【李蘭side】

「「待て(待ちなさい)!!」」っと、どこからか声がした。
この声は・・・もしかして・・・・・。
私は、ある2人の顔を思い出した。
でも・・・こんなところにいるはずがないのに・・・。
「な・・・ん・・で・・・・?」
「おいおい、李子、俺がいきなりあらわれたぐらいで、そんなに驚くなよ~」っと彗が困ったように言った。
「だって・・出て行ったんじゃ・・・?」
「あれ?お前、聞いてないのか?・・・おかしいなぁ・・・。」彗が不思議そうに首をひねった。
「?・・・なにが?」
「まぁ、いいや、後で話す。」
「う、うん・・。」
「それより・・・・。」彗がいつも私に見せないような、顔を見せた。
「おい、お前ら、李子に手を出しておいて、ただで済むとか思っていないよな?」
「な、なんで、彗様がここに・・・・。」彗を見てたじたじになる刺客。
「なぜかって?それはな、皇位継承式を辞退してきたからだ。」
結構、問題があることをサラリと彗は言った。
「えぇ!?」
彗が私の方を向いて「あれ・・?李子・・・それも聞いてなかったのか?」と言った。
「う、うん・・・。」
「・・・・・・・・。」
あれ?今、一瞬、彗が「陸人様の阿保」って言ったような・・?気のせいか。
「まぁ、いいや。それも後で話す。」
「わ、分かった。」
「それより、李子を殺せと命令したのは誰だ?それとも、自分達が独断でやったのか?」
彗は刺客達の方を向くと、威厳のある声で刺客達に聞いた。
「ち、ちがいます!」
「じゃあ、誰なんだ?」
「シェ、シェイリー・シュリトア様です!」刺客達はあわてて答えた。
「なるほどな・・。まぁ、あいつならやりかねないな・・・。」彗が納得したように言った。
「彗様、来るの遅いですよ!」花音が彗に怒鳴った。
「うわっ!うるさいな・・・・仕方ないだろ?説得に時間がかかったんだから。」
「説得?」
「・・・・それも聞いてないんだな?李子?」
「う、うん・・・・。」
私が答えると彗がなぜか溜息を吐いた。
「そっか・・・。まぁ・・李子が無事で何よりだ。」
好きな人が・・・・・目の前にいる・・・私の好きな人・・・・。
「彗」
「ん?」
「手、触ってもいい?」
「いいけど、なんで?」
「まぁ、いろいろと・・。」
彗の手を触ると、あの頃と変わらない、大きな手だった。
それだけで十分だった。
そう、それだけで・・・。
「り、李子!?」彗がたじろいだように言った。
「ふぇっ・・・・・。」いつの間にか、私は泣いていた。
「うわー・・・彗様が泣かせたーー!」花音が大声で言った。
「最低です、彗様・・・。」花音のついでに刺客達とフロールさんまでからも非難する声がした。
「り、李子、俺、なんかしたか?」
「してないよ・・・。」
「じゃあ、なんで?」
「嬉しいから・・・また彗と会えて嬉しいから、涙が出たの!」
私がそういうと、なぜか彗は赤くなった。
「ヒューヒュー」刺客達から、そんな声が聞こえた。
「はぁ・・・。ほんと、李子にはかなわないな・・・。」彗が困ったように言った。
「李子・・・。」
「なに?」
「いきなりで悪いけど、少しの間、寝ていてくれるか?」
「え?」
「そんなあからさまに不安そうな顔をするなよ、どこにもいかないから。」彗が優しい声で言った。
「本当に?」
「あぁ。本当だ。」
「わかった。」
そして、私は意識を手放した。

【彗side】

李子は今頃、どうしているかな・・・。
そればかりが気になって、仕方がない。
・・・・いちお、あいつらに護衛は頼んだものの・・・。
「はぁ・・・・。早く終わらせて李子の所に戻らないとな・・。」
そうつぶやいたとき、親父が部屋に入ってきた。
「彗、準備ができたみたいだぞ。もう、たくさん集まっている。」
「わかった。すぐ行く。」
いよいよか・・・・・。
ここからは、俺次第・・・。
うまくいけばいいけどな・・・・。
そう思いながら、俺は自室を出た。

