櫻葉❤
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Side S
隣を気にしつつもそれなりに集中できてたおかげか、
90分の授業が驚くほどあっという間に終わった。
英語がこれほど楽しいと、わかったと思えたのは初めてかもしれない。
講師の名前すら知らない俺は、
慌ててテキストなんかを鞄に詰め込んで席を立つと、
先生が出て行ってしまったことを確認しながら慌てて部屋を飛び出す。
エレベーターの前いた講師に追いつくとそのまま一緒にエレベーターに乗り込む。
1階のフロアに先生が下りるのを待って、自分も下りた。
「あのっ」
「ん?」
エレベーターから出て、先生たちが集まるその部屋に入る手前ぎりぎりで、
ようやく声をかける。
そこには他の生徒たちがいないからだった。
「すみません、、、」
お辞儀をしながらまずは自分の名前と学年を伝えた。
そうして、先生の授業を、
今日の他にも俺に合っていそうな授業をやっているかを、
直接聞いてみたのだった。
「コレとコレ、あとこっちもいいと思うよ」
先生は自分の授業の割り振り表を差し出して、
何曜日のいつの枠が合っていそうかを教えてくれた。
慌ててノートに記載する。
そして言い終わると、その講師は耳打ちするみたいにして
「黙って勝手に授業受けに来ちゃっていいよ」
と言ったのだった。
「え?いいんですか?」
本当ならその分の授業料も支払わなければならないはずだけど、
その講師はニコニコしながら内緒でねと言った。
「もう席が空いてないから立ち見になっちゃうけどね。それでもよければ。
来てる子、多いから。僕の授業ならどれでも、来れるときだけでもおいで」
その日は気づけなかったのだけど、
その講師はあまりに人気過ぎて、立ち見で授業を受けてる子たちもいるのだった。
もちろん、その子たちは正式に授業を取れなかった生徒たちだ。
先生はそれも、内緒でいいよって言っているらしかった。
そういうところも、この講師が人気になる理由なんだろうなと思う。
俺は礼を言って、その場を離れると、
すでに英語ができるような気分になっていた。
明らかにテンション高めで、
コンビニにお昼を買いに出かけた。