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【お知らせ】
下剋上算数 攻略本 難関校受験編
桜井信一の最難関算数教室
下剋上受験 桜井信一の絶対合格カレンダー2018-2019
順次発売中です。よろしくお願いいたします。
「俺たちの子育て」の連載を始めました。
書店に行くと算数の解き方をまとめたような参考書があります。
私も色々持っています。
「流水算はこう解きます」とか「線分図はこう書きます」とか、算数の解き方をまとめてあるのです。
中学受験算数はちょっとコツがある。
そのやり方を一通り覚えなければ始まらない。
方程式を使いこなす大人の発想の外にあるものですから、こういう指南書を頼るしかないんだと思います。
別に買わなくても塾のテキストに載っているのです。
しかし、5年6年と大量にある塾テキストの中から探すのはさすがにうんざりする。
スッキリとまとめてあるものが欲しいというわけです。
これを使っても、模試では全くと言っていいほど効果がなかった。太刀打ちできなかったという経験をした方はきっとたくさんいるでしょう。
当時、私もこれを辞書代わりにして勉強しました。
ある程度まではなるほど使えるのです。
基礎問題なんてどこの問題集も同じ。
それを覚えれば解ける問題があるのです。
でも途中からこの無意味さに気付きました。
基本的な解法を覚える勉強方法では模試などの実践的なテストの点数は伸びないのです。
解法集はなぜ使えないのか。
1つ目の理由…解法集に載っている問題は、問題集に頻繁に顔を出すことはあっても、模試や過去問のような実践的なテストには出てこない。
類題といっても数字を変えただけのような問題は出ないのです。やっぱりひと工夫必要。そのひと工夫に対応できないのです。
2つ目の理由…解法集に載っている数はとても覚えきれる量じゃない。覚えたけつから順番に忘れていく。
社会の暗記のように何周もやれば覚えることができるでしょう。ところが、何周も暗記するという方法は線分図などを視覚で捉えることになり余計に応用がきかなくなるのです。
これはわが家の場合の話です。ターボエンジンを搭載した頭脳を持つ子の場合はまた別なのでしょう。
当時考えました。私たちに足りないものは何だろうかと。
頑張って解法を覚えても、ちょっとひねられるともうお手上げなのです。
解説に書いてある種明かしを見ると「なあ~んだ」とはなるのです。
それを最初から思いつくことがなかなか難しい。
どうやら、よく言われる「思考力」というものが足りないようだ。
「思考力」ってなんぞや?
いくつかの武器を持っていても、それを上手に使うことができない。
考える力がまるでないことに気付きます。
ではこれを鍛えるにはどうすればいいか。
悩みに悩みました。
単元別にすっきり整理された解法集を丸暗記することが、余計に考える力を奪っているのではないかと思ったのです。
問題を目の前にしたとき、「どうだったっけ?」と思い出すことから始めてしまいます。
これでは実践的な問題は解けないのです。
模試には、基礎点のようなものがあり、殆どの子が解けるようにしてある問題があります。
0点にさせるわけにいかない以上、最初からもらえる点数があるのです。
これ以外は大なり小なり考えて答えに辿り着かなければいけません。
「う~ん。どこかに糸口は…」から始める発想に変えるには、すっきり整理された解法集を使わせてはならないことに気付いたのです。
特殊算というのは、あまりにも単純に答えに辿り着きすぎなのです。
一本道であるために殆ど何も考えなくて良いのです。
論理的に解く、とは真逆の方法です。
通いなれた通学路を歩くようなもので、道に迷うことなんてなく、どっちに行こうかと考えることもない。
塾への道順もそう。お友達の家までの道順もそう。慣れた道はぼーっとしながらでも歩けます。
そんな子に、初めて行く街へ行ってこいと言っても、まず何から準備して良いかわからず、「無理だよ~」となるでしょう。そもそも最初から諦めることになる。
地図を持って行こうという発想すらないのです。
地図は方程式のようなもので、使い方を覚えれば広い範囲で有効です。
「この道が近いかな? ここからならバスに乗らなくても歩けるかな?」と考える機会を得るでしょう。
特殊算だって誰かが考えたもの。
誰がどうやって編み出したのか。
よくよく観察してみると、大人が普通に解く道順の最後の部分だけを取り出していることがわかります。
途中経過がすべてカットされているのです。
すべて理解している子は良いのです。これほど便利な話はない。近道なのです。
しかし、うちの子には向かないと判断しました。
