本日(3月10日)の衆議院財務金融委員会において、関税定率法改正案について審議しました。桜井も質問に立ち、3点取上げました。

 



1.金融市場の混乱の日本銀行の財務に与える影響

 昨日のニューヨーク株式市場でダウ平均が2000ドル以上下げるという史上最大の大暴落がありました。それを受けた本日の東京株式市場では午前中、値を下げて1万9千円を割り込む場面がありました。こうしたことを受けて、日本銀行による株式購入(ETF)の含み損益を質しました。

 含み損益がゼロになる損益分岐点はいくらか?と質問しようと思って準備していたところ、午前中の参議院財務金融委員会において大塚耕平議員が質問して日本銀行の黒田東彦総裁が1万9500円ぐらい、と答弁していました。

 したがって、それを踏まえて、日本銀行が株式の含み損によって債務超過に陥るリスクについて質しました。が、財務状況は株式だけではないので・・・と逃げられてしまいました。なので、改めて、4兆円(現在の日本銀行の自己資本)の含み損が生じるような株価水準はいくらか?と質しました。通告してなかったのですが、ざっくりとした答弁はいただきました。つまり、昨年9月の時点では日経平均株価は2万2千円程度で含み益が4兆円あった、2,500~3,000円値が下がりして1万9500円で約4兆円の含み益がほぼなくなった、これを基に単純計算すると、さらに2,500~3,000円程度値下がりすると4兆円の含み損が発生すると考えられる、とのことでした。つまり、日経平均株価で1万7千円を割り込むと株式の含み損で日本銀行は債務超過に陥る計算になります。

 広い世界を見渡しても、30兆円規模で株式を保有している中央銀行はありません。この場面でも更に株式を大量に買い入れているようです。健全な資本主義を損なう国家資本主義はやめるべきです(しかも、これほど大量に保有していると、売るに売れない!)。また、金融危機が発生したときに市中の金融機関を支えるが中央銀行の役割なのに、現状では中央銀行である日本銀行が真っ先に債務超過に陥りそうで極めてゆゆしき事態です。

 

2.関税業務体制の充実

 関税業務の大きな役割として、密輸の取り締まりがあります。観光客は、直近はコロナウイルス問題によって激減していますが、中長期的には大幅に増加しています。また、麻薬など違法薬物の取り締まりによる件数・押収量は増加傾向にあります。加えて、金地金など麻薬探知犬では探知できない(金属は匂いがない!)密輸品が増えています。

 行政は必ずしも費用対効果で計測できるものではありませんが、一方で行財政改革を進めているところではあるので、費用対効果も勘案せねばなりません。税関業務については、強化することで摘発が増えれば歳入が増えることや、麻薬取り締まりは税関での取り締まり量が圧倒的に多く水際対策が効果的であることなどを勘案すれば、税関業務の体制強化は行財政改革に逆行しないことも併せて申し上げました。

 以上を踏まえて、大臣の所見を質したところ、これまでも定員の増やし職員研修を行っているが、さらに進めていくとの答弁をえました。

 

3.とん税および特別とん税の引き下げと国際コンテナ港湾の競争力強化

 国際コンテナ定期船の欧米基幹航路の寄港便数を東アジアの国際港湾と比較すると、京浜港や阪神港は上海、香港、釜山と比較して半分以下と大きく出遅れています。つまり、日本はアジアの辺境になりつつあります。国際基幹航路から外れてしまうと、我が国の産業の国際競争力が引き下げられることになります。




 今般の改正案では、コンテナ船の入港の際にかかるとん税および特別とん税を引き下げて国際競争力を高めることを狙っています。入港にかかるコストを低下させることで、東アジアの国際コンテナ港湾とのコスト競争力を高められるとは考えますが、国際競争力の一部でしかありません。それ以外の国際競争力強化に繋がる取組みについて質しました。

 

 まず、港湾へのアクセス改善です。港湾アクセス道の渋滞解消、コンテナ・ターミナル・ゲート前での渋滞、内航海運のコスト改善(外航海運で釜山港に運ぶ方が割安になることもある!)の改善への取組みを質しました。神戸港については湾岸線の西への延伸で六甲アイランドからポートアイランドへの接続を強化するなど、各港湾で取組みを進めているとの答弁でした。

 また、最大級のコンテナ船に対応する深水18mを有するのは横浜港だけという状況で、明らかに後手に回っています。コンテナ船の大型化の動向を見極めて、先手の対応をお願いしました。

 次に、麻生財務大臣には、今回の日本のとん税・特別とん税の引き下げで釜山港も対抗して入港料を引き下げるかもしれない、日本はとん税の更なる引き下げが必要になるのではないか、質しました。麻生大臣からは、「とん税の引き下げもいいけど、その前に水深の確保が必要だろう、桜井は国土交通省にもっと要望すべき!」と答弁が返ってきました。野党の議員を激励する前に内閣で議論してもらいたいと思いましたが、質問時間がなくなりつつあったので、スルーしました。