【李子side】

彗がいなくなってもう4週間がたつ。
最近は、花音と一緒に帰ることが多くなっていた。
今日も、そう。これから、一緒に花音と帰る。
「李子、帰ろうよ~!」
「あ、うん!」
両親もすっかり明るくなった私を見て、安心していた。
まぁ、それは表面だけで・・・本当はあんまり・・・まだ、彗がいないのを受け入れないでいる。
「どうかしたの?」
気落ちした私を花音がのぞいてきた。
「な、なんでもない!早く帰ろうか」
「?うん!」
「それにしてもさ~」
花音は学校から出たら、話し始めた。
花音の話は好き。なぜかというと、色々と勉強になる話をしてくれるから。
植物の事とか、気象の事とか、いっぱい話してくれた。
今日は、動物の話らしい。
「でね、パンダは何科だと思う?」
「んー・・・パンダ科?」
「ブッブー!正解は、クマ科でした!!パンダ科なんてないよ~」
「へ~、そうなんだぁ~、意外かも・・・。」
「でしょ~」
花音が楽しそうに言う。
2人で楽しく歩いていると、急に花音が立ち止まった。
「?どうかしたの?花音?」
「ちょっと、そこに隠れている奴、今すぐ出てきなさい!学校から、ついてきていたのはわかっているのよ!」っと、花音が唐突に茂みの方に向かって言った。
「・・・ちっ、見つかったか・・・。」っという声がしたかと思うと、茂みから、飛び出してきた。
なぜか、忍者の格好をしている。瞳の色は赤・髪の色は銀だった。
一目でわかった、あぁ、この人はヴァンパイアなんだって。
「なぜ、私たちの後をつけてきたの?」花音が冷静に言う
「・・・・・お前に言う必要はない。ただ、1つだけ教えてやる。ある人に頼まれて、桜木李子という娘を殺しに来ただけだ!」っと、言ったと思ったら、花音に向かって、攻撃をしてきた。
「ある人・・・?李子、あなたは、はじにいて。」っと言いながら、花音はその攻撃を軽々とよけた。
「う、うん・・・。で、でも、大丈夫・・?」
「大丈夫よ。それより、弱いわね~、これなら、私1人で十分ね。」っと、花音が笑いながら言った。
いつの間にか、花音の瞳が赤く染まっていた。
「くっ・・・・おい、お前ら、出てこい!」っと、刺客が叫んだと思うと、大勢のヴァンパイアが出てきた。
ざっと見ても、60人ぐらい入るだろう。
「なっ!なんで、こんなにも・・・。」花音がうろたえた。
「へ、ミシェーリア様に頼まれて、いっぱい集めておいたんだからな!」っと、刺客が言った。
「・・・なるほど・・・・ミシェーリアがねぇ・・・まぁ、あの人の予想通りね。」
「あの人・・?」っと私がつぶやいたとたん、一斉に刺客達がかかってきた。
「くっ・・・人数が多すぎる・・・。」花音が悔しそうにつぶやいた、そのとき。
「「待ちて(なさい)!!」」っと、どこからか声がした。
この声は・・・聞き覚えのある声だった。

【李子side】

彗がいなくなって、2週間がたった。
ぽっかりした、なんともいえない感じはまだあるけど、学校には行けるようになってきた。
学校に行ったとき、最初、彗のファンの人達にいろいろ聞かれた。
彗の事は聞いてほしくなかった。話題に出してほしくなかった・・。
この感情は、好きだから・・・そう感じる感情。
未羽がすぐに私の所に来て、ファンの人達から、助けてくれた。
「大丈夫?李子」
「うん、大丈夫、ありがとう李子。」
笑おうとするけど、うまく笑えない・・・・未羽がまた心配してしまう・・。
「李子、私に何かできることがあったら・・言ってね?」
「うん、ありがとう。」
私がそう言ったところで、ちょうど先生が教室に入ってきた。
「おーい、席に着け~。転校生を紹介するぞ~」
転校生?今の季節に?
今の季節は秋。季節外れだなぁ・・・。
っと思っていると、女の子が入ってきた。
その女の子は神秘的な、なにか胸の内に秘めているような感じだった。
外見は、黒髪のポニーテールによく整った顔。そして、その顔によく似合う大きな青い瞳。
まさに、美少女と言える女の子だった。
多分、こんなにかわいいとすぐにモテモテになるだろうなぁ~
余計なことを考えていると、女の子が自己紹介をし始めた。
「初めまして。私は杭全 花音(くまた かのん)と申します。親の転勤で引っ越してきました。みなさんと、仲良くしていきたいです。よろしくお願いします」
女の子の声もすごく凛としていて、聞きほれてしまった。
「んーと・・・桜木の隣が空いているから、桜木の隣な。」
「はい。」
「あ、あと、桜木!後で校舎の案内をしてやってくれ!」
「あ、はい、わかりました。」
杭全さんが隣に座った。
「よろしくお願いします、桜木さん。」
「あ、うん、私は桜木李子。よろしくね。」
「はい」
笑顔もすごくかわいいなぁ~
「あ、李子って呼んでね。そのかわり、私も花音って呼んでもいいかなぁ?」
「はい、いいですよ!とっても嬉しいです!」
「ありがとう。それと、敬語じゃなくていいからね」
「あ、はい、わかりました~」

次の日、私が学校に行くと、人だかりができていた。
そこには未羽もいて、私の姿を見つけると、こっちに寄ってきた。
「おはよ~、李子~」
「おはよう、未羽。どうかしたの?」
「それが、猫が紛れ込んだんですよ!」
「猫?」
「はい!」
「それで?」
「みんなが見ようとああやって、集まってきたんです」
「なるほどね~」
私と未羽が話していると、花音がこっちに来た。
「あ、おはよ~、李子・未羽~」
「「おはよ~」」
「どうしたの?」
「それがね・・・・」私は、花音に未羽から教えてもらったことを花音に教えた。
「ね、猫!?」途端に、花音の顔がこわばった。
「うん、猫。もしかして苦手?」
「う、うん・・。苦手。」
「そうなんだ・・・。」
そういえば、苦手といえば。彗も猫は苦手だったなぁ~・・。
はぁ・・・・どうしても、彗のことを思い出してしまう・・・。
「李子?」花音が不思議そうに聞いてきた。
「あ、ごめん、ちょっと知り合いを思い出しちゃって。」
「知り合い?」
「うん。私の好きな人。今は、どっか行っちゃって、いないけど・・。」
「それはどんな人なんですか?」
「その人はね、杉岡彗って名前で、とってもかっこよくて、優しくて、いつも私のそばにいてくれて、なんでもできる完璧な人なの・・。」彗の事を言っているうちに、じわじわと涙が出てきた。
「李子・・・・。」未羽が心配そうに私を見た。
「だ、大丈夫!思い出しただけだから!」私は明るい声を出そうとした。でも、でてくるのは・・・・涙ばっかりだった。
「李子、ごめんね、つらいことを思い出させてしまって・・・。」花音がすまなそうに言ってきた。
「大丈夫だって!」

・・・・・・・・私はそう言うしかなかった。いや、そうとしか言えなかった。