一昨日のブログ で関西電力大木原子力発電の再稼働問題(その2)として取り上げたところ、いろいろコメントをいただきましたので、別の視点から続きを書きたいと思います。
安心安全と経済とのバランスという観点で、交通事故を引き合いに出しました。これに対して、交通事故では、加害者に対して刑事および民事でキチンと責任追及できるが、原発ではそれができないのではないか、という問題も提起されました。
責任をどうとらえるか、という問題はありますが、責任を原状復帰と考えれば、交通事故でお亡くなりになった方をよみがえらせることはできないので、原状復帰できず、したがって責任を全うすることはできないとも言えます。
原発についても、福島第一原発の除染作業量は膨大であり、特に福島第一原発の近傍地域では今後30年間は戻れないのではないか、とも言われています。多くの方々の暮らしを元に戻せないという意味で責任を果たすことはできません。
つまり、責任論は、原状復帰できるか、また罰則により故意または過失の発生を抑止する力になるか、ということかと思いますが、交通事故についても原発事故についても、現状では十分な機能は果たせていないように思います。
ところで、原発問題が他の問題と顕著に異なるのは、事故発生時の被害の大きさ、すなわち地理的なスケールと時間的なスケールでしょう。スリーマイル島やチェルノブイリ、そして福島と重大事故は発生してしまっています。スリーマイル島では、放射性物質をなんとか封じ込められていますが、チェルノブイリと福島では放射性物質が周辺(チェルノブイリでは数百kmに渡りホットスポットが点在)に放出され、周辺(チェルノブイリでは30km圏)は立ち入り禁止となり、四半世紀を経た今も、広範囲に渡って食糧・飲料水などへ悪影響が出ています。こうした悪影響の大きさは他に例がありません。
したがって、そのような重大事故を回避するためにはどうするべきか、と考えたときに、あらゆる状況を想定するということだと思います。そのためには想像力が必要です。しかし、福島第一原発の事故では、津波が「想定外」だった、電源喪失は想定していなかった、などと言われています。から、必要な想像力が不足していたことになります。
桜井の勝手な主観ですが、日本人の国民性として、小さな問題は熱心に取り組んでカンペキに治すけれども、重大な問題の前には呆然としてしまって思考停止に陥る傾向にあるように思います。
今回の事故で言えば、原子炉の圧力が上がったにも拘わらず、東京電力はベントをすぐには実施しませんでしたし、冷却が不十分であった時点で海水とホウ酸を原子炉に投入することもしませんでした。タラレバかもしれませんが、ベント実施及び海水・ホウ酸の投入が地震発生時にできていれば、ここまでの重大事故には至らなかったと思います。
ベント実施すれば放射性物質をいくらかは放出することになります。そうなれば、今後の原発運転に支障が出ると心配したのでしょうか。官邸からは、早急にベントを実施するように、という話があったにも拘わらず、東京電力はベントを実施しませんでした。なかなかベントを実施しないから官邸から東京電力に対してベント実施命令がなされてもまだベントできませんでした。水素爆発による放射性物質の拡散との影響の大きさに比べれば、ベント実施による放射性物質の排出は小さいと言えるでしょう。しかし、水素爆発は起きないという希望的可能性にかけて敢え無く大失敗したということなのでしょうか。
海水とホウ酸を原子炉に投入すればその原子炉は使えなくなります。あの時点にあっても、40年の老朽化した原子炉であっても、廃炉にする決断ができなかったのでしょうか。確かに、原子炉を廃炉にするということになれば、東京電力にとって(今後の稼働期間にもよりますが)数百億円単位の損害となる、と頭をよぎったのでしょうか。そして、サラリーマン社長にはそのような決断を瞬時に行うことはできなかったのでしょうか。しかし、水素爆発が起きてしまった後には少なくとも数兆円と言われる損害が発生しています。
日本人の国民性として、重大な問題を目の当たりにすると足がすくんでしまい、思考停止に陥るという傾向があるように感じます。それは、第二次世界大戦のころから変わっていないように思います(ブログの記事「昭和16年夏の敗戦」 をご参照)。したがって、原発のような重大なリスクを扱うには、日本はまだ時期尚早なのかなとも思います。
いつになったら、それだけ成熟するのか分かりませんが。。。
と考えると、地震などの災害が多い日本での原発の新設はない、と考えます。
また、開発途上国への原発の輸出もどうかな、と思います。ただし、日本が売らなくて、日本よりも技術的にどうかと思う国が売り込めば、問題はもっと深刻になりますが。。。
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