私の英語勉強法:出雲充さん | 最適性理論(音のストリーム)で英語を覚える

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ベンチャー企業「ユーグレナ」社長の出雲さんが英語学習方法を紹介しています。

出雲充さんが率いる「ユーグレナ」は、栄養豊富な食品や化粧品の原料として注目される藻類の一種「ミドリムシ」の屋外での大量培養に、世界で初めて成功したバイオベンチャーだ。1年のうち5分の1は海外出張し、関連の学会や外国人投資家向けの会議で英語を操る。ミドリムシを使ったクッキーを無料でバングラデシュの子供たちに提供するなど、貧困国の栄養問題にも取り組んでいる。

 

インターンシップで痛感した語学力不足
現在の英語力の基礎となる語(ご)彙(い)力は、大学受験の勉強で培った。長文を読みながら単語を覚えようという参考書「速読英単語」(Z会)を、「何十回、何百回」と読んで試験に備えた。「国連職員になって世界から飢餓をなくしたい」という夢を抱き、東京大学文科3類に入学した。

 

英文の読み書きには不自由がなかったが、英会話の中で、平易な言葉で説明するのは「すごく不得意」だったという。大学1年の夏にバングラデシュを訪れ、貧困層に小額の融資を無担保で行う「グラミン銀行」でのインターンシップに参加した。業務に携わったものの、相手の話す英語が分からず、「泣くほど悔しい思い」をした。

滞在中、意外な助けとなったのが、3歳から18歳まで続けたピアノだった。ホームステイ先で腕前を披露したところ、感心され、「英語が少しくらい出来なくても、辛抱強く話を聞いてやろう」と温かく接してもらえた。

 

周囲の人たちに助けられつつ、貧困の実情を垣間見た。同国では米は豊富に収穫できる。炭水化物には困らないが、それ以外の栄養素が不足しているため、多くの子どもが栄養失調に苦しんでいた。

 

いつしか夢は、貧困層の人々の自立に確実に役立っていたグラミン銀行のように、ビジネスを通じて人々を貧困から救済することへと変化していった。

 

「完璧な食品」を求めて

栄養失調に苦しむ人々に必要な栄養素を届けるため、知識を身に付けようと、大学3年の時に農学部へ進んだ。農学を学びながら、アニメ「ドラゴンボール」に登場する、どんなケガも一瞬で治してしまう架空の食べ物「仙(せん)豆(ず)」のような食材を探し求めた。

 

たどり着いた答えがミドリムシだった。動物と植物の性質を併せ持ち、それぞれに特徴的な栄養素を作り出す。光合成を行うため、二酸化炭素の削減効果も期待できる。体内の油から、ジェット燃料の精製も可能だ。水中で生育するため、水さえあれば、どこでも育てられる。

大きな可能性を秘めたミドリムシを大量培養する研究は世界中で行われていたが、成功例は皆無だった。栄養価が高いため、培養中に別の微生物が入ると、それにすぐに食べ尽くされてしまう。他の生物を遮断する環境作りが一番の難題だった。

 

大学卒業後の2005年、大量培養と事業化を目指し、農学部の仲間と、ミドリムシの学名「ユーグレナ」を社名にして起業した。大量培養の成功は、発想の転換によって実現した。他の生物の侵入を防ぐのではなく、「ミドリムシしか生きられない環境」を作ることで、世界初となる屋外での大量培養に成功した。

 

ミドリムシ入りの栄養豊富なサプリメントの販売を始めたが、当初は知名度の低さもあって売り上げは低迷した。地道な営業努力を続け、商社との取引を開始したことなどを契機に業績が上向き、12年には東証マザーズに上場。事業は拡大し、14年12月、東証1部に上場した。

ところが、ここで英語の壁が立ちはだかる。東証マザーズは日本人投資家が中心で、会社の説明は日本語で行う。だが、東証1部は外国の機関投資家も多く、英語での説明も必要だ。

「相手をなんとか説得して投資してもらわなければいけないのに、『英語がしゃべれない』なんて言っていたら会社のみんなに迷惑がかかる」

 

必要に迫られ、15年から本格的な英語の勉強を始めた。参考書で気に入ったのが、「神田昌典の英語の近道」(フォレスト出版)だ。この中で紹介されていた「適切な目標の設定」を実践した。「英語がペラペラになりたい」といった漠然としたものではなく、自分にとって本当に必要な英語力とは何かを具体的に考え、「外国での学会や投資家向けのミーティングで、ユーグレナのことを説明できるようになる」ことを目標とした。

まず、説明する内容の台本を作り、それを丸暗記した。15分の台本、30分用と複数用意し、1時間分の台本には、「聴衆を笑わせる箇所」まで入れた。台本通りに国際会議で説明すると、他の講演と比べて「1番面白かった」と参加者に褒められた。

 

「ミツル」から「ミッチー」へ

この参考書は、「英語の名前」を持つことも推奨していた。「ミツル」に音の響きが近い「ミッチー」と名乗ることにした。

“My name is Mitsuru Izumo.” と自己紹介しても、英語圏の人は日本人名をうまく聞き取れない。ここで聞き返されると、発音が悪かったのかとつい弱気になって、話す声が小さくなり、その後の会話まで通じにくくなってしまうことがあるという。

 

会話力を上げるため、フィリピン・セブ島に行き、1日12時間、英語漬けの学習プログラムに参加したこともある。この経験は英語で話す自信につながった。現在は、「カラン・メソッド」という英国発の英語学習法を実践している。英語での質問に、英語で考えて答える練習を繰り返すことで、頭の中で日本語に変換することなく、英語で物事を考える力が付くという。

鍛えた英語力をツールとして、目標実現に向かって突き進む日々だ。