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003/俺たちの子育て/第二反抗期は子どものチャンスを台無しにする

スーパー、ファミレス、電車、レジャー施設、大勢の人が集まる場所で大泣きする子を見かけます。泣くのが仕事というのは赤ん坊まで。歩けるようになった子どもが大泣きするのは強い訴えだから、俺たちの子育ては根気よく聞いてやろう、大泣きする子に育たないように頑張ろうと夫婦でよく話していたのです。

そんな私たちの子が、幼稚園デビューでまさかの大泣き。

「心配しなくても10日ほどで泣かなくなります。振り返るようなことはしないで私たちに任せてください」 幼稚園の先生は慣れたもので、まったく動じていない。

ところが、経験豊富な先生の予想は、外れてしまいました。

2週間経ってもうちの子だけが大泣きを続けているのです。

「幼稚園には向いていないのかも。どうしよう……」 妻が弱気になり始めました。

「そんなこと言ったってさ、保育園の方が怖いと思うぜ。俺の保育園の先生なんてチョー怖かったぜ。母親より怖かったよ」 私の保育園のイメージは最悪なのです。今でも鮮明に覚えているあの保育園、名前まで最悪だった。しかも、まだ現存しているという恐怖。これまでに一体何千人の犠牲者が出たのか。

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「よし、一度俺が連れて行くよ。話だけ聞いてても状況がよくわからないし」

本来は毎日でも私が連れて行くことができるのです。当時の私の仕事は、帰宅するのが深夜になる代わりに、ちょっぴり朝はゆっくりでした。

幼稚園は何時までに登園すると決まっています。子どもを送って行ったその足で仕事に向かうには早すぎるのです。いったん家に戻るのも中途半端。本音を言うとめんどくさいのです。

ところが、妻ならタイミングが良いのです。送ってから仕事場に向かうとちょうど良い時間になる。それでも子どもが可愛ければ私が送ってあげたくなるのでしょうけれど、本音が勝ってしまうのです。最近はイクメンなんて言葉が流行っていますが、私は少し疑問です。

「おぎゃー」と誕生したその瞬間、「あなたの子どもですよ」と言われて納得する。自分のお腹から出てきたわけでもなく、突然目の前に現れるのです。そして「あなたの子どもです」と宣告を受ける。そりゃそうなのかもしれないけれど、自分のからだから「よいしょ」と出てくる分身のような感覚は男にはなく、「はい」と手渡される感覚なのです。――少なくとも私は。

赤ん坊のときの可愛さと何年か育ててからの可愛さを比べると、正直かなりの差があるのです。一緒に寝起きし、同じ場所に出かけ、喜怒哀楽を共にする。そのとき見せてくれる仕草や行動パターンで分身を感じる。俺の子だと感じる。どうして俺と同じことをするの?と目を細める。大きくなるにつれて可愛さは倍増していくのです。赤ん坊のときの可愛さを1とすれば、10歳には100くらいに化けています。

そんな私ですから、本来は自分が送ることも可能なのに妻に任せている始末。それでも横着を言ってられません。可愛さが増してきた娘が毎日大泣きするというわけですから。


仕事場に早く到着してしまうことは覚悟の上で、しばらく私が送って行くことになりました。

(なんだ。ご機嫌じゃん。本当に泣くのかよ)

「あら、今日はパパに送ってもらったの。いいわねえ」 幼稚園の朝はとても良い雰囲気です。

娘を少し羨ましく思いながら、先生にバトンタッチ。

次々に登園してくるので先生も1人にかまってばかりいられません。ゆっくりと娘との距離が開きます。

「うわあーーーーん」

(こ、こ、こ、これか。さっきまでケロッとしていたのに……。こいつはバカなのか。家を出るときに既にわかっているはず。行先は幼稚園と確定しているわけだ。それなら家を出るときに愚図ればいいじゃないか。先が読めないバカなのか)

全く理解できないのです。慌てて戻った私はその場で娘に言いました。

「みんな幼稚園に行ってるのに佳織だけ家で過ごすのか? 友達作らないのか? そんなことすらできないの?」

おにぎり座りした娘は期待通りの返事をしませんでした。

「うん」

(は?は?は? うんってなに? 幼稚園行かないってこと?)

すると、先生が言うのです。

「ずっと泣いているわけじゃないので心配なさらずに。お迎えのときは笑っています」

(は?は?は? いつ泣き止んでるの?)

「佳織~、いつもずっと泣いてるの?」

「ううん」 おにぎりは首だけ横にふる。

先生の話では親を引き留めるのが難しいと判断した頃、泣き止むそうなのです。しかし、結構粘るようなのです。

「おまえ迷惑なやつだよねえ、それでも俺の子か!」

「うん」

「ダメダメダメダメ! 俺の子は幼稚園くらいで泣いたりしない! 父さんなんてねえ、恐怖の保育園だぞ! アドベンチャーワールドだぞ! ヤンキースの子どもがいっぱいいるんだぞ! それに比べると佳織はチョー幸せだぞ!」

「そんなことはないと思いますが……」 先生は苦笑する。

「先生は保育園をわかってないです。一応見学に行ったのですよ。先生の眉が槍でした」

「ヤリ?」

「そう、ヤリ。こんなの」 私は両手の指で槍眉をつくる。

先生は笑っていましたが、私は見落としませんでした。先生は一瞬自分の眉を気にする素振りを見せた。明日からはさらに柔和な眉にしてくることだろう。

「な! 佳織! 幼稚園くらいちゃんと行ってくれよ。頼むよ。父さんの子が幼稚園も行けないなんて情けないよ」

しかし、おにぎりは動かないのです。そういえばさっきからマジでおにぎりに見えてきた。


その夜、妻が提案をしてきたのです。

「写真とかを持たせようか」

「おまえの?」

「そう……」

「旅人か! あの世か! どんな距離だよ!」



結局、騒動は1年近く続いてしまいました。

泣き声が少しずつ小さくなるだけで、毎朝のお約束になってしまったのです。

初めての幼稚園行事を次々とこなしてもう十分園児らしくなってきたのに、ママと離れる瞬間は涙が出るのです。

そんな佳織も、年中さんになるとまったく泣かなくなりました。

妹分ができたことで、ちょっぴりお姉さん気取りなのかもしれません。

2017.10.4

桜井信一

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