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鬱(うつ)病なら何となく知っているけれど、

『双極性障害』って何? という人は多いのです。

全然知らない人はまだ良いのです。

聞きかじっている人が結構いるから、私は恐れているのです。


双極性障害、またの名を「躁鬱(そううつ)病」と言って、

躁病と鬱病を交互に繰り返す病気なのです。

私は勝手にこう呼んでいます。

「メトロノーム野郎」

というのも、妻が「メトロノームみたいな人ね。真ん中で止まれないの?」と笑うのです。

そこ、笑うことじゃないのに……。

確かに、片方に大きく振れるとその分反動が大きいのです。

そうならないようにうまくコントロールしなくてはならないのがこの病気というわけです。


躁鬱病というと、ハイなときとローなときがあって、薬物をやっているんじゃないかとか、あたまがオカシイ危険なやつじゃないかとか色々誤解があります。

双極性障害というネーミングなら、「???」で済むから好都合だけれど、軽く説明すると案の定「ヤバいやつ」と思われることがあるから困ります。

もう危なくて迂闊に打ち明けられない。

まだまだ堂々とできる病気ではないと常々感じているのです。



そういう私も統合失調症という病気が何なのかイマイチよくわかっていません。

こんな時代ですからネットでちょこっと調べれば済むにもかかわらず、別に自分が罹っているわけでもなく、家族にいるわけでもなく、そこまでして知る必要がないからよくわからないまま。

いま私が統合失調症に持つ適当なイメージのままで何ら困っていないのです。

「万一少しでも該当していたら怖い」

そんな気持ちもあるから余計に知ろうとしない。こうしている今もまだしぶとく知ろうとしないのです。

「先生。私は統合失調症ではないですよね? まさか違いますよね?」

どんな病気かもよく知らないのにイメージだけでそんな質問をしたことがあるほど偏見を持っている自分。

自分にも偏見があるから、周りの人もきっとそうだろう。

だから誤解や偏見をなくしたい、

なんて、これっぽっちも思ってないのです!


私がそんな殊勝なことを言うタイプだと思いますか?

ありえませんっ。

(-。-)y-゜゜゜



躁鬱病で悩む人たちのために、この病気を克服するヒントを伝えようなんて思っていません。

だって、私はまだ思いっきり闘病中だから。

それに、鬱病とは違って躁鬱病は治らないと言われているから。

寛解(かんかい)が限界。

つまりマシになることはあっても治ることはないと言われているから克服もくそもない。



躁鬱病と闘いながら社会で働き家族を養う方法を伝えようなんてことも思っていません。

置かれた状況なんて人それぞれだし、誰かの事例が自分に使えない情報だったとき、余計絶望するだけだから。



鬱病に関する本は書店に行けばたくさん並んでいます。

特に体験談はとても多い。

最近では「うつヌケ」なんていう漫画まで登場しました。

どの本も結局同じことを訴えかけているのです。

「大丈夫!きっと治るから」

「誰にでもなる病気だから油断しないで!」

「こうして過ごすのがコツよ!」

「この病気になった人が社会復帰できる世の中を」

「家族の理解と支えが必要なの」


何言ってんだか。

呆れるわ……。



きっと治る???

躁鬱病なのに鬱病と思い込んでいた私のような人はたくさんいるはず。

大丈夫も何も、治りませーん。

鬱病と信じていたときは卒業(断薬)を目指していたけれど、躁鬱病と知って覚悟したわ。

「オレは一生 薬と付き合う」



誰にでもなる病気???

そんなのどの病気でも同じだわ。大層に言うな!



過ごし方を教えてくれるの???

期待して読むと呆れることだらけ。

鬱病は動けないから寝とけだと。頑張るなだと。

地主の息子じゃあるまいし、家族を養う役目はどうするんじゃ!

「オレは意地でも布団から出て仕事する」

そうじゃないと一家離散だろーが。

この歳になって親を頼れんだろーが。

しかも寄りかかったら一緒に倒れるほど親も歳食っとるわ。




社会復帰???

休めと言ったり社会復帰と言ったり、どっちじゃ!

治ったら復帰だろーが。

治らない病気なら休めんだろーが。

世の中に助けてもらうほど税金払っとらんわ!




家族の理解? 支え?

自分で思うわ。

こんなメンドーなやつよく相手にできるなと。

いつ躁が顔を出すかいつ鬱に変化するか予測不能。

予測できたとしてもそんなにみんな暇じゃない。

オレにばかり神経を尖らせているわけにいかない。

妻も子どももそれぞれの役割に忙しい。

構ってばかりいられないってわけ。

構ってばかりいたら家族は成り立たんってわけ。

もう一度言う。


地主の息子じゃないってば!



薬の量からして私の躁鬱病はまあまあの症状らしい。

重症でもないし軽症でもないので、中症ってとこか。

そんな厄介者を家族の柱として一生付き合うことになった妻は嘆く。

「中学受験するって言いだしたり、本を書くって言いだしたり、躁鬱病になるって言いだしたり、ホント忙しい人ね!」

「躁鬱はなるって言ってないわ!」

「でも自分から突撃したようなものでしょ?」

「まあそうだけど…」 (._.)

「ちょっとぉ!ここで鬱にならないでね!面倒なんだから!」



初めて病院に付き添ったとき、妻は医師の前で言い切った。

「わたしは必要以上に協力しません。理解しようともしません」

お医者さんのびっくりした顔、いま思いだしても笑ってしまう。

「わたしまで鬱になったら娘が可哀そうです。わたしは絶対に引っ張られないように注意します」

引っ張るって……、死神じゃないんだからさ。

「休ませません。頑張って働いてもらいます。それがこの人の役目だから」

動けるほど薬を出してくれって言ったらお医者さん困ってたよな。



巷に溢れる過保護な鬱の本には悪いけど、オレは思うね。

「こんな面倒で厄介なやついないよ」

だけど良いこともいっぱいある。

つまり、『長所も短所も双極性障害』

これが桜井家の合言葉だ。



“躁鬱病なう”の私から見た精神疾患の世界をお届けするこのコーナー。


今度いつ書くのって?

そりゃあ、躁のときだよ。


じゃあ (^^)/

2017.5.11

桜井信一