タイトル 今日拾った言葉たち

著者 武田砂鉄

出版社 暮しの手帖社

出版年 2022年9月

 

内容・所感 著者が隔月刊行の「暮しの手帖」にコラムとして掲載したものをまとめたもの。2016年から2022年前半までがまとめられている。

その時著者が心に引っかかりを覚えた「言葉」に対して思ったことを記載。言葉の出典は書籍や論文 tweetなどからも。

必ずしも名言ではなく ダメな言葉からの指摘も多い。

欄外にその時の社会のトピックスも記載されているが SMAP解散のニュースについても。また 記載されていることが今も引き続いていることも多いのが なんだか・・・・・。この頃から社会は何の進歩もしていないのか。

 

印象に残っった言葉をいくつか

①「空襲」を「空爆」と言い始めた時  思想家内田樹さんの言葉。東京大空爆とは言わない。それは地上から見ているから。でもイラクやシリアに対しては「空爆」を使う。つまり空から地上を見ている。受ける側の目線を忘却してないか。忘却は加害である。

②泣いただけで終わらせないでください。知る事には責任がともないます  柳美里さんの著書での女川で被災した女性の言葉。映像や言葉から泣きながら「寄り添いたい」という ○○年たったのかと思うだけでは「責任」と向き合えてない。「知る」には責任がともなう。

③わかってもらえないことや、わかってあげられないことが、ちゃんと心地よいままでいたい。わかんない部分があるからこそあなたと私は他人なんです。 最果タヒさんのことば。「いいね」に代表されるように今の時代はどれぐらい共感したかが数値化される。映画をみる 食事をする みんなの評価が私の評価基準になっている。そして「みんな一緒」の方向に動き出す。人は簡単に理解できないもの。だから違いを丁寧に進めることが大事

④「もらったものだけど、美しく、精神的な支えになってきました」と言えばいい 赤坂真理さんのことば。現憲法は押し付けられたものだという考え方と現憲法のおかげでこの年月戦争を起こさなかった という勢力がある。しかし赤坂氏はそれをあからさまに刺激しあうのではなく作ってもらったものと認めたうえで それを精神的な支えにして来たと言えばいいと。

⑤加害がなければ被害はない 信田さよ子さんの著書からの言葉

 

そして 武田氏のあとがきにかかれていた言葉。EXITの兼近さんとりんたろーさんの関係性の中でしばしば「論破」の場面がみられて りんたろーさんが「キー」となっているのも何度も見ているいちファンとしてまさにと思いました。

 

論破を得意としている人は、何の意味があるんですか、という問いかけを好む。意味の有無を自分勝手に判断しながら、それを基準値にして、ほら、意味ないですよねと繰り返す。そんな彼らの多くは、なぜかにやにやしている。自分、余裕たっぷりですよ、という表情をしている。どういうポジショニングでいれば、自分が有利でいられるかを探し出した結果なのだろう。自分なりにハッキリとした結論を出す。これってこういうことですよねと、と力強く言い切る。議論ではなく、もはやゲームである。考えていることをまとめるには時間がかかるという選択肢は、最初から用意されていない。いつまでも考えていると、いつまで考えているんですか、それをやって何の意味があるんですか、と言われてしまう。そもそもどうしてあなたに意味の有無を決められなければならないのか。それでも即答を求めてきて、即答できなければ負け、になる。結果言葉がシンプルに、そして鋭利になる。言葉に即効性を求めるようになってしまった。