昨日(7月27日)と今日(7月28日)に開催された日本銀行の金融政策決定会合において、金融緩和の事実上の修正が決定されました。具体的には、長期金利(10年物の日本国債)の目標を事実上、0.5%から1.0%に引き上げました。「事実上」というのは、表向きは0.5%のまま、と言いながら指値オペは1.0%としたことです。これにより、長期金利は1.0%に収斂することになるでしょう。
 これまでは、日本銀行が0.25%なり0.5%で買ってくれるという確信があったから金融機関はある意味、安心して法外な安い金利で取引できたわけです。それが、いきなり1.0%で買います、つまり0.5%では買いません、値下げします、ということなので、金融市場としてはビックリでしょう。
 これまで、植田日銀総裁は、日銀総裁になる前の大学教授のときから、金融政策にサプライズはダメ、コミュニケーションが大事と言ってきました。今回の金融政策の修正は、サプライズそのものです。これまで、金融緩和を修正を全面否定し示唆するような話は一切ありませんでした。それでも、ロジカルに考えれば金融緩和の継続は限界を越えているから修正が必要、植田総裁はロジカルな思考の持ち主、ならば早晩、金融政策は修正されるだろう、という見方はありました。結局、今回の金融政策の修正は騙し討ちのようなものでした。金融政策において、騙し討ちはよろしくないと言ってきたことも含めての騙し討ちです。
 とはいえ、植田総裁を責める気はありません。それだけこの10年の金融緩和は矛盾だらけでどうにもならなくなっているということの現れだと考えるからです。
 ただし、長期金利の目標を引き上げると、様々な分野でその効果ができています。財政には、利払いの増加、民間金融機関には債券の含み損、日本銀行も債券の実質的な含み損が発生します。500兆円超の日本国債を保有する日本銀行では、0.25%→0.5%の引上げで約9兆円の実質的な含み損が発生しました。今回は0.5%→1.0%の金利上昇となれば20兆円ぐらいの実質的な含み損で実質的な債務超過に陥ります。これが債券市場や為替市場にどのような影響を与えるのか、注視する必要があります。