本日(11月28日)の夕方、日本銀行は2023年度上半期の決算を公表しました。注目は、国債の評価損益です。3月期の決算では国債の評価損は1,571億円でしたが、9月期では10兆5,000億円に増加しました。

 

 日本銀行は500兆円もの国債を保有していますので、金利の変動で評価損益が大きく変化します。実際、7月の金融政策決定会合で長短金利操作(イールドカーブコントロール:YCC)を変更し、長期金利(10年物国債)の金利上限を0.5%から1.0%に引き上げたことから、金利上昇=債券価格下落で評価損が発生することが予想されていました。

 

 日本銀行は昨年12月にもYCCを変更して長期金利を0.25%から0.5%に引き上げました。このとき、2022年9月期の4兆3,734億円の評価益から2023年3月期で1,571億円の評価損と4兆5,305億円のマイナスです。桜井シュウは、0.25%の引上げで4.5兆円の評価損ですから、その2倍の0.5%の引上げでは評価損も2倍程度と予想しておりました。

 

 日本銀行は、国債を満期まで持ち続けるとしており、貸借対照表では時価ではなく簿価で計上しています。したがって、財務上は直接的にはマイナス要因にはなっていません。しかし、一般的に金融機関では債券は時価で評価しますので、そうすると実質的には資本が10兆円のマイナス要因となります。

 もっとも、日本銀行は信託財産指数連動型上場投資信託(ETF)を大量に保有しています。簿価で37兆円ですが、時価では60兆円ですので、23兆円の評価益があります。この評価益があるので、日本銀行は立っていられるといえます。

 ですが、今後、株価が下落すればそうも言ってられなくなるリスクがあります。また、金利が0.5%の引上げで10兆円のマイナスということは、あと0.5%の引上げが限度ということになります。これが日本銀行の金融政策の幅を狭めてしまうのではないか、との見方があります。植田総裁は否定していますが。。。

 

 日本銀行の財務状況は、金融政策の前提となりうるので、引き続き注視します。