櫻葉❤
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Side M
あのころ、
グルーチャットでのやり取りは正直、
大野先輩とやり取りできることが嬉しかったし楽しみだった。
あのころ、オレが好きだったのは大野先輩だったから。
けれどそのチャットで一番メッセージをくれたのは櫻井部長で、
大野先輩は決して積極的ではなかった。
そうして忙しいはずの櫻井部長から
なんてことない会話や写真が送られてくるたびに
少しずつそのやりとりが楽しみになって、
気づけばそのラリーは遅くまで続くこともあった。
そのときは気づかなかった。
櫻井部長はいつも、メッセージの中で仕事の話しをしなかった。
それはまるで、ただの先輩後輩のような接し方で、
知らない間にオレはいつもその瞬間、仕事を忘れてた。
仕事の先輩とやり取りをしているというのに、
仕事のことを忘れられたのだ。
そうして、
直属の部下になってもいまだに、そのやりとりが続いてる。
おまけにそのメッセージはいつだって、
なんてことない日常の写真なんかが送られてきて、
あのころと何も変わらないのだった。
「相葉く~ん」
「大野せ、、っ、、部長」
昼休みはいつも気分転換をかねて、出来るだけ外で食べる。
ときには櫻井部長と食べることもあるけど、
その数は多くはない。
エレベーターで1階に降りて歩いていると、
後ろから声をかけてくれたのは、大野先輩、、、部長だった。
「先輩でいいよ。久しぶりだね~」
少し小走りで駆け寄ってくれた大野先輩は
あのころのようにフワリと笑う。
「元気そう」
「はい。元気です」
営業部と企画部はそれぞれ部署のある階が違うし、
普段から行き来する部署同士でもない。
だから大野先輩に会うのはずいぶんと久しぶりだ。
「お昼?」
「はい」
「俺も。一緒に行く?」
「はい、ぜひ」
いまはもうそういう意味で好きではなくても、
大野先輩に誘われてお昼に行けることはとても嬉しかった。
オレにとって大野先輩は人として、先輩として、
それから一人の男としても、
いまも尊敬する、上司の一人であることに変わりはない。