が蚊帳の外に置かれているからである。第三者に不必要疑念を持たせてはならない。

 因みに、1945年8月6日と8日の原爆投下による12月までの死者数は、広島が13万人、長崎が7万人で、重軽傷者数はそれぞれ8万3千人と7万5千人だった。当時の人口は広島が35万人、長崎が27万人。両市では3分の1ないし4分の1が落命し、各4分の1が負傷した4

 さて、ウクライナの首都キーウと州都オデーサの人口はそれぞれ290万と100万である。ロシアが広島型と長崎型核兵器を2都市に撃ち込めば、100万+25万=125万の死者、69万+28万=97万の負傷者が想定される。「何をか言わんや」である。

 なお、松尾芭蕉の俳句は、「五月雨をあつめて早し最上川」である。〝涼し″を「早し」書き換えたことについて、芭蕉は『奥の細道』で「水みなぎって、舟あやふし」と書いている5。彼には〝核″みなぎって、世の中危うしという意識がなかったが、船上(戦場)でヤバイと慄(おのの)いていた。

 

[出典1  https://www.mofa.go.jp › dns › ac_d › page25_001269

核軍縮の実質的な進展のための賢人会議|外務省(参照 2022-12-11)]

[出典2 NHK NEWSWEB 「国際賢人会議」に臨む被爆者 “核廃絶で人類を守る決意を”2022年12月10日 7時36分(参照 2022-12-11)]

[出典3  https://peaceboat.org › uploads › 2018/06 › PB_A...

7月7日 - 国際交流NGOピースボート(参照 2022-12-11)]

[出典4  https://www.asahi.com › hibakusha › nagasaki

長崎の声 - 広島・長崎の記憶~被爆者からのメッセージ(参照 2022-12-11)]

[出典5 https://www.dwc.doshisha.ac.jp › faculty_column

「五月雨を集めて早し最上川」(芭蕉) - 同志社女子大学(参照 2022-12-11)]