香りの害と書いて「香害」、
この言葉をご存知だろうか。

香害とは柔軟剤や洗剤に含まれる
人工の香りなどが原因で
頭痛や吐き気、倦怠感などの症状が出ることを言う。

発症した人は香りから逃げるように生活し、
これまでの暮らしが一変してしまう人も少なくない。

 

二重マスクにレインコートで取材に応対

石川県能美市に住むAさんは6年間、香害に悩み続けている。
 

記者:

こんにちは石川テレビです。


Aさん:

取材も気を遣わせてしまって申し訳ないです。


記者:

新しいTシャツを着てきましたが…私たちの匂いは大丈夫ですか?


Aさん:

活性炭マスクと布マスクをしているので匂いは分からないです。


記者:

いつもレインコートを着ているんですか?


Aさん:

匂いが付くと後が大変なので、匂いがひどいときには着ています。



香害は化学物質過敏症の一つとされ、
頭痛や吐き気、生理不順など症状は多岐に渡る。
Aさんも化学物質過敏症と診断された。



Aさん:

あそこに立っている旗を見て、
四六時中風向きを予測している。
最後に換気できたのは5日前。


Aさんによると香りが部屋に侵入してしまうと
カーテンや衣類に香りが移り、
廃棄せざるをえなくなる。

6年間住んでいるこの家も
最近になって周囲の環境が変わり、
香りを強く感じるようになった。


 

Aさん:

周りの住民が悪いことをしているわけではないし、
私の都合に合わせる必要はない。
香りが苦手な人が危険性のないところに行くのが一番問題がない。

Aさんは今、香りによって住む場所を失おうとしている。
 

香りに追われて家族がバラバラに

石川県七尾市に住むBさんも香害に苦しんでいる。
 

Bさん:

主人は滋賀県に残って、私と子供は七尾にやってきた。
香害がなければ家族みんなで一緒に住めていたのに、
本当に残念でならない。


Bさんは2カ月前に滋賀県から七尾市に引っ越してきた。
香害によって家族の居場所がバラバラとなったのだ。



Bさん:

「自分の体質の問題でしょう」とか
「神経質なだけ」「頭おかしい」とか。
批判的なコメントや意見がいっぱい来た。


周囲からの理解が得られず心無い誹謗中傷を受けた。
しかし、こうした症状は誰にでも起こりうる。

 

香害は誰でも発症する恐れがある

日本消費者連盟などが実施した調査では
香りつきの製品で
「具合が悪くなったことがある」
と回答した人が8割に上った。


さらにそのうちの約2割が
欠勤や退職をした経験があると回答。

近畿大学の教授らが行った調査では
化学物質過敏症の患者や
その可能性がある人は
全国で400万人いると推計されている。


 

洗濯した衣類に香りを付けて
心地よい使用感をもたらすための柔軟剤。

それがなぜ体調不良を引き起こす
原因になるのだろうか。


香害について研究している
千葉大学の坂部貢特任教授は、
香りが脳にもたらす影響が
人によって良い場合と悪い場合があると指摘する。



千葉大学 坂部貢特任教授:

嫌な匂いを嗅ぐと
特定の脳の部位がネットワークを作って、
それが怒りや不快などの中枢に強く結びつく。

マイクロカプセルの成分は
イソシアネートというもので
できていることがあるが
強いアレルギー性の化学物質で
粘膜を刺激してアレルギー症状を起こしてしまう。


外部からの刺激で
香りを放出させる機能を持つマイクロカプセル。

坂部特任教授によると、
マイクロカプセルの成分である
化学物質を吸い込むことで
強いアレルギー反応が起きると言う。

マイクロカプセルは
長時間香りを持続するため柔軟剤によく使われ、
その香りを嗅ぐことで発症しやすいと言われている。


 

多くの人が香害について知ることが重要

坂部特任教授:

柔軟剤などを使う人が、
匂いに過敏な人がいることを
ある程度意識することが大事。

後は商品を作る側が、
香りに悩む人がいるということを
売るときに十分説明する必要もある。



国や自治体も、
香りで悩んでいる人がいることを
ホームページやチラシなどで
周知するようにはなった。

しかし健康被害との関係について
未解明な部分が多いとして、
規制には踏み込まず
啓発活動にとどまっているのが現状だ。

香りによって引き起こされる
化学物質過敏症にはまだ特効薬や治療法がない。
発症すれば香りから逃げるしかないのだ。


 

Bさん:

生活や人生が一変してしまうくらいの影響が
出ていることを知ってほしい。


Aさん:

なんでただの日用品一つで
こんなに惨めな思いをしないといけないのか。
当たり前の生活が送れなくなるという
社会問題だと思っている。
そういう認知の仕方が広まってくれたらいいなと思う。



発症には様々なきっかけがある。

Aさんは周囲の柔軟剤の香りで、
Bさんは新築マンションの建材や接着剤の香りで
発症したそうだ。

症状は先天性のものではなく誰にでも起こりうる。

こうした症状に心当たりのある人は
化学物質過敏症支援センター
(電話番号:045-663-8545)
に相談してみてほしい。


(石川テレビ)


<出典元>「発症したら逃げるしかない」全国に400万人!?人工的な香りがもたらす“香害”に苦しむ人たち【石川発】 (msn.com)