前回の日記の「なんだかなー、コンサート」の数日後に、
わたしが住んでいる町のナーシングホーム(日本でいう高齢者入居施設)で
ピアノを弾く機会をいただきました。
それは、その施設の聖歌隊のクリスマスコンサートの伴奏でした。
なぜ、この施設でピアノ伴奏をすることになったのか、経緯をお話しますm(_ _)m
12月の第2週の半ばの水曜日の午前。
この日は12月(今年最後)のオルガンのレッスンに行きました。
レッスンに行く前に、出張奏楽の教会の牧師先生から電話がありました。
出張教会の牧師先生がわざわざ電話をくれるって、初めてのことです。
なんだろう?(この「なんだろう?」はクビの宣告かな...の不安)と、ドキドキして電話を取ると、
牧師先生:「こんにちは、かろやん!突然だけど、今日の午後に時間がありますか?僕は今日の午後、この町のナーシングホームでクリスマス礼拝をします。そこで2曲ほど賛美歌を歌いたいと思っているの。そこにはピアノが置いてあるから、かろやんに弾いてもらえたらいいな、と思って。
今日の14時から一緒に来てくれますか?」
という、出張礼拝のお誘いでした。
その日の午後は何も予定がなかったので、「はい!行ってみたいです!」とお返事をしました。
お年寄りの方たちの施設での礼拝。
いったいどんなふうに礼拝が持たれるんだろう?
そこで奏楽をさせてもらうことにも興味を持ちました。
レッスンが終わってから、14時前に教会で牧師先生と待ち合わせをして、牧師先生の車に乗って、お年寄りの施設に行きました。
レッスンではクリスマスの賛美歌をたくさん教えてもらったので、
クリスマスの賛美歌の奏楽はなんでもこいっ!の状態でした(^^ゞ
それに、オーボエのジャネットさんとの演奏があったことで、クリスマスのピアノ曲も弾ける状態でした。
施設に着いて、礼拝をする部屋に入ると、もうすでに礼拝に出席する人たちが待っておられました。
20名ほどいらっしゃいました。
牧師先生は、今までに月に一度のペースで訪れていらっしゃるので、礼拝出席者の方たちの顔や名前を覚えて、一人ずつに優しく声をかけていきました。
礼拝が始まるまで、少し時間があったからか、
牧師先生:「かろやん、クリスマスの曲、何か弾いてくれない?」
と、急にピアノで何か弾いて、と言われました。
礼拝に出席するお年寄りも興味津々でわたしを凝視しています。
えーーー💦と思ったけど、オーボエ・ジャネットさんとのクリスマス曲を1曲弾きました。
このときは、ジャネットさんに感謝しました🙏
弾き終わったら、お年寄りのみなさんが「パチパチパチパチ👏」と小さい拍手をおくってくださいました(;^ω^)
牧師先生:「クリスマスの音楽を聞いていかがでしたか?クリスマスを迎える準備はできましたか? 今、ピアノを弾いた人はかろやんと言います。今年から、僕の教会でオルガンを弾いているんですよ。
じゃ、クリスマスの礼拝を始めましょう。
はじめに『もろびとこぞりて』を歌いましょう。」
と、みんなで『もろびとこぞりて』を歌いました。
お年寄りのみなさんは、一生懸命に声を出しながら歌われました。
そして、牧師先生のクリスマスのメッセージみなさんと聞いて、さいごに『天には栄え』を歌いました。
これで礼拝は終了です。
礼拝が終わって牧師先生と帰ろうとした時、施設の職員の方がわたしに話しかけてきました。
職員の人:「ねえ、あなた。仕事してるの?」
わたし:「はい、小さな仕事をいくつかやっています。どれもパートタイムの仕事です。」
職員の人:「そう。じゃあ、お願いしたいことがあるの。ここには聖歌隊があります。聖歌隊が来週の月曜日にクリスマスコンサートをするんだけど、その伴奏をしてくれないかしら?」
わたし:「聖歌隊?月曜日?」
職員の人:「そう、来週の月曜日の夜よ。どう?」
わたし:「来週の月曜日の夜は大丈夫です。」
職員の人:「よかった!じゃあ、あさっての金曜日の午後に練習をするからそれにも来てくれないかしら?15時からよ。」
わたし:「あさっての金曜日?15時? たぶん大丈夫かな💦」
職員の人:「よかった、よかった!じゃ、あさっての15時ね!」
と、あれよあれよと言う間に聖歌隊の伴奏をすることになりました。
聖歌隊・・・。
どこかの立派な教会の聖歌隊がこの施設に来て歌うのかな・・・。
牧師先生に確認してみると、
牧師先生:「ううん、ここの入居者の人たちが歌うんだよ。でも聖歌隊っていう歌にはならないと思うけどね(^^ゞ」
え~!!
