舌の記憶 | 立ち止まったハートが前進する!未来が視える奇跡リーディング

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【未来が視える!奇跡リーディング】で、立ち止まったあなたのハートを開きます。女性の健やかな幸せのためにポラリスは輝きます。人響三九楽ヒビキサクラ

 何歳から人は舌の記憶を待ち始めるのでしょう?

 

 

そんなことを考えたのは

 

 

「彼女のこんだて帖」(角田光代 講談社文庫)という

本のあとがきを読んだから。

 

 

この本は

 

 

一人の女性や男性のある生活、ある時間

の中のご飯がストーリーの軸となり

彼らの心情をあらわす、

というお話。

 

 

毎回いろんな食事が登場します。

 

 

たとえば、

中華ちまき

焼き立ての手作りピザ

餃子鍋

などなど。

 

 

ね、美味しそうでしょう?

 

 

 

 

おまけに巻末には

 

 

それらの料理のレシピ入り。

 

 

親切丁寧な本なのです。

 

 

 

 

ストーリーやレシピも良いのですが

 

 

何より心に残ったのは

「今日のごはん、何にする?」という

あとがきにかえて

という文章でした。

 

 

そこには作者である角田さんと

 

 

料理上手だったお母様との思いでが

色鮮やかに残されていました。

 

 

角田さんはお母様にほとんどの料理を

 

 

伝授された、とありました。

おせち料理以外。

 

 

そして癌で亡くなったお母様のすぐ後にやってきたお正月。

 

 

 

 

角田さんはこう綴っています。

 

 

 

 

「 私はこの先もずっと、

 

 

  本当にずっと、

  お正月には母のおせちが食べられるものだと

  信じて疑わなかったのである。 

  母の病状を知りながら見舞いにいっていたときでさえ。

  そのおせちがおもう食べられない。

  そう思ってはじめて

  私は母がいなくなってしまったことを心の底から理解した。

  かなしいというよりさみしかった。

  母の料理を食べられないのは

  自分でも驚くくらい、さみしかった。」

 

 

 

 わたしはこの文章を読みながら

 そして今書きながら

 涙があふれて止まりません。

 

 

 

 母を亡くす、ということは

 もう会えない、話ができない

 と、いうことだけでなく

 

 その人が作ってくれた料理さえも

 もう口にできない

 と、いうことだから。

 

 

 

 でも角田さんは数々の料理を

 お母様から伝授されて

 しあわせだと思うのです。

 

 

わたしは20歳で広島の実家を出て

 

 

それから大阪で仕事をしながら生活していました。

 

 

もちろん自分が好きで選んだことなので

 

 

悔いはないのですが

母に料理を教えてもらう時間まではありませんでした。

 

 

父や親戚たちとお店をしていた母は

 

 

祖父や祖母とも同居で

大変な苦労をしていました。

 

 

 

そんな忙しく毎日の中で

 

 

 

おいしいもの好きな母は

コロッケも餃子もポテトサラダも全部手作りで

お弁当も彩に気を配り

毎日作ってくれていました。

 

 

明るく誰ともでも友達になるくらいパワーのあった母が

 

 

病気になり、心も身体もどんどん弱っていきました。

 

 

心配になって何度か実家に帰った時

 

 

あんなにおいしいものが好きだったのに

食べ物に興味を示さなくなり

食べなくなった母は

どんどん弱くなっていきました。

 

 

そして突然、命が断ち切られました。

 

 

 

 

ですから

 

 

神戸の震災や3月11日の震災で

突然、愛する家族を失った方たちの気持ちが

本当によくわかるのです。

 

 

そして失ったものは

 

 

その人の命だけでなく

その人にまつわる

さまざまなものもすべて、と。

 

 

 

今、わたしに残る舌の記憶。

 

 

かすかに残る記憶をもとに

 

 

今日もご飯を作ります。

 

 

今日の夕食のメニューは

 

 

ポテトサラダとトンカツ。

 

 

「 ポテトサラダはね

 

 

 最後にびやー、とレモン汁を

 しぼるのがおいしくなるコツよ。」

 

 

ポテトサラダを作るたびに

 

 

そう言っていた母の言葉を

思い出します。

 

 

舌の記憶

 

 

 

それは親から子へ

 

子から孫へ

想いと共に

一つの物語のように

語り継がれていくのかもしれません。