料理研究家・土井善晴さんの著書
『一汁一菜でよいという提案』
がベストセラーになっている。

一汁一菜や日々の料理のこと、
日本の食文化などについて、
土井さんに聞いた。


AERA 2023年1月16日号の記事を紹介する。


 

*  *  *  
土井善晴さんが
上梓した
『一汁一菜でよいという提案』(新潮文庫)
は反響を巻き起こした。

「私自身に関して言えば、
 一汁一菜はもう古いかなと思っていて。
 さらに先へと進みたい」  

今回の特集の趣旨(健康的に痩せる)に
ついて説明すると、土井さんはこう返した。



「一汁一菜なら結果的に
 適正体重に近づくでしょうね。

 健全な食事をとれば体調が整う。
 食べ過ぎたら太るのは当たり前です」  


日頃から土井さんが口にするのは

「毎日の料理にレシピは不要」という言葉だ。


「日頃の料理は何も考えないのが基本。
 何を作ろうかと思うことがストレスです。
 今あるものを何でもかんでも
 入れてみそ汁を作ればいい。


 おいしくないものは
 作りようがないんです。
 だしなんていらないですよ」  


ただ、インスタントや
レトルトの食品が
全盛であるだけに、一汁一菜でも
「自炊は面倒くさい」と感じる人もいるだろう。


「面倒くさいって言葉に
 今の人は逃げられるんですね。
 みんな一緒に面倒くさい、

 だから、いいと思い込みたいのでしょう。
 とやかく言うつもりはありませんが、

 ちゃんとするかしないかは自分の問題です。

 だけどみんなちゃんとしたほうが
 いいって知っているから、
 苦しいんですよね。


 そうでなければ、
 やらなければいいだけでしょ」



「一汁一菜さえ作ればノルマ達成。
 その上で、自分が食べたいもの、
 家族に食べさせたいものを作る。

 それは全部楽しみです」



「一人暮らしでも料理をすれば
 自分を大切にできるし、
 生きていることを実感できる。


 やる、やらないは自分の問題。
 料理は自立です。


 何かに依存せず生きるのが自立。
 自立して初めて自分で判断できます」
 


土井さんいわく、

大昔の人々の思想を今に伝えているのが
日本の食文化の特徴。


だが、今後もタスキをつなげるかは怪しい。

「人それぞれですけど。

 文化をつなぐという意味では、
 日本の食文化が一番壊れているかもしれない。

 西洋の合理主義には彼らなりの哲学があります。
 西洋人のように生きている私たちは
 西洋の哲学も知らず、自国の文化の意味も知らない。
 信じるものがないのは不安だし、弱さ」
 


とはいえ、一筋の光明も。

日本文化の振興に貢献した人物として、
2022年度文化庁長官表彰者に
土井さんが選ばれた。

料理を、文化として。
家庭料理を追求してきた土井さんに。


「家庭料理に目を向けてくださったのが、
 何よりもうれしかった。

 家の仕事を担ってきた
 日本のお母さんが褒められたことないんですよ。
 暮らしの中に私たちの幸せがあるんです」


 ※AERA 2023年1月16日号


<出典元>
「日本の食文化が一番壊れているかもしれません」 料理研究家・土井善晴が警鐘鳴らす〈AERA〉(AERA dot.) - Yahoo!ニュース