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ニックネーム:金魚
件名:恐ろしく定着に時間がかかります
本文:桜井さん、助けてください。

小6男子、部活が活発な中堅校が第一志望で、今も月に1,2回のスポーツ活動を続けながら、大手塾の真ん中のクラスに通っています。

息子の算数の定着の悪さに手を焼いています。

授業内容の理解や復習テストの結果はそこそこよいのですが、模試はだめです。

少しひねった問題になると、定着に時間がかかり、初見問題には手がでません。

一度理解した応用問題でも、翌日にはきれいに忘れています。

反復復習を、翌日、翌週、翌月と折にふれて10回くらいやるのですが、都度、一発で自力ではできません。

解説し始めると、1秒後には、ああそうだった、とすぐに思い出します。改めて本人に説明させると、ちゃんと理屈が通っているので、腑に落ちているものと思っても、やっぱり時間がたつとできないのです。

一事が万事こんな調子ですから、塾の宿題やテスト準備と時間が無い中、並行して復習を進めても、焼け石に水で、積み残し分がどんどん溜まっていく一方です。私もイライラがとまらず、もう児童相談所通報レベルで怒ってしまいます。

そもそも、復習テストではできているので、何が本当にできないのか、一見してわからないのです。できなかったものはもちろん、できたものまで時間が経つとできなくなっているのですから。

10回で定着しなかったら、20回やればいいんですか。

しかし、わけがわからないまま、塾では日曜特訓など、実践にむけた特別講座がどんどん増え、ますます消化不良になっていきます。

もう大手塾のカリキュラムについていくのはやめて、もっと家庭学習の時間がとれる塾に移り、復習中心にやった方がいいのでしょうか。

ここにきて、もう本人の脳はオーバーフロー状態なんだと思います。

復習もそこそこに、今の塾のカリキュラム通りやっていくべきか、転塾し、家庭学習にウエイトをおくか、いっそ全て家庭教師にシフトしたらよいのか、どうすればいいですか。

なお、算数だけでなく、いずれの教科もパッとしません。

息子の直近半年の位置は、大手塾(Sではない)模試4科偏差値45-54、算46-58、国43-57、社48-57、理38-51です。

6年の夏を目前に、方向転換するなら最後のタイミングと思います。どうかアドバイスをお願いいたします。




金魚様、はじめまして。

たくさん書いてありますが、まずはキツイことから。

お子さんの脳がオーバーフロー状態なのだとしたら、それは算数の問題の種類が多すぎてキャパを超えているのではなく、お母さんが散らかしているんだと思いますよ。

ところで、Amazonで本を注文したことがありますか?

小さな本なのに無駄に大きな箱で届きます。

「過剰梱包する会社だなあ」と思っているユーザーも多いと思いますが、トラックにたくさん積み込むためにはある程度大きさが揃っている方が便利なのです。箱の種類が多すぎると荷崩れしますし整理し辛いのです。

本を袋に入れられたりしたらやってやれません。もう少し数があればレターパックのような封筒型でもいいのですが、2冊買う人がいたら結局箱になるから、「それなら全部箱にしてくれ!」となるのです。

想像で言っているのではないですよ。

実際に運んだことがある実体験。

桜井信一、やったことない仕事はエリート職だけ。

(-。-)y-゜゜゜


つまり、積み込もうとするときにお母さんがギャーギャー叫ぶものだから、トラックの中で荷崩れしている状態。というより、ただトラックの中に放り投げているだけかもしれません。

「もっと早く積みなさい!」

「姿勢よく積みなさい!」

「そっち向きじゃないでしょ!」

そんな風にわいわい言うから、私たちはすぐに転職するのです。

(-。-)y-゜゜゜


子どもの脳のキャパは恐ろしくデカいですよ。

受験算数くらいでいっぱいになりません。

「この鳥頭!」と怒鳴られてばかりの私ですが、受験算数くらいは入ります。


お子さん、あたま悪くないじゃないですか。結構やるじゃないですか。誰と比較しているのかわかりませんが、平均はあるではないですか。

ここで、私なりの偏差値の見方をお教えします。

偏差値に波がある場合、算数は低い方でみますが、国語は高い方でみます。

例えば5回の偏差値が、45、45、50、50、60の場合、算数は45が実力だと判断します。国語は60と言いたいところですが、1回ではだめなんです。2回あればその高いところが国語の実力です。国語というのは2回も当たらないものなんです。

算数と国語は偏差値の波の解消法が異なるのです。

算数は実力をつけなければいけませんが、国語は本来の実力を出せるようにする方向で考えないといけないのです。

とすると、お子さんの場合は、算数が偏差値46です。国語は幅だけでは判断できませんが、57付近がもう1回あればそこが実力です。

このケース、間違いなくバカではありません。国語が57ってかなり器用な子です。

口悪くてすみませんね。あたま悪いとかバカとか失礼なのはわかっていますけど、中学受験する子でそんな子は殆ど見かけたことがありません。

やっぱり親が「ひょっとして」と思って中学受験を考えたくらいですから、子どもはある程度以上の能力を持っているものなんだなあと思うことばかりなのです。

5千円や1万円で始めることができるサッカーなら深く考えずに参加してくるのです。明らかにサッカーに向いていない子も多くいるわけですね。スポーツというのは、ある程度のレベルまでは比較的安くすみますから。

ところが中学受験は違います。かなりお金がかかりますからね。親がある程度の見込みを感じていないと踏み切れないのでしょう。

塾の先生ほどたくさんの子どもを見た経験があるわけじゃないですが、「あちゃー」って思うことって本当に稀ですよ。

親を見て「あちゃー」と思わないことも稀ですが。

それくらい中学受験というのは、子どものレベルが高く、親のレベルが低いのです。



きれいに忘れています
反復復習を、翌日、翌週、翌月と折にふれて10回
1秒後には、ああそうだった

このあたりを読んだだけで、お母さんのイライラ度が伝わってきますが、本当ですか?

