206.仲良しは 表裏(ひょうり)なければ 本物だ 対話交流 だけで足りるか

 

 客観的とは主観的の対語である。特定の立場に固執せず、物事を客観的に見るというように使う。

 2022年10月23日、中国共産党の習近平総書記は人民大会堂で国内外記者📹と会見した。習氏は20分以上もの演説🎙後、中国に関し「客観的な報道」をするよう注文を付けた1。言い換えると、主観的な報道をするな、と。

 3期目の習指導部発足について、二階博・元自民党幹事長は、〈未だに「日中友好」を声高に唱えざるを得ないのは、50年経っても日中関係が成熟していない証左とも言える。だが、互いに引っ越しができない隣国同士だからこそ、仲良くする以外に選択肢はなく、交流対話を途絶えさせてはいけない。我々を「媚中派💕」と言う人は、中国と話ができるのか、誰を知っているのか」と問いたい〉と苦言を呈した2

 果たして二階氏の主張に客観性があるのだろうか。

 例えばオレオレ詐欺かけ子AがBの近所に住んでいたとする。BがAに、「まっとうな仕事に就いた方がいいよ」と話し掛ければ、仲良くすることになる。BがAの更生を願うことは客観的に正しい。BによるAとの対話継続に意義がある。

 さて、文化人類学者の楊海英教授は、2022年の夏、3年振りにウズベキスタンを再訪した。彼は首都タシケントに戻る列車の中で、ロシア人男性集団を見掛けた。彼らは黙りこくって周囲の旅客と溶け込まなかった。ホテル🏨などでも沈黙者集団として目立っていた3

 ロシアによる予備役動員令が発動されて以来、カザフスタンに入国したロシア人は9万8千人、ジョージアには同5万3千人、モンゴルには同3千人。楊氏が照会すると、現地研究機関は実数がそれ以上だと答えている4

 楊氏は、周辺国のロシア人コロニーが第2、第3のウクライナになる可能性があると言う。これには驚かないが、驚愕したのは、ロシアの弱体化が中国によるバイカル湖から沿海州(ウラジオストクを含む)までの奪回に繋がる恐れがあると彼が述べたことである。因みに同地域は帝政ロシアが領土にしたものだ4

 二階氏が説く〝交流と対話″は、裏表のない相手にしか通用しない。

 

[出典1 「客観報道」を注文 習氏が記者会見 中国

2022/10/23(日) 20:57配信 時事通信(参照 2022-10-24)]

[出典2 2022年10月24日付け産経新聞『引っ越せぬ隣国 首脳が対話を』]

[出典3 2022年10月24日付け産経新聞『正論』中露の「地政学的変動」に備えを 楊海英・静岡大学教授]