タイトル イコトラベリング1948ー
著者 角野栄子
出版社 角川書店
出版年 2022年9月
内容 著者角野氏の自伝。
イコ13歳 16歳 18歳 22歳を起点とする章立てで構成。
イコは東京育ちだが 戦争中は千葉に疎開。終戦後2年半たち 東京の小岩に転居。市ヶ谷にある私立の女学校に編入する。
父セイゾウは骨董商を営む。戦争に行っていたが病をへて復員。東京の深川にあったお店で大空襲にあい 意識を失うほどの怪我をした。イコの母は5歳の時に亡くなっていて 継母光子さんとの間の弟 妹が出来た。
13歳のイコ。学校の近所のアメリカ将校の家が気になり 英語は禁止されていたはずなのに英語教師がいることに疑問を持つなかから 「英語」「外国」に興味が。しかし何をしていいのか模索の日々。ある日神田の古本屋で見た英語の本 アメリカ映画 興味は尽きない。学校の友人利さんが火傷の治療のため渡米する。そこからの便りにはアメリカで進学するかもとのことも。
イコ16歳 高校2年生。英語に親しみながらも 何者かになる模索は続く。自由奔放なクラスメイトチヨさんに影響され新宿界隈に出かけることも。また山田さんは大学生になるために大学に行くといいながらも 専攻は政治学を学ぶという。戦争が何故起きたのか自分の父が戦死した理由がわかるかもしれないと。
イコも大学受験する。ぼんやりと希望する翻訳の仕事をしたいことを理由に父を説得。無事に早稲田大学に合格する。
イコ18歳 大学に入り 英語の勉強をするが 興味が今一つ定まらない日々。そんな時山田さんはアメリカに留学することに。イコも留学したいという希望が芽生える。
友人の紹介でアトリエに出入りするうちに神田の古本屋へ出入りするようになる。そのご主人の紹介もあり 紀伊国屋書店の編集の仕事を卒業後の進路先にした。
イコ22歳 仕事ははじめ 雑用ではあったがそれなりに充実はしていた。しかし ここではないどこかへ という願望はずっとくすぶったまま。ある人から希望は声に出していった方が良いと言われイコもそうする。同僚の親戚がブラジルで日本語教師を探しているが行くかと声がかかる。そんな中 アメリカの大学を謳歌していた山田さんが家業を継ぐために帰国を余儀なくされる。
イコは父を説得する「自分にしかできないことを見つけたい。やりたいことを残して 生きていくのは嫌なの。無念が残るから」と。父は「わがままを通せる時代になたのかもしれんな」と。許すとは言わない 自分で決めなさいと。
そしてイコは旅だつ。
所感 魔女の宅急便の著者としてあまりにも有名。生い立ちについてはあまり知ってこなかったがそうなのかと。
宅急便以外の本を読んではいないが 主人公キキの生きざまは著者のいろいろな「もがき」がモチーフなんだなとわかる。
キキと大きく違うのは「戦争」。著者自身は怖い思いはしていないようだが 父の従軍 怪我 友人が抱えた戦争 はやはりイコだけでなく その人ももちろん大きく影響を受けている。戦争前 中 後 市井の人々にとってこの時代に生きた人は必ずと。
イコは経済的に裕福ではないが明日のコメに困るほどではない暮しの中で 比較的自由に過ごせているからの生き方の悩みだったのかもしれない。父は結婚が女の幸せと思っている節はあるが イコの母が若くして亡くなっていることから「女の幸せ」が結婚にまっすぐ結びつくものでははなかったのかなと思った。またイコにとっても家族とのつながりが「父」しかいないという状況は 父も申し訳ないとの思いは常にあったのかもしれないとも思った。
トラベリングの意味をハッキリ定義づけていないが 「ここではないどこかへ向かって歩き続ける」という意味かな?