毎日新聞

処理水の処分の流れ

 

 

政府は
東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出を
24日に始める。

政治日程などをにらんで
放出日を調整してきた政府は、
風評被害を懸念する
漁業者の理解を得られないまま踏み切る。

処理水の元となる
汚染水は今も原発敷地内で増えており、
政府・東電は数十年間にわたって
モニタリングや風評対策といった
重い課題に取り組むことになった。


【図でわかる】処理水の海洋放出のイメージ  


◇汚染水、1日あたり約90トン増  

処理水の元となる汚染水は、
22年度時点でも1日あたり
約90トン増え続けている。

福島第1原発の敷地内にある
1046基(約137万トン分)の
タンクの98%が埋まっている。

来年2~6月ごろには満杯になる見通しで、
タンクのさらなる増設も難しい。
政府と東電が放出を急ぐのはこのためだ。  

処理水の海洋放出をいま始めても、
完了するのは30~40年後の見通しだ。


なぜそこまで時間がかかるのだろうか。  

処理水に含まれる放射性物質の濃度は
タンクごとにバラバラだ。

このため、複数のタンクの処理水を
いったん別のタンクに移し、
混ぜ合わせて均一化した上で、

多核種除去設備「ALPS(アルプス)」では
取り除けないトリチウム以外の
放射性物質が基準値未満になっていることを
改めて確認するのだ。

この作業に約2カ月かかる。  

これをさらに大量の海水で薄め、
トリチウムの濃度を国の基準値の
40分の1(1リットルあたり1500ベクレル)未満
にして沖合1キロに放出する。  

さらにタンクのうち約7割は、
アルプスで一度処理したのに
トリチウム以外の放射性物質の濃度が
基準値未満まで下がっていない
「処理途上水」だ。

放出にはアルプスでの再処理が必要だが、
元のタンクは放射性物質に
汚染されているとみられ、
再処理後の水をためる方法が決まっていない。  

こうした事情から、
完了まで長時間を要するのだ。  


環境省や原子力規制委員会は、
海洋放出の間、
放出口近くや福島県沿岸で
海水や魚をモニタリングし、
トリチウムなど放射性物質の濃度を監視する。

東電によると、
放出設備やモニタリングに異常があれば、
緊急遮断弁が作動して
ただちに放出を止めるとしている。  


更田豊志・前原子力規制委員長は取材に
「安全という観点で山を越えたと言えるが、
 信頼や安心、風評被害の問題は
 むしろこれからだろう。

 問題は解決したわけではなく、
 闘いはまだまだ続いている。

 政府と東電は、反対がある中で
 放出をすることの重みを
 受け止め続けなければならない」
と指摘した。


<出典>
処理水放出「完了まで30~40年」 なぜそこまで時間がかかるのか(毎日新聞) - Yahoo!ニュース