女性1人が生涯に産む子どもの数を示す
合計特殊出生率が
2022年に0・78まで落ち込んだ韓国。

韓国統計庁長を務めた経済学者で、
社団法人「韓半島未来人口研究院」の
李仁実(イインシル)院長は
「クラッシュ」(墜落)という厳しい言葉を使って、
韓国の未来に警鐘を鳴らした。



――韓国の少子化の現状をどう見ていますか。  

◆世界にも例を見ない急速な速度で
合計特殊出生率が落ちて、
経済協力開発機構(OECD)加盟国で
最下位になっている。

日本の合計特殊出生率も
22年に1・26と過去最低を記録した。

でも、韓国と比べると、
その数字へと至った速度はゆるやかだ。

もしかすると、幸せに衰退する方法も
見つけることができるかもしれない。

ところが韓国は、このまま少子化が進むと
国そのものが墜落してしまうような状況だ。  


――どのような未来が来るのでしょう。  

◆社会のあちこちで、
さまざまな問題が確実に出てくる。
経済への悪影響はもちろんだし、
安全保障面も深刻だ。

北朝鮮と向き合っている韓国は、
18歳以上の男性国民に兵役を義務づけているが、
軍人の確保さえ難しくなる。

子どもの減少に伴って、
学校の廃校も相次ぐだろう。

国がなくなるかもしれない
というぐらいの大きな危機だ。  


「それなら、海外から人材を
 受け入れて労働力を確保すればよい」
との意見もある。

しかし、これまで外国人労働者を
供給してくれていた
東南アジアの国々でも
合計特殊出生率が下がっている。

家政婦などとして働き、
韓国社会を支えてきた
中国国籍の朝鮮族の人たちも高齢化が進んでいる。

簡単な話ではないだろう。  


――合計特殊出生率は反転できますか。  

◆難しいからこそ、ショック療法が必要だ。
たとえば、結婚しているかどうかは関係なく、
子どもが生まれた家庭には公共住宅を提供したり、
子どもが18歳になるまでは
1人あたり月100万ウォン(月約11万円)を
提供したりするなどの生活保障が想定される。

「子どもを産んでも、幸せに生きることができる」
と、若い世代に確信して
もらえるだけの少子化対応が必要だ。  


――「少子化問題を5年以内に解決しなければ、
   地球上から消える最初の国になる」
   との刺激的な意見広告も出しました。  

◆このまま少子化が加速すれば、
私たちの子どもたちは、
今の私たちよりも
豊かな生活を送ることは絶対にできない。

「厳しい未来に耐えなければならない」
ということに国民的な合意をして、
その未来に向けて、
より良い準備をしなければならない。

拡張していく社会と、
縮小していく社会のルールはあまりにも違うからだ。

そうした変化に合わせた
意識改革をしないといけない
というメッセージを意見広告には込めた。  


――少子化の進行や人口減社会における
  企業の役割も重視しています。  

◆「人口動態の変化を最前線で
  引き受けているのは企業ではないか」

という問題意識が、この研究院を
約1年前に発足させるきっかけになった。

韓国の中小企業はすでに深刻な人手不足に直面し、
一部の大企業でも同様だ。

政府もさまざまな取り組みを進めているが、
企業にできる対応についても考えていきたい。


<世界人口考>「地球から消える最初の国に」 専門家が警鐘鳴らす韓国の少子化(毎日新聞) - Yahoo!ニュース