中高年の睡眠時間は7時間がベスト

医学博士であり、
スリープクリニック調布院長の遠藤拓郎さんは、
中高年にとっての理想の睡眠時間は
「7時間」だと話します。


 

「根拠の1つが下のグラフです。
 これは全国の40~79才の男女を対象に、
 睡眠時間と10年後の死亡率の関連を調べたものですが、
 最も死亡率が低いのが7時間睡眠の人でした。

 そして、中高年の眠れる時間を考えると、
 “7時間”は眠りの質を保つのに最適な長さでしょう。

 ちなみに、睡眠時間が延びるほど
 死亡率は右肩上がりになる。

 寝すぎがよくないことも、
 これでわかりますよね」(遠藤さん・以下同)

 

★睡眠時間の長さと10年後の死亡率比較

40~79才の男女のうち、
死亡率が最も低いのは7時間睡眠の人。

4時間未満、10時間以上など、
睡眠が短すぎたり長すぎたりすると、
死亡率は上昇する。

 

出典:玉腰暁子教授(2004年)のデータに基づきスリープクリニック作成

出典:玉腰暁子教授(2004年)のデータに基づきスリープクリニック作成© 介護ポストセブン 提供
 

とにかく長く寝ればいいは危険

日々の睡眠不足が蓄積する状態で、
これが続くと心身に深刻なダメージを
与えるとして話題の「睡眠負債」。

睡眠時間が7時間を切ると、
「睡眠負債」に陥るのだろうか?



「上記のグラフで、
 5~6時間睡眠の人の死亡率は
 7時間の人と比べてそれほど極端には変わりません。

 この範囲であれば、
 睡眠不足を深刻に捉えなくてもいいと思います。
 睡眠負債を否定するものではありませんが、

 内容を理解せず、
『とにかく長く寝ればいい』と勝手な解釈をすると、
 かえって睡眠の質を下げることになると危惧しています。

 
もともと睡眠負債は米国で生まれた概念で、
 眠気によって多発した
 ヒューマンエラーを防ぐための
 『もっと睡眠時間を延ばそう』
 というムーブメントが背景にあります。

 確かに、睡眠時間が4時間未満になると、
 死亡率が上昇します(グラフ)。

 このような“過労死”レベルの睡眠不足が
 危険なことは明らかですが、
 グラフを見ても、
 該当者は全体のわずか0.7%。

 ここだけを強調して
 『睡眠負債は危険だ』
 というのは極端だと思います」

 

長い昼寝やうたた寝は
夜の睡眠の質が落ちる原因に…

遠藤さんのクリニックでは、
不眠を訴える患者に活動量計を装着し、
1日の活動量と睡眠量を正確に測るという。


 

「たいていのかたは活動が少なく、
 長い昼寝をしたり、
 テレビを見ながらうたた寝をしていたりして、
 実は意外と睡眠量を確保しています。

 寝不足というより、
 眠りが分断されることで
 夜の睡眠の質が落ちていることが
 不眠の原因であることが多いですね」  

 

 

 

 

 

7時間睡眠のために遠藤さんが提唱するのは、
残りの17時間を起きていること。


「ただ起きているだけでなく、
 肉体的・精神的に多少の疲労を
 感じることが重要です。

 空いた時間は、
 なるべく外に出かけて
 ヘトヘトになってください。

 また、趣味のもの作りや読書に没頭して
 脳を疲れさせるのも◎。

 こうしてフルに活動すれば、
 誰でも疲れてスヤスヤと眠れます」

 

眠れない人は
まず起きる時間を決めて
1週間続けてみる

「眠いのに床に入ると目がさえるという人は、
 原因として起きる時間と
 寝る時間が不規則な場合が考えられます。
 
 また、せっかく平日に規則正しく生活していても、
 休みの日に寝だめをすると、
 睡眠のリズムが乱れ、
 戻すのに時間がかかってしまいます。

 まずは寝る時間より、
 起きる時間を決めましょう」

 