ここの入居者のみなさんが合唱をするんですかっ!!(゚A゚;)
声を出すのもしんどそうなのに、歌、しかも合唱なんてできるのかな💦
と、要らぬ心配をしました。
そして2日後の金曜日。
初練習であり、最後の練習に臨みましたっ。
施設に行って受付の人に「聖歌隊の練習に参加したいのですが。」と伝えると、
この前の礼拝が持たれた部屋に連れて行ってくれました。
すると14人ぐらいのみなさんが並んで練習の開始を待っていらっしゃいました。
私に伴奏をしてくれない?と聞いてくださった職員の方もいらっしゃいました。その方のお名前はキャロラインさんといいます。
キャロラインさん:「来てくれてありがとう。楽譜はピアノに置いてあるわ。」
と、ピアノの譜面台にコピー譜の束が置いてありました。
曲の確認をすると数えてみると12曲ほどありました。
みなさん、12曲も歌えるの?(゚д゚)
そんな体力があるの?💦
と、また要らぬ心配をしました。
だって、挨拶をしてもお返事をいただけなかったり、
声を出すのをめんどうがっておられたり、
練習が始まるのに眠っていらっしゃたり・・・、という様子だったからです。
12曲と言っても、ほとんどが賛美歌だったり、
アメリカでよく歌われるクリスマスの歌でした。
さらに2曲は、歌詞の朗読だけだったり、アカペラで歌うものもありました。
職員のキャロラインさんが、この聖歌隊のディレクター(指導&指揮)です。
キャロラインさんは、数年前までこの施設の正職員で働いていましたが、体調を崩され退職。その数年後に、この施設から「また働かない?」と声がかかり、復職されたそうです。
キャロラインさんのお仕事はレクレーション担当とのことです。
わたしにとっては初めての練習でしたが、みなさん、何度も練習を重ねてこられたようです。歌う順番もよく分かっていらっしゃるし、アカペラで歌う「クリスマスの12日」では、一人一人が自分のパートをしっかりと歌いこんでいらっしゃいました。
でも、「クリスマスの12日」の練習は大変でした💦
自分のパートをすっかりと忘れていたり、
人のパートを勝手に歌い出したり
「もうわからんー」と投げ出す人もいたり
間違えた人に腹を立てる人もいたり💦
※「クリスマスの12日」は、一つの文章に後から文をどんどんと継ぎ足していく言葉遊びの歌です。イギリスから伝わったクリスマスの歌のようです。
練習をしながら、キャロラインさんもキレ気味でした💦
みなさんが練習を放り出さないよう、キャロラインさんは励ましたり、
良いところを大きく褒めたりしながら、なんとか12曲のリハーサルを終えました。
また、わたしの名前を覚えるために、10分おきに、
キャロラインさん:「ピアノの人の名前は?」
聖歌隊のみなさん:「わすれたー。」
聖歌隊で記憶力のいい人:「かろやーん。」
キャロラインさん:「せーの!」
聖歌隊のみなさん:「かろやーん」
わたし:「はーい!」
という、記憶エクササイズもしました(;^ω^)
これを3回しました💦
(それでも名前は覚えてもらえなかったです。発音が難しいんだそうです)
練習を終えて帰る時、キャロラインさんから「お礼はいくらお支払いすればいいの?」と、聞かれました。
わたしはすぐに「いいです。わたしからのクリスマスプレゼントとして受け取ってください。」とお返事をしました。
今回は始めからボランティアのつもりだったし、伴奏譜はどれも容易だったので練習にたくさんの時間をかけることもなかったからです。
その日の練習をなんとか終えて、数日後、本番の日を迎えました。
この施設の玄関。
立派な建物ですっ。
聖歌隊にも素敵な名前があります。
「リッチランド・エンジェルズ」です!
(施設の名前が『リッチランド・シニアリビングホーム』なので)
コンサートのプログラムは、聖歌隊のみなさんが一つ一つ手作りで作成されたものでした。
聖歌隊のメンバーの名前、演奏曲のプログラムも手書きです!
本番前にキャロラインさん(右下の椅子に座っている方)から、最後のアドバイスを受ける聖歌隊のみなさん。
キャロラインさんも長時間立つことが難しいので、椅子に座ったまま指揮をされます。
開演20分前。
少しずつお客さんが入り始めました。
お客さんは入居者の方や、聖歌隊の家族の方たちです。
キャロラインさん:「かろやん!始まるまで何でもいいからクリスマスの曲を弾いて。」
と、急に、クリスマスの音楽を弾けっと指示が入りました💦
こんなこともあろうかと、オーボエとのコンサートで弾いた曲をいくつか持ってきていましたっ。
あのハチャメチャなコンサートがあったからこそ、今、急なことにも対応ができています。またまたジャネットさんに感謝しました🙏
2,3曲弾いたらコンサートの開演時間となりました。
キャロラインさんの挨拶によって、コンサートの始まりです!
1曲目からみなさんが元気よく歌っていきました!
