レジ―「ファスト教養 10分で答えが欲しい人たち」
【「教養=ビジネスの役に立つ」が生む息苦しさの正体】
社交スキルアップのために古典を読み、名著の内容をYouTubeでチェック、財テクや論破術をインフルエンサーから学び「自分の価値」を上げろ――このような「教養論」がビジネスパーソンの間で広まっている。
その状況を一般企業に勤めながらライターとして活動する著者は「ファスト教養」と名付けた。
「教養」に刺激を取り込んで発信するYouTuber、「稼ぐが勝ち」と言い切る起業家、「スキルアップ」を説くカリスマ、「自己責任」を説く政治家、他人を簡単に「バカ」と分類する論客……2000年代以降にビジネスパーソンから支持されてきた言説を分析し、社会に広まる「息苦しさ」の正体を明らかにする。
美容院で読んでいた「日経Woman」が
「教養」についての特集をしており、
その中で山口真由さんがお勧めの本として紹介していました。
山口真由さんは、東大法学部を主席で卒業後、財務省へ入省。
退官後はハーバード・ロースクールで学び、現在は信州大学特任教授で法学博士・ニューヨーク州弁護士という才女。
(私はテレビの「モーニングショー」でよく拝見しています)
そんな高学歴な彼女ですが、
「勉強することは得意だけれど、勉強のためでなければ本を読まない」
のだそうです。
この取材のためにも数冊「教養」に関する本を読まれているのですが(真面目!)
そういった目的がないと本を読まないのだそうで、
そんな自分のことを「貧乏だ」と評しています。
本当に教養のある人というのは、目的がなくとも好きだからという理由で勉強する、
といったことを仰っていました(←うろ覚え
そんな彼女の発言に感心し
(東大主席卒業の自分を、教養の上で「貧乏だ」といえるのがすごい)
彼女がおすすめする本を読んでみようと思いました。
<主な内容>
第一章 ファスト教養とは?―「人生」ではなく「財布」を豊かにする
「ファスト教養」と「教養はビジネスの役に立つ」/「教養」と「金儲け」をつなぐ「出し抜く」
第二章 不安な時代のファスト教養
「脅し」としての教養論/読書代行サービスとしての「中田敦彦のYouTube大学」/世界のエリートのように「美意識」を鍛える必要はあるか/ファスト教養は「オウム」への対抗策になるか
第三章 自己責任論の台頭が教養を変えた
「ホリエモンリアルタイム世代」が支えるファスト教養/勝間和代は自分の話しかしない/教養×スキルアップ=NewsPicks/橋下徹と教養の微妙な関係/ひろゆきが受け入れられた必然/ファスト教養に欠落しているもの
第四章 「成長」を信仰するビジネスパーソン
インタビュー1 着々とキャリアアップする三〇代/インタビュー2 大企業で自問自答する二〇代
第五章 文化を侵食するファスト教養
「ファスト映画」と「ファスト教養」/ファスト教養視点で読み解く『花束みたいな恋をした』/AKB48と「ネオリベ」/利用される本田圭佑/「コスパとエンターテインメント」の先に何を見出すか
第六章 ファスト教養を解毒する
ファスト教養をのぞくとき、ファスト教養もまたこちらをのぞいているのだ/リベラルアーツとしての雑談、思考に必要なノイズ/「ジョブズ」を理解する受け皿になる
第三章までの、「中田敦彦のYouTube大学」の話や
堀江貴文、ひろゆきといった人たちの話は非常に面白かったです。
普段、私が感じていた彼ら(というか、そういうムーブメント?)に対する違和感を
わかりやすく解説してくれていて
「そうだったのか!」と目からウロコ、という感じでした。
「ビジネスシーンで競争力を持つために知識を習得する」
「時間がないため、表面的な知識を得る」
「成功しないのは努力していないからであり、自己責任である」
そういった考え方が、「ファスト教養」の根幹にあるようです。
私も過去にこういった本↓を買ったことがあります。
なので「ファスト教養」を否定しきれない面もあるのですが、
これらを買った真の目的は「知りたい欲」であり、
ビジネスのためではないので、
まだ焦燥感に駆られてはいないかな。。。とも思います。
それでも、下記の部分は考えさせられました。
あなたは繰り返して読む本を何冊ぐらい持っているだろうか。それはどんな本だろうか。
それがわかれば、あなたがどんな人かよくわかる。
しかしあなたの古典がないならば、あなたはいくら本を広く、多く読んでも私は読書家とは考えたくない。
渡辺昇一「知的生活の方法」からの抜粋だそうですが、
自分の最近の読書法について考えさせられる部分です。
前半は面白かったのですが、第5章以降はちょっと共感できなくなってきて
一番興味が出そうなエンタメの部分なのですが、
AKBとか「花束みたいな恋をした」で解説されているので例がわかりにくかったです。
もう少し「映画を早送りで見る」といった、タイパに関しての掘り下げをしてほしかったですね。
そして「ファスト教養」の対極にある「本当の教養」の手に入れ方は
明確化されていないので肩透かし感はあります。
でもそれは仕方ないかな。
「好きなことやってればハッピーで人生豊かだよね!」
という時代でもないので…。
この本が出版されたのは2022年9月。
今はこの時よりもまた少し、変わって来ているように思います。
「お金を稼げない人」を見下していた空気は
「糾弾する」といった空気になっているようで怖いです。