毎日同じリズムで生活している人は、
眠くても眠くなくてもだいたい同じ時間に寝られ、
同じ時間に起きられるそうだ。

起きる時間を決め、
がんばって1週間続けてみよう。


「寝る時間が短くなって眠い場合は、
 15分、最長で30分の仮眠を取ってもOKです。
 取る時間は午前中がベスト。

 なぜなら、午前中の仮眠は
 前夜の睡眠を補うものですが、
 午後の仮眠は、その夜の睡眠の
 前借りになるからです」


 

関連するビデオ: 熱帯夜でも“良質な睡眠”とる方法…カギは「背中」 快眠につながる寝具・水分補給法 (テレ朝news)



 報道キャスターは、
 夜から朝の番組に変わっても、
 起きる時間に合わせて生活リズムを適応させます。

 そのように『起きなければ』という外圧が必要です。

 リタイアして自由時間が増えると
 就寝時間が乱れがちですから、
 ボランティアや仕事など、
 “起きる理由”を作ることです。

 どうしても寝坊したいときは、
 いつもの起床時刻の後1時間以内に起きてください」

 

 

こまぎれに目が覚める現象は改善できないのか。

 

「老化現象ですから改善できません。

 目が覚めても、その後
 すぐに眠れれば心配不要ですが、
 眠れない人は睡眠の質が相当落ちています」

 

睡眠薬は依存が進むと
認知機能の低下につながる

寝つきをよくするための睡眠薬は有用だろうか。


「実際、60代になると睡眠薬や
 睡眠導入剤の処方率がぐんと上がります。
『眠れる時間』と『床にいる時間』の差を
 埋めるためだと思いますが、
 睡眠薬は浅い眠りへ導くように作られていますので、
 頼りすぎると眠りの質が悪化し、
 効きも悪くなるという悪循環に。

 依存が進むと認知機能の低下にもつながるので、
 使う頻度に気をつけるべきです」

 

 

 “深い眠り”を促す7つの生活習慣

 

「3の法則―
 「30分以内に入眠できる」、
 「夜中に起きるのは3回未満」、
 「起床予定時間の30分以上前に目が覚めない」プラス、

 よい睡眠が取れていれば、
 日中3回以上眠くなることはありません」


 

達成できていない人は、
下記7つの生活習慣を実践してみよう。


【1】7時間以上寝床にいない

【2】1日7000歩程度体を動かす

【3】1日7時間程度のデスクワーク(趣味や読書など)を行う

【4】うたた寝や長い昼寝をしない

【5】ストレスをためない

【6】昼間は太陽の光を浴び、夜は明るい光を避ける

【7】体温を上げる


 

「23時30分~6時30分」
が理想の睡眠時間帯

睡眠の質を決めるのが、
メラトニンとコルチゾールというホルモンだ。

このホルモンが効果的に働く時間帯を狙えば、
深い眠りとスッキリとした目覚めが叶うという。



「夜になるとメラトニンが分泌されて眠気を催し、
 朝が近づくと、コルチゾールの分泌が
 高まって目覚めます。

 メラトニンが多く分泌される午前0~6時が、
 最も眠りやすく、深い睡眠が取れる時間帯。

 一方、最も起きやすい時間帯は、
 コルチゾールの分泌がピークとなる
 午前5時30分~8時30分頃。

 これらを総合すると、
 『23時30分~6時30分』の7時間が、
 中高年の理想の睡眠時間帯で、
 この時間帯以外は寝床につかず、
 起きて活動すべきです」 


 

残念ながら、
加齢とともに夜間のメラトニンの分泌は減り、
逆にコルチゾールの分泌が増えていく。

これも眠りづらくなる要因なので、
なるべく活動量を増やし、
元気な体にしておきたい。



「また、中高年は
 昼間メラトニンの分泌が増えるため
 日中眠くなる傾向にありますが、
 メラトニンは太陽の光を浴びることで
 分泌が下がるので、日中は屋外で活動し、
 夜は照明を暗くして入眠の準備を」


 

人は、体温の急激な低下で眠くなるため、
ふだんの体温を上げておくことも大事。

そのためには、
ウオーキングなどの運動が効果的だ。


<出典>深い眠りを促す7つの生活習慣「死亡率が最も低いのは7時間睡眠の人」【睡眠専門医監修】 (msn.com)