私には2歳違いの弟がいる。
弟は死産で生まれた。
逆子でヘソの緒が首に巻きついていて、首吊りの状態で生まれたのである。
しかし、そこから息を吹き返し、現在に至る
私達兄弟は、町の小さな産院で生まれた。
同じ女院長先生に取り上げてもらったわけだが、私を取り上げた時、女院長先生は
「私は長年産婦人科医をやっていますが、こんな綺麗で美形の赤ちゃんは初めてよ」
と、褒めてくれたという。
生まれた直後の私は、シミひとつない色白の体で、薄らではあるが、しっかりとした眉毛が生えていたらしい。
オカンもそれを聞いて、生まれたばかりの私をみて嬉しかったと言っていた。
ところがである!
それから2年後に生まれた弟は正反対だった
首吊り状態で死産だった為、全身はチアノーゼの状態。
更には、全身には産毛が生えており、パッと見はまるで猿の様だった。
私の弟に対する1番最初の記憶は、ガラス越しに新生児室を覗いた時に、何人かいるかわいい赤ちゃんの中にひときわ目立っていた汚い赤ちゃんがいた。
どれが自分の弟だかわからなかった私は
「あれじゃなきゃいいや」
と思った。
それが弟だった。
弟と私はことごとく正反対だった。
私は、言葉も早く、何でも好き嫌いなく食べたし、体も丈夫で、教えた事はすぐに覚えて、本当に手のかからない子供だったらしい。
それに対して弟は、食べ物にはアレルギー(グレープフルーツなど柑橘系、僅かな果汁でも駄目)があり、それがわかるまでオカンは食べても吐いてしまう弟に手こずっていた。
肌がめちゃくちゃ弱く、オムツから始まり、石鹸や洗剤ですぐにかぶれ、それは体だけではなくて、目は常に結膜炎と言われ、オカンは毎晩、目を洗浄しなければならなかった。
おまけに「ブタクサ」のアレルギーで、年中鼻炎だった。
手のかかるのは体質だけでなく、あり得ないほど言葉が遅かった。
何にでも興味を持って、何か話しかけてくるものの、何を言っているのか全くわからない
赤ちゃん特有の
「アー」
とか
「ダー」
とかだけならまだしも、弟のそれは違っていた。
まさに
「★?☆@%*」
というマンガによくある感じの表現が1番しっくりくるものだったのだ。
ピコピコピー
てな感じにしか聞こえない言葉で、機嫌が良い時は1人でズーッと話している。
話しかけても「ピコピコピー」で返してくる
最初に生まれた私が全く手のかからない子供だっただけに、オカンは途方にくれた。
やがて、言葉らしきものを覚えてきても、それもまた独特のものだった。
例えば
お姉ちゃん→ニャンニャ
グレープフルーツ→ブーブルチュ
パイナップル→ダイアポロン
などなど。
「宇宙人…」
「この子は宇宙人なんだ…」
オカンは、そう言って自分に勇気を与えていたらしい。
そんな訳で、何をやってもどんくさくで、アレルギー持ちな弟に、オカンは手がかかり、私はなんだかいつも置いてけぼりをくらっていた。
だから、私はあまり親に甘えた記憶がない。
「お前はしっかりしてるから大丈夫!」
いつもそんな風に『親に甘えられていた』のだ。
そんな理不尽の中、小さい頃は時折、嫉妬とそれを抑えている鬱憤が、憎悪となって弟に向けられた事もあった。
(これはまた違う因果があったみたいですが、それはまた別の機会があれば書きたいと思います)
今でこそ
「仲が良いね」
なんて、言ってもらえる事が増えてきたが、それはオカンが病気になってからの話で、それまではろくに口もきかない状態だった。
話を戻そう。
弟は成長していっても、相変わらずといえば相変わらずで、決して器用ではなかった。
人の事は言えないが、勉強だってあまり出来るとは言えなかった。
でも、その反面、ゲームなどでは1度覚えた事は未だに覚えている。
「ゼルダの伝説」や「ドラゴンクエストシリーズ」「魔界村」「グラディウス」「ドルアーガの塔」などは弟と一緒にプレイしていると攻略本いらずでクリアできる。
あと、子供の頃から「天使」や「宇宙」「神話」などの話は
「どこで知ったの?」
と、いうレベルで詳しかったり、時には
「幽霊って別次元の人を見ているのかも。」
なんて、次元について話して来たりした。
この才能を何故違う方向に伸ばせないのか?
