タイトル ろうの両親から生まれたぼくが聴こえる世界と聴こえない世界を行き来して考えた30のこと

著者 五十嵐大

出版社 幻冬舎

出版年2021年2月

 

内容 1983年宮城県に生まれた著者は聴こえない両親 祖父母と暮らしていた。父は病気による中途失聴だったため多少言葉の理解があったのだが 母親は生まれつきの障害ため言葉の理解不足や声も構音障害があった。著者が小さい頃は「お母さん大好き」で自分が聴こえる役割や手話を使うこともいとわなかった。しかし 学校に行きだし 世界が広がると 自分と他家との違いが鮮明になる。母親の言葉を友人に揶揄されるなどもあり知られないようにと生活するようになる。結果疎ましい存在として 人前で手話を使うことも無くなった。

父親は障害者枠での雇用のため 家庭の収入も余裕が無かった。

公立高校の受験に失敗し 高額な私立に行く事に。その時に 母親がパートに出ると言い 著者は「いじめられたらどうするんだ。自分から傷つけられに行く事はない」と言ってしまう。

高校卒業後は 進学せず表現者になりたいと役者を目指す。しかし 目が出ず 2年たち環境を変えるため上京する。アルバイトの日々の中で 多少知っている手話で接客したことがきっかけで 手話サークルに所属することに。そこで 自分が「コーダ」と呼ばれる存在で 名前がつくほど同類がいることに気づく。聴こえない人を先回りして守ることが 良くないことだとも。

また 表現の方法として 編集者 ライターの仕事をすることに。

やがて 東日本大震災 父親の病気 祖母の死をへて 著者は 自分のことをウェブ記事に書くようになったのだった。

 

所感 吉沢亮さんが今度主演する映画のもとになったと紹介されていて知った本。最近タイトル長いアニメ多いけど その影響なのかな。

五十嵐さんは現在40歳。その年齢だと障害に対して少し理解が世の中は進んでいたと思うのだが 著者の中ではその感覚はない。

家族って 二つと同じはないのだけど 自分としてはその家族しか経験できないのだから 当事者として当たり前だったり 他が見えなかったりはあると思う。著者が ここまで気にすることはないのではと他人は思ってしまう 子どもの世界での 言葉の投げかけなど。

母親のことは大好きだからこその著者の葛藤が悲しくもある。しかし 母はいつでも 著者を否定することなく 深い愛情に満ちている方だあることは奇跡のような生い立ちでもある。それは 祖父母からは 母親のことを何とか普通の子になって欲しいと普通学級に入学させ、しかしついていけず結果的には聾学校へ。そして同じ障害の男性と出会うが 結婚を反対され かけおち。両家が折れたが 結婚の条件に子供は作らせないと言われた。しかし 祖父母の許しを得て結婚10年目に生まれたのが著者という。

いつの時代の話かとおもうようなことだが つい最近であるのだ。

著者は隠して 隠して 恥ずかしい 恥ずかしいと生きてきたが 震災の時に母と祖母を避難されてくれたのは 近所の方。周囲には敵しかいないわけでなく 見てくれている人は必ずいるということだと思った。