・・・昨日の続き。
Aちゃんは以前にも増して疲れきった様子だった。
家事と育児に追われて睡眠不足らしい。
二人目の子は軽い障害があるらしく、Aちゃんは死ぬほど悩んでいた。
Aちゃんは涙ながらに呟いた。
下に子には悪いけど、
生まなきゃよかった・・・。
さくらは悲しくなった。
親に生まなきゃよかったと思われながら育つ子供って、どんな人間になるんだろう。
Aちゃん、どうして生んだんだ。
生まないという選択肢だってあるのに。
・・・と思ったが、そんなことは決して言えない。
忙しい毎日の中で唯一の楽しみは、ちょっとした時間に韓国ドラマを観ることだと言っていた。
Aちゃんも海外旅行が好きで、韓国、オーストラリア、ヨーロッパ等を旅したことがあるが、子供が生まれてからはどこにも行っていないらしい。
さくらと海外の話で盛り上がると、Aちゃんの表情は急に明るくなった
今はもう航空券がないことや、イミグレーションが生体認証システムになっていることを話すと驚き、興味津々に聞いていた。
さくらちゃんと一緒に海外に遊びに行きたい
明日にでも行きたいよ
と言うので、
近いうち一緒に韓国に行こうよ
と誘ってみた。
すると、
今はまだ行けないな・・・。
と言って、悲しそうな表情になった。
そうだよね。
今はまだ行けないよね。
いつ頃行ける
そうだなぁ・・・たぶん・・・
10年後ぐらい
え

とびっくりしたが、10年後に行けるのかどうかも怪しい。
10年経ったら今度は、学校行事があるから、受験があるから、〇〇があるから、とまた行けない理由がきっと出てくる。
一緒に韓国に行きたいね、オーストラリアに行きたいね、アメリカに行きたいね、と話は盛り上がったが、たぶんAちゃんと一緒に行ける日は来ないだろう
そんな気がする。
二人目の子を生まなければ、5年後ぐらいには一緒に旅行できたかもしれない。
Aちゃん、やっぱり
ピルを飲むべきだったんだよ。
ピルを飲んでいれば欲情に駆り立てられ暴走しても、何の心配もなかったんだ。
今回の事件で、夫婦というのは夜になると手に負えなくなるということが、よーく分かった
一緒に行けなくてごめんね
と悲しそうに言うので、
韓国なんてすぐ行けるから、一人で気分転換に行ってくるよ
時間ができたら一緒に行こうね
と言って別れた。
このシリーズはこれで終わり。
たぶん。
またAちゃんが、実は・・・
三人目を妊娠したの
なんて悲しい顔で言わないことを祈ります