2曲目が終わったら、キャロラインさんがお客さんにわたしの紹介をしてくださいました。
キャロラインさん:「ピアノで伴奏をしてくれる・・・。あれ、あなたの名前なんだったけ?自分で紹介してちょーだい。」
お客さん:「うひゃひゃひゃ~!!!!(゚∀゚)」
名前を忘れられる伴奏者ってそうそういないよね(;^ω^)
わたし:「わたしの名前は『かろやん』ですっ。」
聖歌隊の人:「そうそう、かろやん、かろやん。かろやーーーん。」
お客さん:「うひゃひゃひゃ~!!!!(゚∀゚)」
という感じで、わたしの紹介は終わりました💦
キャロラインさん:「ついでにかろやん、もう1曲、クリスマスの音楽弾いてっ。」
と、予定になかったピアノのソロをしろ、と指示が入りました。
でもオーボエとのクリスマスの曲があるので、これもなんとかこなしましたっ。
なんかこの国は「急に」が多いなぁ💦
そして、猛特訓をした「クリスマスの12日」の歌となりました。
この歌はキャロラインさんが伴奏譜を用意できなかったそうです。
でも、可能であれば伴奏譜をわたしが見つけて、伴奏をしてほしいと言われました。
この歌もオーボエとのコンサートで弾いた曲だったので、伴奏譜はなんとかなります。でもわたしはアカペラの方がいいと思いました。
これは歌というよりも、みなさんで言葉をつないでいく音楽です。
みなさんのテンポで進めてほしいです。
伴奏が入ることによってみなさんのテンポを崩してしまうと思いました。
結局、アカペラで決行することになりました。
みなさん、緊張しながら歌い始めましたが、最初の二人がまちがって止まってしまいました。
まちがった人:「やだーーー!!ごめんなさい~!!!はずかしぃ~!!!」
と両手で顔を覆って恥ずかしそうにうつむかれてしまいました。
その姿がとってもかわいかったです❤
お客さん:「うひゃひゃひゃ~!!!!(゚∀゚)」
と、こんな感じで、歌っては止まって「ごめんね~!」を繰り返していきます。
そのたびにお客さんが大笑いです!
みなさん、涙をぬぐいながら笑っていました。
聖歌隊を見つめるお客さんの表情はとってもあたたかくて優しかったです。
間違うことも歓迎されるコンサート。
とってもいいですね!
わたしも涙を拭きながら笑いました。
涙をふきながら「この涙はなんだろう?」と思いました。
笑い泣きの涙ではなかったです。
聖歌隊の人が、間違えながらも、つまずきながらも、みんなでこの歌のゴールを目指して進んでいこうとする頑張る気持ちに感動した涙だと気づきました。
きっとお客さんが流している涙もそうだったんだと思います。
この歌を歌い終わったとき、お客さんが総立ちで大拍手を送ってくださいました。
スタンディングオベーションですっ!
聖歌隊のみなさんもとってもうれしそう(*^^*)
その後も、順調にみなさんが歌い進めていき、全ての歌を歌いきることができました。
とっても素晴らしいコンサートとなりました!
こんなあたたかくて優しいコンサートってあるんだな、って思いました。
わたしもとっても楽しかったし、出演させてもらえて光栄に思いました。
また伴奏者として使ってほしいです(*ノェノ)❤
終わったあと、みなさんでミニ・パーティの時を持ちました。
ここでもジュースやクッキーがふるまわれました。
その時にキャロラインさんにお礼を言いに行きました。
わたし:「キャロラインさん、今回は素敵なコンサートにわたしも参加させてくださりありがとうございました。とっても楽しかったです。・・・もしよかったら、次回も参加させてほしいです(*´ω`*)」
キャロラインさん:「もちろんよ!またコンサートをするときはぜひピアノを弾きに来てちょうだい。コンサートだけではなく、いつでもここに来てみんなに会ってあげてほしいわ!そうそう、あなたにクリスマスカードがあるの。メリークリスマス!」
と、わたしにクリスマスカードをくださいました。
家に帰ってカードを広げてみると、キャロラインさんからのお礼のメッセージが書かれていました。そしてどこのお店でも使えるギフトカードが入っていました。
こんなことをしてくださらなくてよかったのに・・・。(´;ω;`)
でもキャロラインさんと施設側からのあたたかいお気持ちを感謝して受け取ることにしましたm(_ _)m
今回のコンサートはわたしの大切な思い出となりました。
出演させてもらえて本当に嬉しかったです。
聖歌隊のみなさんは記憶を留める力が低下しています。
認知症を患っている方もいます。
だから今回のコンサートは明日になったら忘れてしまうかもしれません。
でも、わたしが代わりに覚えたらいい。
今度みなさんに会ったときに、コンサートのお話をして思い出すお手伝いができるかもしれないです。
キャロラインさんは名指揮者です!
でも人生で初めて聖歌隊指揮者を務めたそうです。
みなさんの良さを引き出しながら、大感動のコンサートを創り上げました。
いろいろなクリスマスがあるな。
いろいろな音楽があるな。
いろいろな奏楽があるな。
今回はリードではなく寄り添う奏楽だったと思います。
みなさんと牧師先生のおかげで、素敵なクリスマスの思い出をつくることができました(*^^*)