熱中症の原因と対策について、
順天堂大学准教授で医師の和田裕雄さんが解説します。
◇暑さに慣れない4~5月にも発症しやすい
熱中症は「暑い夏日の午後の病気」と思われがちですが、
体が暑さに慣れていない春から初夏にかけても
発症しやすいことはあまり知られていません。
真夏だけでなく、4~5月の晴れの日、
特に午前10時から11時ごろにかけて
熱中症が高い頻度で発生します。
それだけではありません。
みなさんの周りに「夏は暑くて当たり前」
「寝るときにクーラーなんてつけない」と、
どんなに暑くてもエアコンをつけない人はいませんか?
中高年の人に多い印象ですが、最近、
高齢者が夜間に熱中症を発症することが
多いことも知られるようになりました。
ももクロの屋外イベント
(4月下旬、滋賀県、野外ライブ)のような
「マス・ギャザリング」
(一定の時間、限定地域に同一目的で集まった多人数の集団)
が見られる場所では、
喉が渇いても飲み物を手に入れにくい
▽トイレに行くのが難しい、
あるいはわずらわしいため水分摂取を控える
--といった理由から、
熱中症になる危険性が高いことが指摘されています。
◇気温29度を超えると熱中症になる人が増える
熱中症とはどのような病気か、おさらいをしましょう。
体温が上がった時、私たちの体は汗をかくことで
体内の水分が不足し、急激な脱水状態に至ります。
すると、
脳をはじめとする各臓器を循環する血流量が減り、
その結果、めまいや立ちくらみに始まり、
進行すると頭痛や吐き気、倦怠(けんたい)感など
の症状が表れます。
さらに重症になると
意識を失ったり、
手当てが遅れると死に至ったりすることがあります。
脳以外の臓器にも影響することがあります。
熱中症の起こりやすさの予測は、
湿球黒球温度(Wet Bulb Globe Temperature=WBGT)
と呼ばれる暑さ指数を用います。
人体と外気との熱のやりとり(熱収支)に着目した指標で、
熱収支への影響が大きい湿度、
日射・輻射(ふくしゃ)など、
気温--の三つを取り入れた指標です。
湿球黒球温度はやや複雑なので、
簡単な指標を使うと、気温がおおむね29度を超えると、
熱中症を発症する人が増えることが知られています。
室温を28度以下にするのは、意味のある熱中症対策です。
◇おしっこの色が濃くなったら熱中症に注意!