これでは道すら自分の足で歩けないようになる。途中経過を省くのはまだまだ早い。
1つ1つ問題と向き合い、初めて通る道だ、途中からいつもの道からそれちゃうねと思いながら考えてみることにしたのです。
明日の娘の学習のために準備する毎晩の予習では、出来る限り思考力を使う解き方を選びました。それが遠回りになってでもその方が初見を解く算数力になると思ったのです。
勉強の合間、算数の問題集を片手に娘によく言ったものです。
「こんなの大半の子が出来るようにならずに終わるんだ。塾で何とか算を習っているのに出来るようにならずに終わるんだ。勉強時間の問題じゃない。頭を使えてない子が多いはずだ。じゃなきゃみんな出来るようになるはずなんだ。わざわざそこへ向かって進む必要はない。成功者が少ないレースではみんなと同じ方向を向いてはだめなんだ。俺たちは逆を行く。多分これが正解だ」
文章題だけではなく、平面図形の解法集もあります。
ここに補助線を引くと書いてあるのです。
知りたいのはそこじゃないのです。
どうしてそこに補助線を引くという発想になったのか、そういう頭になるにはどうすれば良いのか、そこに興味があるのです。
結果論ばかり並べられても逆効果でしかない。そう思ったのです。
立体図形はとてもわかりやく解説されています。
でも応用がきかない。
なぜかどこにも売っていないのです。
実際に模型を作って切断する工作キットのようなものが。
桜井家では、すべての問題を画用紙を使って作りました。
手際よく作れるようになるとき、あっさり解けるようになるのです。
そりゃそうです。どことどこを同じ長さにしなければ箱にならないか考えるわけですから。
後半は頭の中で作れるようにまでなりました。
何とかして子どもの錆びた頭に油をさし、動かさなければいけないのです。
黄色い画用紙が当時私たちが作ったものです。青い画用紙は、今年の3月29日のイベントで子どもたちに挑戦してもらったときの見本です。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20170927/16/sakura-saiogauma/6d/ed/j/t02200165_4032302414036463961.jpg?caw=800)
このように、円すいの側面を最短距離で通るとき、どんなルートになるのか。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20170927/16/sakura-saiogauma/b7/47/j/t02200165_4032302414036463959.jpg?caw=800)
立方体を切断した模型はどうやって作るのか。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20170927/16/sakura-saiogauma/3a/68/j/t02200165_4032302414036463964.jpg?caw=800)
これらが作れるようになったとき、解けないはずはないのです。
ただ、こういうイベントが無駄になることもわかっているのです。
実際に作ると簡単になるということはそのイベントで伝わるのです。でも家でそれをやることはない。
結局は日々の塾の課題に追われてしまうのです。
目先の週テストでクラス昇降する方が大事なのです。
「たぶんやってくれないだろうなあ」と思いながらも、1人でも家で続きをやってくれる子がいるかもしれない。そう願っているのです。
塾の復習も大事でしょう。
ところが、算数は覚えているうちに復習してはならない。特に図形でやってはならない勉強方法です。
すべての算数指南書が逆効果とはいえません。
私のときですら既に絶版のものが多かったのですが、栗田哲也先生が書かれた算数テキストは、すべて頭を使って考えて答えに辿り着くようになっています。
まえがきのところにも書いてあります。こういう参考書は一般ウケしないと。塾の先生に嫌がられると。
その理由を読んでなるほどなあと思いました。
算数が出来るようになる道はこれか、と教えてもらいました。
イベントや出版物を通して、栗田先生が気付かせてくれた「考える算数」を広く伝えようとしています。
思い出して答えを出し、マルになる。
考えて答えを出し、マルになる。
どちらが自分を認め始めるかなんて明らか。
でも算数というのはゆっくり考えている暇はありません。
1分や2分で答えを出すことを求められるために特殊算しか間に合わないという結論になるのです。
考え慣れた頭は1分もあれば道を見つけます。
ここに難関中学への道がつながっているのだと私は思います。
2017.9.28
桜井信一