私はかなり験を担ぐタイプで、子どものころから参拝は欠かさないように生きてきました。

新しい靴をおろすときは、前の日からトイレに靴を置いておく。靴屋で買ってすぐに履くなんてあり得ないことです。

毎月、部屋の中に新しい風を入れるため、真冬でもすべての窓を開けます。

家を守ってくださっている神様も毎月外に出て、一緒に空を見ています。

これね、キリがなくて自分でも大変だなあと思っているんです。

でも、やめた途端何かあったら怖いでしょ。だから続けているのですが、実はもうそろそろ楽になりたい。

初詣は必ず行きます。いまだに家族揃っていきます。子どもだけ友達と行くなんてことは許していません。これは家の絶対的なルールなのと、私がそういうことにうるさいことを知っているので、「大みそかは友達と初詣に行きたい」とは言ってきません。

もちろん家族と行ったあとに友達と行くのはありです。

初詣のマイルールがあります。

鳥居をくぐるときは深く一礼をして、敷居を踏まないようにします。かなり幅広の敷居なので大股で越えます。

さらに、参拝するまでは夜店に寄りません。神様のもとへ行くのに、その道中でベビーカステラを口にするなんて、私にはない発想なのです。

面倒な家でしょう?

そんな私が、中学受験のときに限って、初詣に行きませんでした。

勉強の方がかなり手ごたえが出てきて、迷った挙句、行くのをやめたのです。

参拝自体は大した時間ではないのですが、風邪やインフルエンザをもらうのが怖かった。

また、毎年足元が凍っていて警備員のおじさんが声を張り上げて注意しているのです。

「たいへん滑りますからご注意くださ~い」

受験生がたくさん来ているのになんという言い草。


しかし、大学受験は行きました。

中学受験、大学受験と経験しましたが、やっぱり『大一番感』があるのは大学受験。

もうひとりで行く年齢ですが、家の行事ということで家族で行きました。

賽銭箱の前で、(学力的に絶対無理なんですよね。奇跡をお願いしてもいいのでしょうか)というようなことを思ったのを覚えています。

神様と医学部は、「来ないでください」と全力で拒否してきました。

そりゃそうだよなあ~という学力でしたから、まあ納得でした。

しかし、とうとう「いけるんじゃないか」という時期がきました。

そこで、子どもに内緒である神社に行ったのです。

その神社は、「一生に一度だけ願いを叶えてくれる」のです。一度だけ…。

つまり、その「1回きり」の権利をこの受験で使ってしまうと、もう使えなくなる。

妻に「俺が行く」というと、「ふたりで行こうよ。その方が強力じゃない?」と言う。

そんなことはできない。どちらかが権利を残しておかなければこの先何があるかわからない。

予約した当日は、親戚も一緒に大人数で行きました。

実は、かなり遠方なのですが、私の実家が近いので両親の様子を見に行くついで、というと失礼なので、ついでに両親の様子を見てきました。

さて、その一世一代の神頼み、妻が代表して中に入ることにしたのです。

30分ほど経って妻がでてきました。

「ウトウトしてしまった…」と信じられないことを言うのです。

さらに、「何か頭の上で振ってたものが落ちた。それでハッと目が覚めた」と言う。

こんなところまで来て何を言ってるのか。妻に行かせたのが間違いだった。私が行くべきだった。そう思いました。

しかし、妻は言うのです。「あれ、何か降りてきたと思う。他の人は落ちてなかったもん」

小さな部屋らしく、4人ほど一緒に行うようです。お願い事をする本人以外は中に入れないので様子はわかりませんでした。

この出来事は子どもには伏せておきました。しっかりお願いしてきたよ、それだけ伝えたのです。

なんと、一生に一度の願いは叶いました。

妻は、「子どもを合格させてください」と言ったのか、「わたしをお医者さんの母親にしてください」と言ったのか、敢えて聞かないようにしています。


次回に続く・・・

 

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