きれいに忘れていますか? 覚えていたことも一度や二度あるのではないですか?

どうしてその覚えていたときのパターンを考えてやらないのですか。


反復練習が良いという考えはお母さんの子ども時代の常識ではないのですか?

辛抱することが努力であり、それが能力を高めると思っていませんか。

成功者は自分の経験を美談にしたがります。「辛かったけれど耐えた」と言う方が評価が高くなるからです。実際には楽しんでたどり着いたかもしれませんよ。


1秒後にって、ずいぶん速攻じゃないですか。

1秒前は竹輪のように右から左だっただけじゃないのですか。


子どもは自分を守る力がすごいのです。

親の言葉をそのまま受け止めていたらおかしくなってしまうから、無意識にかわしているのです。ある程度スルーすることによって身を守っているのです。心を守っているのです。

それを見て今度は「聞いてるのか! わかっているのか!」とやってしまうと、子どもはかわすことさえ許されなくなり、サンドバッグ状態。

子どもの防衛本能を越えて行ってはいけません。


塾に入れて能力の向上を図り、親によって能力の向上に蓋をする。

このケースが非常に多いのです。

多いから楽に難関中学にたどり着いている親子がほくそ笑むのです。これを許してはいけません。





ところでお母さん、料理はお得意ですか?

私はいつも不思議に思うのですが、毎日献立を考えて実に手際よく料理を作る妻の脳はどうなっているんだろうと。

レシピを全部覚えているのだろうか。そんなに集中している様子もなく、喋りながら作ることができるのはどういうあたまをしているのか。

ひょっとして天才か?

作っているところを眺める機会があると、毎回そう思っているのです。


オムレツの作り方をつるかめ算としましょう。

野菜炒めを過不足算として、ちょっとややこしいロールキャベツを速さの問題とします。

確かに反復練習したかもしれませんが、それはテストのためではなかったはず。

まだ慣れていない頃、作っている横でギャーギャー言う人がいて、「ん? 醤油どれだけだったかな?」と手が止まっただけで、「1秒とまったーーーっ!」と言われたら、今のお母さんにはなれなかったのではないですか。コンビニでお惣菜を買うしかないお母さんになっていたはず。

世の中には稼ぎが少ないくせに料理に口出ししてくる厄介な亭主もいるのです。「亭主」という熟語が一番似合わない男がいるわけです。

そういう人って治らないですから、結局妻の方が耐えられなくなって離婚しているケースがたくさんあるでしょう。

子どもは「こんな親やってやれねー!」とバンザイして別の親のところに行ったり、ひとりになったりできないのです。かなり過酷な条件下にいると思いませんか。

そう考えると、大事にしてあげましょうよ。

お母さんしかいないんです。代わりはNGなんですよ。責任重いじゃないですか。



では作戦を申し上げます。

社会・理科を徹底して勉強しましょう。特に理科。

算数を頑張ったところで、そこまで理科ができなければ毎週毎週理科の授業でお子さんはうんざりしていますよ。

基本的な料理ができる人は難易度の高い料理に挑戦する気になりますが、オムレツを作れない人がエスカベッシュに挑戦する気になるものではありません。

中学受験は社会・理科が基本。算数勝負です。

まずは算数をやろうとする気にさせなければいけません。その下地は社会・理科の持ち点です。

秋に過去問を始めるとき、社会・理科で点を稼げない子は作戦が立ちません。

夏が勝負なのはわかりますが、その夏には社会・理科のテストも繰り返されるのです。それが待ち遠しい状況に持ち込まなければいけません。


中学受験は、まだ小学生の子どもが4教科同時に持ち上げていくところに難しさがあります。

そんなに器用に勉強できないのです。だから偏りが出る。

時間のやりくりが難しく、そこが勝負のポイントにもなっているわけです。

その偏差値なら結構高いところを狙っているからうるさく言うのでしょう?

難関中学は偏った成績の子はかなり不利です。

国語がネック~、という子が一番マシ。

ところが、お子さんは国語が一番良いのですから逆ですね。


夏までに社会・理科暗記を終える。夏期講習で問題を解くたびに思い出すきっかけになり暗記の定着になるようにする。

算数も同時にやるけれど、「社会・理科を放置していない!」という自信の中で算数をさせないと定着しません。

そして算数の積荷はその種類を増やさないようにしなければいけません。

解き方の種類を増やしてはいけないのです。

家庭教師がいるならそう伝えればわかるはずです。

たくさん積むために箱の種類を減らしているトラックを参考にするわけです。



塾をやめるのも避けた方が良いでしょう。

その偏差値その学年なら今スタイルを変えてはいけません。

続行勝負です。


お母さん、数えきれないほどの種類の料理が作れるようになったのはなぜでしょう。

その理由を考えるのです。

そこに中学受験の答えはある。

だから子どもの操縦は料理を知る母親が圧倒的に有利なのです。



お母さん、こんな勝負、絶対に他の親に負けてはいけません。

2017.5.9

桜井信一