本日(11月10日)、衆議院安全保障委員会で防衛省職員給与法改正案を審議しました。防衛省職員とは自衛官のことです。桜井シュウは9:35から10:20まで45分間、質問時間をいただきましたので、5項目を取り上げました。

 

1.自衛官等の採用状況

 2022年度の自衛官候補生の採用が芳しくありませんでした。9,245名の募集に対して3,988名の採用(充足率43%)でした。2021年度は約8割の充足率でしたので、どうして急にこんなに悪くなったのか、質しました。大臣からは、高卒の有効求人倍率が2.3倍から3.0倍に跳ね上がったこと、コロナ禍で広報活動が十分にできなかったこと、少子化の影響でそもそも若い世代が少ないなどの理由をあげました。しかし、コロナ禍と少子化は2021年度も同じです。他にももっと大きな原因があるのではないか、ちゃんと調査分析することを提案申し上げました。

 また、桜井シュウが考える採用が振るわなかった原因の可能性として、以下で超過勤務、ハラスメントなどを指摘しました。

 

2.防衛力整備計画

 防衛力整備計画で防衛費倍増、2023年~2027年の5年間で43兆円という計画です。この計画の問題点については、今年の通常国会の防衛財源確保法案の審議で申し上げました。今回は、水曜日の財務金融委員会で審議した異次元の金融緩和などによって続く悪い円安の影響について取り上げました。

 43兆円の計画において、想定為替レートは1米ドル=108円です。現在は150円ぐらいですので、約4割の円安です。つまり、アメリカなどから購入する装備は4割高になっています。もちろん、アメリカでは日本以上のインフレですので、ドルベースでも値上がりしているでしょうから、為替とアメリカのインフレでダブルで価格は上昇しています。

 日本国内でも軽油などの燃料代もあがっています。その他の装備についても製造コストは上がっています。したがって、国内調達の装備についても価格は上昇しています。

 また、今般は人件費も大幅に上昇しています。そうすると、43兆円の枠で入り切るのか?ということが問題になります。大臣は、まとめ買いなど調達方法を工夫することで経費削減に努めると答弁しました。しかし、それだと43兆円の計上のときには経費削減努力は勘案していなかった、絞る余地があったということになります。これはこれで大問題です。

 大阪万博でもあとになって建設費倍増になっていますが、同じようなことが43兆円の防衛費についても出てくる可能性があります。野放図な予算膨張にならないように監理していきます。

 

3.超過勤務 【防衛大臣】

 昨年10月の安全保障委員会での質疑で、超過勤務の実態把握を提案しましたところ、当時の浜田防衛大臣は重く受け止めると答弁しました。今年4月から超過勤務の把握の調査を行い、今月(11月)からは全ての自衛官について個別に超過勤務状況を把握することになりました。桜井シュウの提案が実現しました。

 手当てついて質問しました。駐屯地では夜通しの警備などの業務がローテーションであります。深夜勤務であれば5割増し残業代が支払われるのが労働基準法の規定ですが、自衛官は残業代は最初に21.5時間の固定支払いです。ですので、割増し残業代はなく一晩で数百円の夜勤手当のみです。この夜勤手当では1時間分の割増し残業代にもなりません。

 市ヶ谷の防衛省の本省勤務の事務官(背広組)は残業時間に応じた残業代が支払われます。防衛省本省には事務官と机を並べて自衛官(制服組)も勤務していますが、こちらは残業時間に応じた残業代はナシです。同じように仕事をしていて、この格差は釈然としません。

 災害救助の現場では、自衛官と警察官と消防士が一緒に活動することがあります。災害発生直後は72時間以内の救出を目指して急ピッチの活動が行われます。このとき、警察官と消防士には残業時間に応じた残業代が支払われますが、自衛官には残業代はありません。

 冒頭の採用に戻ります。応募する側は、自衛隊だけでなく警察や消防を併願することが多いです。全部合格したときにどこにいくかとなると、遠隔地の転勤がなく残業時間に応じた残業代が支払われる警察と消防に就職する傾向にあると聞いています。ですから、ここが原因であるなら、残業代を支払う、エリア採用で遠隔地への転勤は希望しないかぎりないなどに採用計画を修正することを提案しました。

 

4.セクハラ対策 

 東北地方に勤務の陸上自衛官へのセクハラ事件を受けて、防衛省は昨年9月~11月に特別防衛監察を行いました。

 しかし、第一に、その特別防衛監察の最中に海上自衛隊ではセクハラ事件がおきていまいた。特別防衛監察にかける浜田防衛大臣の意向が現場には浸透していなかったと言わざるをえません。

 第二に、海上自衛隊のセクハラ事件は、特別防衛監察の中では申告されていませんでした。申告してもどうにもならないという被害者のあきらめがあった可能性があります。なぜ、申告しなかったのか分析が必要です。

 第三に、海上自衛隊のセクハラ事件では、上長の対応が間違っていました。嫌がる被害者に無理矢理、加害者を引き合わせて、加害者の謝罪を受け入れさせようとしたことです。ハラスメントが発生してしまった場合の対応方法について管理職の研修が不十分であったことの現れです。

 昨年に特別防衛監察をやってみたものの、効果はまだまだ不十分ということです。上記の通り、改善を提案しました。

 なお、自衛官候補生の募集において2021年度は約9割の充足率であったのが、2022年度には約4割に落ち込みましたが、この1年間で大きな違いは、セクハラが明るに見なったことです。理不尽な職場という認識が広まってしまっては今後の採用活動、さらには部隊編成に悪影響を及ぼします。ハラスメント根絶を提案しました。

 

5.再就職支援 

 最後に時間がなくなってしまいましたが、若年定年退職の制度が採用に支障をきたしている可能性があります。再就職に向けての手厚い支援を提案しました。特に、労働市場は刻々と変化します。例えば、タクシー、バス、トラックの運転手は、昨年までは低賃金でしたが、ここにきて人手不足ということで賃金水準は大きくあがっています。こうした分野で自衛官を卒業した方が活躍できる可能性があることを指摘しました。