本日(4月18日)の衆議院総務委員会でプロバイダ責任制限法(プロ責法)改正案について質疑を行いました。ちなみに、今回の法改正で法案名が情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法)に変更になります。総務省によれば法案の性格が変わるということでした。

 

 

 そもそもの問題点として、表現の自由(憲法21条)と人格権(憲法13条)とがぶつかり合う場面においてどのように調整するかという点です。つまり、表現の自由と言っても、個人を誹謗中傷する自由はありません。これまでの法体系では、表現の自由を重視するあまり、人格権が軽んじられてしまっていたのではないか、という問題意識を質しました。

 総務大臣からは、憲法13条と21条のバランスを取るべく取組みを進めるとの答弁をいただきました。

 

 インターネット上での発信に関して、著名人へのなりすまし広告による投資詐欺の問題があります。被害者がお金をだまし取られるという問題、なりすまされた著名人の名誉とブランドが棄損するという問題、犯罪者にお金が流れてしまうという問題(更なる悪事を起こす資金源にされかねない!)があります。最大の問題はプラットフォーマーが広告の審査を十分に行っていないということです。今次改正でインターネット上での投資詐欺広告の取締りと予防ができるのか質しました。

 総務大臣からは、法改正で一定の効果が期待できるとの答弁でした。が、一定の効果だけでは不十分ですので、桜井から投資詐欺の撲滅をめざして取り組むよう総務大臣に要望しました。

 

 また、インプ稼ぎという問題があります。インプ稼ぎ、インプレッション稼ぎ、つまり閲覧数を増やすことでプラットフォーマーからの広告収入を得るということです。「インプ稼ぎ」について、偽情報の発信をプラットフォーマーが助長している面があり、プラットフォーマーの責任は極めて重いと考え、取り組みの必要性を質しました。

 総務大臣からは、法改正で一定の削減効果が期待できるとの答弁でした。また、広告主にとっても偽情報のところに自社の広告が掲載されるのはイヤでしょうから、そうした面からの取組みも併せて必要との認識でした。 

 

 損害賠償責任についても取り上げました。日本の民事裁判において損害賠償の認定額が少なすぎるので、被害者の弁護士費用を含む裁判費用について損害賠償額が少ないために被害者が身銭を切っているのではないか。そうした状況のために被害者が救済のための訴訟を諦めてしまっているのではないか。その結果、誹謗中傷の書き込みが野放しになっているのではないか。こうした問題意識から、3年前のプロバイダ責任制限法改正の審議で実態把握を要望しました。改めて実態把握状況を質しました。

 法務大臣政務官からは、把握はしていないとのこと。改めて実態把握方法について検討するとのことでした。桜井からは重ねて、実態把握するよう要望しました。

 

 また、損害賠償責任について、プロバイダ責任制限法3条でプロバイダが知らなければプロバイダの責任は免責されることになっていました。これが法律名称にもなっていたわけです。今回の法改正で22条が新設されて、プラットフォーマーは問合せ窓口を設置することになりました。また、25条で問合せに対してプラットフォーマーは一定期間(総務省令で1週間と規定される予定)で対応することになっています。そこで、22条の窓口で受け付けて1週間を経過すれば、プラットフォーマーは知らなかったとはいえない、3条の免責は適用されない、ということでよいか、ということを総務大臣に確認しました。

 総務大臣からは、22条と25条の手順をふめば3条の免責は適用されないと答弁しました。

 

 インターネット上での誹謗中傷やフェイクニュースが横行し、さらに詐欺広告まで出回ってしまっている状況について、暴利をむさぼっているプラットフォーマーはインターネット上での言論空間の健全性を確保するために責任を果たすべきです。

 一方で、政府が過度に介入して取り締まるというのでは、言論弾圧に繋がりかねないという問題もあります。そこで、なるべくならば発信者、プラットフォーマー、被害を受けた方との当事者同士で解決できるようにすることが重要と提案申し上げました。つまり、これまで被害者が救済のために訴えを起こしてもなかなか救済されなかったという問題があるので、被害者に救済のための手段を提供することで、表現の自由と人格権とのバランスを改善することを提案しました。プラットフォーマーは、これまでは日本では損害賠償請求訴訟を受けても、逃げ切れる、敗訴してもたいした金額にはならないと高をくくっていたかもしれません。しかし、そういう逃げ得はもう許されなくなるということにすれば、プラットフォーマーは適切に誠実に対応するようになるでしょう。

 

 現状は、プラットフォーマーが適切に誠実に対応してもらえているとは言えない状況です。

 例えば、総務省、法務省、警察庁は、相談窓口やホットラインを設けて、インターネット上での不適切な書き込みについて一般の方々から申し出などを受け付けています。違法と判断したものについてはプラットフォーマーに削除を要請しています。しかし、法務省の削除要請に対して実際に削除してもらえた割合は69%と3割は対応してもらえていません。

 また、地方自治体も条例に基づいて差別的な書き込みなどのモニタリングを行い、発見した場合にはプラットフォーマーに削除を要請しています。しかし、例えば兵庫県の削除要請に対して対応してもらえたのは33%です。

 法務大臣政務官に、この状況について桜井は酷いと思うが政府の認識を質すとともに、今回の法改正によって改善されるのかどうかを質しました。

 法務大臣政務官は、プラットフォーマーとは粘り強く働きかけていくとのことでした。

 

 その他、条文解釈について確認しました。