夜、たーりーさんが寝たあと、山のように溜まった洗濯物のアイロンがけをすることにした。

いつもは、ポッドキャストを聞きながらするけれど、今日は尾崎豊だった。

たまたまユーチューブを開いた時、ミスチルの桜井さんのが「僕が僕であるために」をカバーしてるのを見かけた。聞いてみたらオリジナルも聞きたくなった。

彼の音楽は、いつも高校時代を思い出させる。自分が聞いていた訳ではなく、親友が大好きだったから。耳にしたことはあったけれど、当時は聴きにくく感じた。

高校時代は、最近夜になると行きたくなるところ。子守や家事、勉強なんかで慌ただしい1日が終わって、たーりーさんが寝て静かになると、私の心は高校時代にタイムトラベルをする。

あの頃が1番楽しい時だった。それまでは広く浅い友達付き合いをしていたけれど、高校の2年目から、ほんとに「友達」と呼べる人達に出会った。「うちの学校から大学に行った生徒はひとりもいない」と先生が言うような学校だったので、受験のプレッシャーも全くなく、社会人になるまでの間、ヒマ潰しをしているような毎日だった。

学校が終わってバイトから帰る頃には、外はもう暗くなっていた。でも夏はまだ暑くて、蒸し蒸しして、虫やカエルの鳴き声を聞きながら自転車をこいだ。冬は何故か、かすかに焚き火の匂いがした。寒すぎて、自転車を降りるときには、足が凍ってしまったようにカクカクしていた。

家に着くと、父と母はご飯を食べていた。時には夕飯が済んで2人でテレビを見ていることもよくあった。

そして母が私の夕飯を出してくれて、その日の話をしながら食べる。父は会話に参加する時もあったり、テレビに集中していている時もあった。寝る時間になると、

「そろそろお風呂入って寝なさい」

と言って電気を消して襖を閉めラジオをつける。そして母が

「さあ、お風呂入りなさい」

と言って、後片付けを始める。

そんな毎日がどんなに幸せだったか、全く分かってなかったなぁ。

一生、地元に留まる、って言っていた。結婚もしない、って言っていた。でもみんなより先に結婚して、東京どころか、日本から離れてしまった。ひたすら前しか見えなかった。気づいたら20年以上経っていた。

たーりーさんが産まれて里心がついたのか、歳をとった証拠なのか、それとも父が恋しいせいなのか、母に会いたい気持ちが強いのか。最近は後ろしか見えない。布団にもぐって、あの頃に戻った振りをしたい。父も母も元気で以前のような生活をしている振りをしたい。

でも次の日

「ママおきてぇ〜!」

と言う声で現実に戻る。そしてたーりーさんのおかげで、昼間だけでも、前は見えないけど、今いるところは良く見える。ありがたい。

今日はイースターボンネットを作った。
虹色が好きな年頃らしく、虹色のひよこは思った以上のヒットだった。

母には1年に1度くらいしか会えないけど、お互い今のところ普通の生活をしている。たーりーさんも毎日楽しく過ごしているし、旦那さんも彼の家族も普通の生活をしている。この「普通の生活」が長く続きますように。