142.酸性化 賛成できない 現実に 叶えられるか アマモ増殖

 

 既にご承知と思うが、筆者は左党日本酒である。とは言え、先日のように電話が掛かってこなければ、昼間から飲みはしない。晩酌を楽しむ。主夫として夕食を準備する際、必ず酒の肴を用意する。刺身や焼き魚や煮魚や鱠(なます)も作る。野菜もたくさん食す。定期検診による塩分制限はないが、できるだけ長く酒食を楽しみたいので、塩辛さを唐辛子の辛み(カプサイシン)で誤魔化してもいる。

 先日NHKEテレを見ていた筆者はドキリとした。子供向け番組かと思っていたら、そうではない。話題は『“海洋酸性化”の脅威』であり、海の魚うお座をこれからも食べ続けられるかどうかだった1

 要は、地球温暖化により大気中への二酸化炭素CO2の排出量が多くなると、水に溶けるCO2が海洋水を酸性化させ、プランクトンを減少させ、プランクトンを捕食する魚が減るということだ。何故プランクトンが減るのか。それは酸性化により、プランクトンの殻(炭酸カルシウム)が薄くなって溶けてしまう。つまりプランクトンが死ぬからである。

 視聴後に海洋酸性化をネット検索したら出てくる、出てくる。筑波大学、東京海洋大学、国立環境研究所、海洋研究開発機構などが大々的な研究を実施している。

 東京都の式根島で行われた研究では御釜湾と足付海岸の海底からCO2が噴出していた。これをCO2シープ(seep、滲み出る)と言う。問題なのは、CO2シープが御釜湾では範囲が広く海水の㏗は7.8になり、足付海岸では点在していたので㏗8.1だったことである2

 8.1-7.8=0.3となるが、その違いは何か。㏗8.1の場所には珊瑚礁があり、魚が泳いでいる。㏗7.8の場所には珊瑚礁がなく、魚もいない。

 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の『海洋と雪氷圏特別報告書2019』によると1、世界の海水の酸性化がこのまま進んだ場合、2100年には㏗7.8となり、海の生き物のおよそ20パーセントが消滅すると予測されている。筆者が2100年まで存命することはないが、これは由々しい事態になる。

 尚、種子植物のアマモは海岸線の浅い海底に生息する。半年で1メートル成長し、その過程で大量のCO2を吸収し、炭素として体の中に蓄える。しかしアマモを増やすことは容易ではない。アマモの種は通常2割程度しか発芽しないからである。岡山学芸館高校3年生の入澤佳苗さんらは、瀬戸内海の日生(ひなせ)湾で2年前から、アマモの発芽率を増やす活動に取り組んでいる1

 海女アワビやウニやサザエを採り続けてほしい。そのためにはまず日本の海岸線をアマモ繁殖・水質浄化促進地域にしなければならない。世界の食料不足が喫緊の課題になっても、海岸の基線から12海里までは沿岸国の領海になり、主権が及ぶからである。

 

[出典1 NHKEテレ サイエンスZERO「生き物のからだが溶ける!?“海洋酸性化”の脅威」 2022年8月20日再放送]

[出典2  https://www.tsukuba.ac.jp › journal › images › pdf式根島で CO2 シープ発見! ~温帯太平洋における海洋酸性化の ...(参照 2022-8-21)]