と、オカンがガッカリする程だった。
しかしある時、オカンは当時弟が通っていた高校の担任の先生に呼び出された。
担任の先生は数学の先生だった。
オカンの前に先生は、弟の数学のテストの答案用紙を出した。
ほぼ白紙に近い答案用紙に、かろうじて丸のついた問題を指差して先生は言った。
「この問題はごく普通の応用問題なんですが、織田くんは正解しているんですが…ありえないんです。」
「は?」
「この途中の公式なんですが、私は見た事がない公式なんです。私は授業で教えていないんです。調べても私の範囲ではわかりませんでした。だけど、織田くんは答えを導き出しているんです。」
そう言うと先生は
「織田くんは家で数学を好んで勉強しているんですか?」
と聞いてきたので、オカンは
「とんでもない」
と、基本問題もバツで、空欄もある答案用紙を見て否定したらしい。
「やっぱり、あれは宇宙人なんだ…」
と、オカンは納得したと、こっそり私に言った事があった。
それでも、私は釈然としないで弟とは距離を持っていたが、オカンが癌になった事をきっかけに、ビックリするくらい距離は縮まっていった。
あれは、そのタイミングだったのだろう。
やがて、オカンの死後、ようやく生活に余裕が出て来た頃、弟がスピリチュアルに触れるタイミングが来て、それに私も乗っかる形になり、いろんな気づきが大波のように押し寄せた。
その中で弟は
「僕は第3シリウスから来た宇宙人なんだ」
と、言い出した。
我ら兄弟の師・ネリー・エンジェルに
「シリウスを学びなさい」
と、言われた事がきっかけだった。
弟いわく、元々地球が大好きで、昔からいろんな時代に転生を繰り返し生きてきたが、ひょんな事から知った女の子が、とんでもない奴と夫婦になった事を知り、なんとかしようとその女の子から死産で生まれた赤ん坊に入り込んだのだという。
言わば、親父と結婚したオカンが心配でウォークインして来たのだ。
普通、そんな事をいきなり兄弟に言われたら、普通は面食らうと思うが、私は、今までのバラバラだった糸がやっと1本になったとスッキリしたのを覚えている。
そうか、宇宙人なんだ。
腑に落ちた。
納得した。
だから、あんなに言葉が遅くて、アレルギーもあり(宇宙人なら体に馴染むまで免疫力が弱かったのだろう)ゲームなど自分の興味がある事に関しては才能を発揮したりするのだ。
それに、10年以上離婚に応じなかった親父に最終的に離婚届を書かせたのは弟だった。
こんな事がハッキリする前から、弟を「宇宙人」と言っていたオカンも中々のものだったのかもしれない。
今、生きていたらなんと言っていただろうか?と思うけど、やっぱり「死後」だからのタイミングなんだなと思ってしまう。
自分を自覚した弟は、今までコンプレックスだった事も自信に変えたようだった。
自分にしか見えないものがいる事も、人に信じてもらえない感覚が自分にある事も
「人と違う自分」というコンプレックスから解放されたようだった。
それからの弟は、相変わらず、不器用でどうしようも無いところもある反面、宇宙については現役東大生を唸らせて
「うちの宇宙研究会も大学外の参加枠があれば、是非参加してもらいたい位です。」
なんて言われた事もある一面を持って、マイペースに生活を送っている。
本人は、楽しく宇宙について話していただけらしい。
それだって、以前なら臆していた事をのびのびと「自分」をアピール出来ている事の現れだった。
私はと言うと、最近はそんな弟の言い出す事をかなり参考にしている。
先のアメリカ大統領選も最初から
「トランプなんだよ。決まっているんだ。」
あの「ミスター都市伝説の関さん」ばりに言っていたし、
去年は
「来年用にマスクを買っておいた方がいいかもしんない。花粉症でなくても必要になるかも」
と、言っていた。
私は半信半疑だったが、インフルエンザ対策になればいいやと、いつもより多目のマスクを購入しておいた。
結果、あわてなくてすんだ。
だか、弟の言う事はあくまでも「参考」に留めている。
それは「可能性」の話であり「予言」ではないからだ。
とは、いえ実に面白い。
前回のブログのように、ビックリさせられる事もあるけれど、今はそれを密かに楽しんでいる私である。
(前回のブログ↓)
追記
ちなみに弟の真の姿は「第3シリウスのノンモ」という生き物で、双子のように「女の子」がもう1人いる「ツインソウル」なんだそうです。
ビジュアルは、トイストーリーの「エイリアンことグリーンマン」に似ているそうです。
信じるか、信じないかは貴方次第です。