63.3年座る 石の上 国の意志 まずものを言い 次は行動

 

 「物言えば唇💋寒し秋の風」とは芭蕉の句である。

この句は、貞享年間(1684-88)に書かれた🖌「座右の銘」の「人の短をいふ事なかれ 己が長をとく事なかれ」に添えられているものだとか1波風を立てれば後で空しい気持ちになるので、しない方がいいということである。

 現実世界はどうなっているか。

 5月23日の日米首脳会談で、バイデン大統領は、「台湾防衛に関与」と述べ、インド太平洋経済枠組み構想(IPEF)を打ち出した。中国は即座に、「強烈な不満と断固とした反対」を表明し、「(我々を)孤立させるための企み」と強く反発した2

 5月24日、日米豪印(クアッド)首脳は共同声明に、「(中国を念頭に)現状変更や地域の緊張を高める威圧的、挑発的一方的な行動に強く反対する」と明記した。これに対し中国は、「小派閥を作り陣営対立を扇動している」とか「衝突と対立を作り出し、米国の覇権に奉仕する」と批判した3

 このように外交となると〝言わずもがな″では済ませられない。一方の結束が加盟国の絆を強めるためだとしても、自ら〝村八分″を選択した他方は吠え🐕続ける。

 今回岸田総理は2つの首脳会談で日本の立場を明確にした。しかし外務省、各政党、就中(なかんずく)国民の意識は変化しているのだろうか。「ウクライナが可哀そう」や「台湾も困るわね」では〝○の突っ張り″にもならない。

 今から50年前の1972年5月15日、沖縄が日本に返還された。その際、佐藤総理の密使を務めた若泉敬は、1994年5月15日、『他策ナカリシヲ信ゼムト欲ス』を出版した。彼は戦後日本を「ひたすら物質金銭万能主義に走り、その結果、変わることなき鎖国心理の中でいわば〝愚者の楽園″と化し、精神的、道義的、文化的に〝根無し草″に堕落してしまったのではないだろうか」と嘆いた。彼は66歳で癌に斃れた。

 日本の政治家と官僚は、今こそ彼の遺志を継がなければならない。欧州応酬している。中国に押収させてはならない。意志の発信は、座って暫く温めるものではない。

 ウクライナと台湾海峡を芭蕉の「夏草や兵どもが夢の跡」にさせてはならない。

[出典1 https://kotobank.jp>word>物言えば唇寒し秋の風-646198 コトバンク精選版 日本国語大辞典の解説(参照 2022-5-25)]

[出典2 2022年5月24日付け産経新聞『中露念頭 現状変更に反対』、『中国 IPEFに反発』]

[出典3 2022年5月25日付け産経新聞『米大統領「台湾防衛に関与」』、『中国 クアッドを批判』]